ラストスパート

ひゅん

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美しい顔つき

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「藤波君はすごいね」「藤波君はすごいね」と学校生活のなかで事あるごとに星崎が口にした。何度も連呼する星崎に、何がそんなにすごいのか?  彼のような優等生に言われて、嬉しいよりもどこかこそばゆい感じがした。藤波は「すごい、すごいって何がそんなにすごいの?」と訊ねたことがある。
「藤波君は走るとすごいよ。僕は足が遅いから、藤波君の走る姿をみてすごいと思ったんだ」と星崎は言った。それを聞いて「何だ、そんなことか」と藤波は思った。
 それからというもの、口癖のように星崎が「藤波君はすごいね」という度に、鸚鵡返しのように「星崎君はすごいよ。いつもしっかりしていて頭も良くて、女子にもモテて、すごいよ」と言い続けた。
 二人が「すごいね」と連呼するものだから、ある時二人は噴き出して笑った。しばらく笑い合った後に星崎は藤波にこう言った。
「昨年のマラソン大会ね。僕喘息に掛かって見学していたんだ……それで藤波君が最後にゴールする時、メチャクチャスパートかけて十人も抜いていくのを見たよ。最後の最後で、あれだけみんな疲れているのかで力振り絞っている姿をみて、本当にすごいと思ったんだ」藤波は昨年の冬のマラソン大会を思い出した。そう言えばそんなこともあった、と思ったが、そんなことくらい別にどうということなかった。星崎を見ると、彼は真っ直ぐに藤波の顔を見ていた。それはまるで研磨した刀のように美しく凛とした顔つきのように藤浪の目に映った。
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