ダンマス(異端者)

AN@RCHY

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第79話 バクに遭遇

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 夕食を過ぎて少し経った時間なので、まだ街の中には活気がある。文明レベルは、元々いた世界よりかなり遅れている。電気がない時代なので、日本でいえば江戸時代とか?になるのだろうか。ただ、魔法があるために違う進化をたどったというべきだろうか?

 良くも悪くもこの世界の生物は、魔物を含め多少なりとも魔力を持っている。その魔力を使えるようになるかどうかは、個人の才能次第と言われている。言われているというのは、この世界の常識なのだ。

 だがダンマスという特殊な存在である俺には、強者を作る事が出来てしまう。DPを消費してだが、宝珠やスキルLv、レベルすらコントロールすることができるので、この世界の常識は俺の常識ではない。

 話が脱線していた。生物は多少の違いはあれど魔力を持っている。人間種ももちろんもっている。その魔力を使って動かせる魔導具が存在しているのだ。

 ある程度修行を積んだ魔導具職人なら、簡単に作ることの出来るランクの低い魔導具に、光を放つ道具があるのだ。品質で明るさが変わってくるのだが、一般に普及してる数少ない魔導具がライトと呼ばれている魔導具だ。

 他にも水を生成する魔導具もあるのだがこちらは、光を出す魔導具と違い魔力の消費量が多い。ちなみに、この世界の魔導具の多くがバッテリーの様に魔力を貯めることのできる機能があり、その一部に触れることによって、魔力を貯めることができるのだ。

 これは魔力がコントロールできなくても触るだけで、勝手に魔力を魔導具が吸収するする機能があるらしい。

 最近よく思うのだが何てご都合主義な世界だ。それとも先人たちの中に、恐ろしく天才がいたかのどちらかだろうか?

 一緒に来た四人の娘たち以外が街に散って行ったのを見て、

「さて、俺たちもお掃除の時間だ。めんどくさい事は考えない正面突破でいくぞ」

 メルビン男爵の家は、街の中心地にあるので今の俺の家からだとそれなりの距離がある。街の構造上、直線で向かうためには空を飛ばなくては不可能だ。

 このフレデリクの街には、城壁が三枚ある。一番外側にある外壁と呼ばれる第一の城壁。次に平民街と商業区が入っている中壁と呼ばれる第二の城壁。最後に、この街の上位者たちの屋敷が内側にあり内壁と呼ばれる第三の城壁だ。

 この街は外周から大体、貧民街・平民街・工業区・商業区・中流民街・貴族街の順番で並んでいる。まぁ大体なので違う部分もそこそこあるのだが。

 今住んでいる場所からメルビン男爵の屋敷に行くためには、第三城壁を抜けてかなければいけない為、直線で向かうことができないのだ。昼間は比較的自由に通ることができるが、夜になると貴族やそこの使用人以外は、通るのがめんどうになる。

 手続きとか何を目的にここを通るとか根掘り葉掘り聞かれるらしい。前回ここを通ったときは、俺がメルビン男爵に呼ばれている事になっていたらしく、昼間でもあったため簡単に通れてただけなのだ。

 今回は、正面突破なので冒険者として調べ物をしにきたというつもりだ。バクがいると言っても解らないはずなので、魔物の気配がするとか何とか言って無理やり調査するしかないだろうが。

 第3城壁の門が見えてきた。門番が2人左右にたっている。

「何の用だ? ん? 確か、シュウとか言う名前だったな(なんでこいつがここにいるんだ……ボソ)」

「ん? 俺はシュウだが、あんたとどっかで会ったか?」

「いや、会ってないぞ。噂で聞いた程度だ。で何か用か?(よかった、覚えてなくて。男爵の屋敷でボコボコにされんだよな。でも何でこんな時間にここにいるんだ?ボソ……)」

「ん? ちょっと魔物の気配があったから、何かと思ってちょっと調査しに来たんだが」

「魔物の気配? またオークか?」

「いや、なんていうか死霊みたいなタイプの魔物、の様な気がするから来たんだがダメか? ダメと言っても強引に通るつもりであるんだけどな」

「貴様! この先には、この街でも立場の高い方たちの屋敷があるんだぞ!」

 今までしゃべっていた門番とは違う方が声を荒げた。今までしゃべっていた門番が何か慌てた様子で近づいていた。

「お、おい、お前!(あいつだぞ、騎士団を強引に突破して無傷で豚の調教して帰ったってあの話の。俺は、あの現場にいた。正直かかわらない方がいいぞ……ボソボソ)」

「何しゃべってんだ? で、俺達は通してもらえるのか?」

「どうぞどうぞ、ですがくれぐれも面倒事は起こさない様にお願いしますね」

 どうやら、問題なく? 第3城壁を通ることに成功した。

 マップ先生でバクの位置を確かめているが、メルビン男爵の屋敷の敷地内ではあるのだが裏庭あたりにいるようだったのだ。何となくこういう時は、屋敷の中の使われて無い部屋とかにいるのがテンプレなんだけどな。

 まぁいっか、ファンタジーの世界でしかも魔物にテンプレだの言ってもしょうがない。

 しばらく歩いていると、あることに気付いた。ほとんど人いなくねえか? 上流階級の別荘みたいなものがある所だから基本的には、屋敷を管理してる使用人くらいしかいないんじゃないか? これなら周りに迷惑かけずにすみそうだな。

 メルビン男爵の屋敷に到着した。ん~以前来た時と変わってないはずなんだが、なんというか夜だからか何か印象が違うもんだな。真っ暗だし誰もいないみたいだからこっちとしては助かるんだが。

 堂々と正門から敷地内に侵入する。前回来た時は、ここで結構な数の騎士に囲まれたんだよな、あの時は娘たちに全部まかせたんだったな。

 屋敷を迂回してマップ先生がバクを表示している中庭に到着した。予想外の光景だった。スピリチュアル系とはいえ、四大精霊と同じようなタイプかと思っていたら、大分気持ち悪い見た目だった。

 人面犬とでもいうのだろうか、見た目の悪い人間の顔を持った四足獣で、舌は蛇の様なチョロチョロしている。キモイ。しかも、半透明な所がなおさら気持ち悪さを倍増させている。

 俺たちは、戦闘態勢に入る。基本的には弱点属性の攻撃しかきかないって話だ。まずは小手調べ!

「ライムやれ!」

 土魔法を使って攻撃をしている。ストーンバレットとでも言おうか、こぶし大の石礫を何十個も連続で飛ばしている。攻撃は当たっているが、思ったようにダメージが通ってない印象だ。

 精神や魔力が高いせいか魔法耐性が高いのだろうか、思ったより速度はない印象だ。比較対象がフェンリルではバクもたまったものではないだろう。

 急に消えた……

「え? どこ行った? みんな警戒」

 って俺が言うまでもなく、俺を囲んで全方位を警戒していた。

 一応、初めは俺の護衛のためだったが、いざこういう風に守られると、何かむずがゆいな。親衛隊みたいな感じで嬉しくはあるが微妙に恥ずかしい。元の世界じゃ、そもそも血なまぐさい争いをしたことはなく、女性を守ることもしたことがない。

 それなのに、今は可愛い娘たちに守られてる。うん、恥ずかしいっていうよりは、なんていえばいいのだろう? 言葉にできない。俺ってボキャブラリー少ないな、元の世界でもっと勉強しておけばよかった。

 それより、バクはどこに行ったんだ?
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