ダンマス(異端者)

AN@RCHY

文字の大きさ
417 / 2,518

第417話 呆気ない終息

しおりを挟む
 俺は来た通路に土魔法と火魔法のオリジナルの複合魔法【ラヴァ】を使用する。安直な名前を付けたがラヴァ……溶岩というだけあって、魔法としての効力は絶大だ。

 岩等を火魔法で溶かしたものを敵にぶっかけるのだが、こういった洞窟系のダンジョンでは効果が倍増する。逃げる場所が少ないからな。それに、魔法の力で普通より早く流れていくため、油断していると……通路の先から悲鳴が聞こえてくる。こうなるのである。

 しばらくすると悲鳴が聞こえなくなった。声の数からすると、おそらく五人くらいは死んだのではないだろうか? 俺はそんなことを考えながら、イリアにキモイ視線を向けてきた屑をにらみつけながら、ある魔法を発動している。

 この魔法は、綾乃に銃を作っていいか聞かれた時に、綾乃の発想から完成した魔法だ。銃は昔にその武器で無双したダンジョンマスターがいて、神たちが対人、対魔物戦に制限をかけてしまったことを話して色々考察したのだ。

 使うのは、土魔法と風魔法の複合魔法だ。魔法名は【スナイパー】、こりゃまた安直な名前だが、土魔法で圧縮した岩、弾丸を回転させ高速で撃ち出す魔法だ。風魔法を利用して風の抵抗を減らし、狙った場所へ直線で飛ぶようにしたオリジナルの魔法だ。

 結果は魔法として銃弾の再現をしているだけで、銃ではないのでこの世界の法則には引っかからずに済んだのだ。ただ、魔法の規模が小さいと言っても、消費する魔力はかなりの物であるため、バカスカ撃つことはできない魔法である。

 そんな【スナイパー】を利用して、イリアにキモイ視線を向けてきた相手に向けて撃ち込む。頭に撃ち込むとスイカみたいに破裂してしまうので、心臓を狙って撃ちこんでいる。威力が高かったため人差し指位の弾丸が、拳大の穴を胸の中心に開けていた。

 今のやり取りを見て、迷賊たちはかられる側だという事を理解してしまった。錯乱して無謀に突っ込んできた迷賊は、ケモ耳の1人に切り伏せられ、絶望した人間はその場に膝をついていた。その中でもリーダーと思わしき人物が、

「てめえら、何腑抜けてんだ! ここでなんとかしねえと死ぬだけだぞ! いったんあそこまで引くぞ!」

 こいつ、襲撃が失敗した時の事を考えて、次の作戦を考えていたのか? でも逃がさないよ。俺を中心に約一〇〇メートル程の物理結界を張る。

 俺以外のメンバーは通路に逃げて行った、迷賊を追いかけようとしたが、ダンジョン経験の多いスカルズやケモ耳娘によって進むのを止められている。

「みなさん、この先に罠がある可能性が高いです。無策で突っ込んではいけません。タンクの方を前に出して盾を構えながら、その後ろで斥候の方が罠の有無を確認しながら進むのがセオリーです」

 へ~そうなんだ、でもね。

 隊列を整えて進もうとした瞬間、

「なんだこれ! 見えない壁が目の前にあるぞ?」

「これじゃ、あの部屋に行けないじゃないか!」

「リーダーどうすればいいんだ!」

 怒鳴り声が聞こえてくる。迷賊は俺の結界によって、身動きが取れなくなっている。

「可能なら生きているやつらが多い方が良いけど、最悪リーダーと呼ばれた奴だけ生かしておいてくれ」

 俺は指示を出して索敵に神経を向けていく。レイリーが先頭を歩き、その後ろをソフィーとネルがついていく。罠はなさそうで索敵の範囲内に迷賊たちを捕えた。何やら道具のようなものを、取り出しているような動きを捕えた。

「みんなストップ! 奥で何かしてるな……レイリー大盾に持ち替えて進んでくれ」

「了解しました」

 盾技といえばいいのだろうか? レイリーが大盾を装備して【フォートレス】を使用している。

 フォートレスは盾で防御のできる範囲を広げるスキルだ。力場のようなものを作り出し、盾とスキルのLvによって強度が変わってくる技だ。城壁のように仲間を守るというのが、スキルの語源になっているとかいないとか?

