触手の館 ユズとの出会い

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彼女の想い

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f外の雨は降り続いている。
時折、ピカッと空が光るが、雷鳴はかなり遅れて聞こえてくる。

(だいぶ、遠くなったな。もうすぐ、雨も上がるか)

ふと時計を見ると、夜中の2時を過ぎたあたりだった。
あれから5時間。
彼女の傍で、看病を続けている。
額に乗せた濡れたガーゼを取り換えたり、汗を拭いたり。

看病のおかげか、今では安らかな寝息を立てている。
表情も険しさがなくなり、可愛らしい寝顔をさらしている。

シュルシュルシュル…
っと、部屋に夜食のおにぎりを運んできた触手君も、彼女を心配そうに見つめる。

お前も心配か?

こくり と、先端を小さく下げる。
(でも、それ以上にご主人様が心配だよ。彼女を襲っちゃわないか!!)

襲わねぇよ!!(ゴツンッ!)
触手の先端をげんこつで殴る。ぷにゅっとした感触。むろん、触手君は痛くない。

長い付き合いだからな、心の声、聞こえちゃうんだよ。

(聞こえて当然!釘を刺しただけだから)という表情で私を見上げ、そそくさを部屋をでる。


んん…

彼女の声、苦しそうな声ではない。
額に手を当て、彼女の熱を感じとる。

(もう熱は下がったかな…?)

手が額に触れた瞬間、ゆっくりと彼女の瞼が開く。
熱は下がったとは言え、まだ意識ははっきりしておらず、状況も理解していないだろう。
額から手を離し、彼女にやさしく話しかける。

「大丈夫かい?
ここは、私の家。君が、庭の木の上から落ちたところを助けた。
雨に濡れてビショビショだった上に、ひどい熱があったからね。」

手短に、状況が理解できるようにゆっくりと、やさしく。

「やっと会えた…」

彼女が発した初めての言葉は、庭で微かに聞こえた言葉と同じだった。
状況を説明しなくても、すべて理解しているようだった。
ココはドコで、私が誰なのか。
そして、やさしい目で私を見つめ、ゆっくりと手を差し伸べるその姿は、その言葉の重みを表しているようだった。

差し伸べられた手を両手でやさしく包み込む。
ひんやりとした指先。
熱は下がったとは言え、背中も傷もまだ癒えておらず、手を伸ばすだけでも苦しいはず。
なのに彼女は私に手を差し伸べてきた。

「わけありなんだね。ゆっくりとココで休んでいくといい。」
「ここはひっそりとした場所だから、傷を癒すにはいいところだと思うよ」

彼女に気を使わせないよう、出来る限りの笑顔で応えた。

「その…ぴったりの服はないかもしれないけど、何か着るものを持ってくるね」

看病のためとは言え、着ていた服を脱がしてしまったことに変わりはない。
一糸まとわぬままというわけにもいかないので、その場を離れようとしたとき、彼女の手が、私の手を掴む。

「居て…ください」
「そばに…お願い…」

力なく掴まれた手なのに、消え入るような声で言われただけなのに、
力強いを感じた。

続けて、
「お願い…抱いてください。私を、抱きしめてください」
「貴方の手で…貴方の淫魔触手で…」


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