安全第一異世界生活

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コルドナ辺境拍領

199話 子爵令嬢マリエルの黒歴史①

この度、この国の南の辺境を治めるコルドナ辺境伯騎士団の騎士団長に、お父様が就任された。我が子爵家は武家の家系で、歴代の辺境伯に先祖代々仕えてきた。
ただ、辺境伯領には我が家門の様な、武家の家系が数家あり、その武家の家系で代々騎士団長を拝命してきた。先代の騎士団長が老齢になり退団するのを機にお父様が就任した。これは我が家門から5代ぶりに出た騎士団長の座。
そう、それはお父様が、今の辺境領地で一番強いという事。
大好きなお父様、お父様は強く、優しく、しかもかっこいい。騎士服に身を包んでいる姿をいまだに少女のようなお顔で見るお母様。仲がいい夫婦で娘の私が恥ずかしくなるほどだわ。
そんなお父様は騎士団長になってから先代の騎士団長からあるものを受け取ったらしい。それを酒の席でお母さまに言っているところを聞いて、見てみたいとわがままを言った私に、困った顔でお父様は「マリエルが大人になったらね」と私の頭を大きな手で優しくなでてくれた。
私が大人になるまで見せられない?それはどんなものかしら?
それは12歳の私たちの好奇心を刺激する秘密の宝箱でしかなかった―――。
数日後、我が家にお父様の部下の子供。わたくしの幼馴染が二人やってきた。一緒に剣術の訓練をするためだ。お兄様と一緒に私も幼いころから剣術を嗜んできたけれど、打ち合いの相手にと一緒に訓練をするようになった。今はお兄様は王都の学校に入っているから、私達3人での訓練をしている。訓練の休憩時間中

「オーブリーもジョスも随分体格がよくなったわよね」

「僕たち成長期だしね」

「父様に似て体格はよくなる感じがするからな。筋トレもしているよ」

「あなたたちは良いわね。私はちっとも筋肉がつかないのよ…」

私のため息に二人は困った顔をした。

「マリエルはほら、女の子だししょうがないよ」

ジョスの言葉に私はムッとして、握っていたタオルを投げつけようとしたら、気づいたジョスがさっさと逃げて行った。私は腹が立ってそのままジョスを追いかけて走った。すると後姿のジョスを見かけ、タオルを丸めて投げつけた。
私の後ろを追いかけてきていたオーブリーの「あ!!」という声で、投げたタオルが窓の開いた部屋に入ってしまった事に気づいた―――。

あの部屋はお父様の執務室!!

お父様は朝早く領主城に出かけるので、日中は居ない。まだ朝の8時。朝に弱いお母さまはまだお部屋の中に居る時間だわ。そう思い二人を連れてそっと執務室の前まで来た。二人には周りを見ていてもらって、室内には私だけが忍び込んだ。タオルは窓のそばに落ちていた。そのタオルが入った事によって、窓側に置いてあるチェストから落ちた小箱が床に転げていた。その中から金色のペンダントが覗いていた。
その金色のチェーンのペンダント。そのトップには丸い飾りの中に銀色に光る鉱石がはめ込まれていた。それはとてもおしゃれとは程遠いもので、お母さまが持っているどんな装飾品よりも安っぽく見えた―――。
騎士団長のお父様には似合わないわ。
そう思った瞬間私は服のポケットにそのペンダントを入れて、その部屋を出た。

私たちは幼いころから鍛えているのもあって、週に何回か門から外に魔物討伐の訓練に出る。討伐と言ってもジャルの森の付近ではなく、街に近い草原や、林あたりに出る小さい魔物の相手をするぐらいだ。
数匹一角ウサギを討伐して、マジックバックに狩った獲物を入れると、草原に寝転がった。

「ちょっとマリエル!流石にここで寝転がるのははしたないぞ」

私に注意してきたのはジョス。お母さまの様にはしたないはしたないと…毎日言われているのに、せっかくの討伐練習の時までもそんな事を聞きたくなくて、耳を押えゴロゴロと転がった。ようやく転がるのを止め、目を開けると眼前には青い、青いどこまでも続く美しい青が広がっていた。
最近はお母さまはすぐに淑女が、令嬢が、殿方が、婚約者がなんて口うるさく言ってくる。違う!私はそんな事したくない!私は、刺繍をするより、お父様の傍で戦いたい。ドレスを着るより、ジョスやオーブリーと同じようなズボンが履きたい。嫌だいやだ、いやだ、いやだ、お父様はあんなに輝いているのに、私は足元にも及ばない…でもお父様の子供だもの私だって出来るはず。

そう思い起き上がろうとした時、ポケットに違和感があった。そういえば、さっき転がってるときも硬い感触があったと思い、寝転がったまま確認するとポケットの中からペンダントが出てきた。

あ、これ今朝のお父様の部屋にあったペンダントだ。―――今思うとなんで私、部屋から持ち出してしまったんだろう…ちゃんと返しておかなくては。そう思い立って立ち上がろうとした時頭の上からヒョイとペンダントを奪われた。上を見上げると、大きな目にふわふわな灰色の毛の生き物が居た…え?かわいい…猿?

「ピッコモンキーだ!」

オーブリーの声に私はびっくりして急いで起き上がった。そのすきに猿は私から離れていった。

「もーオーブリー声が大きいわ!びっくりしたじゃない!!」

私が文句を言うと、オーブリーは青ざめたように、

「ちょっとマリエル!ピッコモンキーに何か取られていなかったか!!」

「え?……」

その言葉に私は振り返りピッコモンキーと呼ばれた奴を探した。その時には影も形も視界には居なくなっていた。

「う…嘘でしょ………」
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