 レイリーが通路いっぱいに防御範囲を広げて、ゆっくりと進んでいく。

 十字路の右側の通路から、突然ビンのようなものがレイリーをめがけて飛んできたが、フォートレスに阻まれてビンが割れる。次の瞬間、通路の奥から魔力の反応が強くなった。迷賊の誰かが魔法を唱えているようだ。三秒ほどすると魔法が完成したようで、魔法がビンが投げ込まれた通路から飛んでくる。

 その魔法は、ファイアアローだった。今更こんな魔法でどうしようと思ってるんだ? レイリーの盾にぶつかる前に急に通路が爆発した。

 爆発が収まっても炎が収まっていない。むしろ粘着質の何か燃えているような感じだった。燃える液体か? まさかこんなところでこんなものに出会うとはな。こういった物に注意を払ってなかった、俺の落ち度だな。この世界にもこんな物質があってもおかしくないもんな。

 爆発した爆薬のような性質と、タールの性質が合わさった物と言っていいのだろうか? 今は爆発はしていないがかなり火の勢いは強いな。二つの素材が混じってたのかな?

「レイリー大丈夫か?」

「少し熱かったですが、ダメージになるほどの事はありません」

「了解した。少し下がってからフォートレスを解除してくれ、水で押し流す! イリア精霊魔法であの火を消してくれ」

 レイリーが下がってフォートレスを解除すると、イリアの精霊魔法が発動する。レイリーを避けて結構大量の水が通路を進んでいく。ちょっと量が多すぎかな?

「みんな足元に注意してくれ、物理結界を張ってるから多分水が戻ってくるぞ」

 イリアがやっちゃった! みたいな顔をして舌を出していた。可愛いけど今はそういう事をしている場合じゃないぞ!

 しばらくすると水が押し寄せてきた? 戻ってきた?

 俺らはレイリーが大盾で、水の勢いを殺してくれたので靴の中に水が入るくらいの被害で済んだ。が、迷賊たちはそうはいかなかったようだ。通路いっぱいに押し寄せてきた水に体をとられて、レイリーの前まで流されてきてしまったのだ。

 レイリーがすぐに気付いて、スタンプの要領で腹を踏ん付けていくと、気絶するか痛みに騒ぐメンバーに分かれていた。うるさいので、騒ぐ迷賊に追加で蹴りをおみまいしておく。

「何か情けない終わり方だな。ちょっとミスも目立ったけど、結果的にはイリア、いい仕事したな!」

 俺がほめて頭をなでると飛び跳ねて喜んでいる。その姿をシェリルとネルが羨ましそうに見ている。いや、この二人だけでなく年少組・年中組の全員が同じ表情をしている。お前たち仲いいな。

 さて、こいつらの繋がりを調べないとな。
しおりを挟む
感想 316

あなたにおすすめの小説

現実世界にダンジョンが出現したのでフライングして最強に!

おとうふ
ファンタジー
2026年、突如として世界中にダンジョンが出現した。 ダンジョン内は無尽蔵にモンスターが湧き出し、それを倒すことでレベルが上がり、ステータスが上昇するという不思議空間だった。 過去の些細な事件のトラウマを克服できないまま、不登校の引きこもりになっていた中学2年生の橘冬夜は、好奇心から自宅近くに出現したダンジョンに真っ先に足を踏み入れた。 ダンジョンとは何なのか。なぜ出現したのか。その先に何があるのか。 世界が大混乱に陥る中、何もわからないままに、冬夜はこっそりとダンジョン探索にのめり込んでいく。 やがて来る厄災の日、そんな冬夜の好奇心が多くの人の命を救うことになるのだが、それはまだ誰も知らぬことだった。 至らぬところも多いと思いますが、よろしくお願いします!

人の才能が見えるようになりました。~いい才能は幸運な俺が育てる~

犬型大
ファンタジー
突如として変わった世界。 塔やゲートが現れて強いものが偉くてお金も稼げる世の中になった。 弱いことは才能がないことであるとみなされて、弱いことは役立たずであるとののしられる。 けれども違ったのだ。 この世の中、強い奴ほど才能がなかった。 これからの時代は本当に才能があるやつが強くなる。 見抜いて、育てる。 育てて、恩を売って、いい暮らしをする。 誰もが知らない才能を見抜け。 そしてこの世界を生き残れ。 なろう、カクヨムその他サイトでも掲載。 更新不定期

ハズレスキル【地図化(マッピング)】で追放された俺、実は未踏破ダンジョンの隠し通路やギミックを全て見通せる世界で唯一の『攻略神』でした

夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティの荷物持ちだったユキナガは、戦闘に役立たない【地図化】スキルを理由に「無能」と罵られ、追放された。 しかし、孤独の中で己のスキルと向き合った彼は、その真価に覚醒する。彼の脳内に広がるのは、モンスター、トラップ、隠し通路に至るまで、ダンジョンの全てを完璧に映し出す三次元マップだった。これは最強の『攻略神』の眼だ――。 彼はその圧倒的な情報力を武器に、同じく不遇なスキルを持つ仲間たちの才能を見出し、不可能と言われたダンジョンを次々と制覇していく。知略と分析で全てを先読みし、完璧な指示で仲間を導く『指揮官』の成り上がり譚。 一方、彼を失った勇者パーティは迷走を始める……。爽快なダンジョン攻略とカタルシス溢れる英雄譚が、今、始まる!

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

【もうダメだ!】貧乏大学生、絶望から一気に成り上がる〜もし、無属性でFランクの俺が異文明の魔道兵器を担いでダンジョンに潜ったら〜

KEINO
ファンタジー
貧乏大学生の探索者はダンジョンに潜り、全てを覆す。 ~あらすじ~ 世界に突如出現した異次元空間「ダンジョン」。 そこから産出される魔石は人類に無限のエネルギーをもたらし、アーティファクトは魔法の力を授けた。 しかし、その恩恵は平等ではなかった。 富と力はダンジョン利権を牛耳る企業と、「属性適性」という特別な才能を持つ「選ばれし者」たちに独占され、世界は新たな格差社会へと変貌していた。 そんな歪んだ現代日本で、及川翔は「無属性」という最底辺の烙印を押された青年だった。 彼には魔法の才能も、富も、未来への希望もない。 あるのは、両親を失った二年前のダンジョン氾濫で、原因不明の昏睡状態に陥った最愛の妹、美咲を救うという、ただ一つの願いだけだった。 妹を治すため、彼は最先端の「魔力生体学」を学ぶが、学費と治療費という冷酷な現実が彼の行く手を阻む。 希望と絶望の狭間で、翔に残された道はただ一つ――危険なダンジョンに潜り、泥臭く魔石を稼ぐこと。 英雄とも呼べるようなSランク探索者が脚光を浴びる華やかな世界とは裏腹に、翔は今日も一人、薄暗いダンジョンの奥へと足を踏み入れる。 これは、神に選ばれなかった「持たざる者」が、絶望的な現実にもがきながら、たった一つの希望を掴むために抗い、やがて世界の真実と向き合う、戦いの物語。 彼の「無属性」の力が、世界を揺るがす光となることを、彼はまだ知らない。 テンプレのダンジョン物を書いてみたくなり、手を出しました。 SF味が増してくるのは結構先の予定です。 スローペースですが、しっかりと世界観を楽しんでもらえる作品になってると思います。 良かったら読んでください!

どうしてこうなった道中記-サブスキルで面倒ごとだらけ-

すずめさん
ファンタジー
ある日、友達に誘われ始めたMMORPG…[アルバスクロニクルオンライン] 何の変哲も無くゲームを始めたつもりがしかし!?… たった一つのスキルのせい?…で起きる波乱万丈な冒険物語。 ※本作品はPCで編集・改行がされて居る為、スマホ・タブレットにおける 縦読みでの読書は読み難い点が出て来ると思います…それでも良いと言う方は…… ゆっくりしていってね!!! ※ 現在書き直し慣行中!!!

ダンジョン作成から始まる最強クラン

山椒
ファンタジー
ダンジョンが出現して数十年が経ち、ダンジョンがあることが日常となっていた。 そんな世界で五年前に起きた大規模魔物侵攻により心に傷を受けた青年がいた。 極力誰とも関わりを持たずにいた彼の住んでいる部屋に寝ている間にダンジョンが出現し、彼はそこに落ちた。 そのダンジョンは他に確認されていない自作するダンジョンであった。 ダンジョンとモンスターにトラウマを抱えつつもダンジョン作成を始めていく。 ただそのダンジョンは特別性であった。 ダンジョンが彼を、彼の大事な人を強くするダンジョンであった。

ダンジョン学園サブカル同好会の日常

くずもち
ファンタジー
ダンジョンを攻略する人材を育成する学校、竜桜学園に入学した主人公綿貫 鐘太郎(ワタヌキ カネタロウ)はサブカル同好会に所属し、気の合う仲間達とまったりと平和な日常を過ごしていた。しかしそんな心地のいい時間は長くは続かなかった。 まったく貢献度のない同好会が部室を持っているのはどうなのか?と生徒会から同好会解散を打診されたのだ。 しかしそれは困るワタヌキ達は部室と同好会を守るため、ある条件を持ちかけた。 一週間以内に学園のため、学園に貢献できる成果を提出することになったワタヌキは秘策として同好会のメンバーに彼の秘密を打ちあけることにした。

処理中です...