ダンマス(異端者)

AN@RCHY

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第584話 密約

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 俺が指令室と呼んでいる部屋に、久しぶりにやって来た。作ってからほとんど使われる事のなかった部屋だ。この部屋にやってきたのは、俺、カエデ、ミリー、リンド、シルキーの四人、グリエル、ガリアの十人だ。

 シルキーたちは言うまでも無く、俺たちの身の回りの世話という名目で指令室に来ている。この指令室は、スプリガンのみんながいる、ダンジョン監視室の上位互換のような場所だ。監視室の機能に、すべての通信がここに集まるようになっている。

 俺たちは家が近いからなんの問題も無いが、俺たち以外の人間が来た時に使えるように、ベッドルームもシャワールーム、お風呂場、日光浴ルーム、トレーニングルームも完備している。

 それはさておき、現状を理解するためにグリエルから話があった。内容は特に変わらず、帝国で反乱があり、メギドの技術を奪うために、近隣の街が俺達の街を狙っている事だ。

 反乱と言っても、皇帝に逆らって他国……違うな、他国を攻める事は禁止していないが、俺の所有している街は攻めてはいけないと勅命が出てるが、それに違反しているため反乱という扱いになっている。

 俺らの力を知らない近くの街の貴族たちは、厳命が出ていても街を落としてしまえば問題ない、と考えているのだろうとの事だ。この部分については、皇帝と連絡をとって対応する予定だ。

 その後にメギドで行う対策で、アンソニと話した内容をみんなに伝えた。

「今の所、状況な分からないので、これ以上の対策は無理でしょう。情報を集めて対応を考えます。先だって暗部の者たちを、帝国内に潜ませています」

 ……ん? 暗部ってなんだ?

「あ、シュウ様にはまだ話していませんでしたね。ミリーさんたちとお話をして、諜報部みたいなものを作っています。暗部と言ってもシュウ様の知っているような、暗殺家業を生業としている人たちではありませんよ」

 ふむふむ、そういう部署ができたってことか。知らない事がまだまだありそうだな。

「俺は、皇帝から連絡来るのを待つしかないか? と言うことは、解散か? わざわざ来たのにそれでいいのかな?」

「気にしないでください、スカーレットさんにはブラウニーを派遣してもらうように、お願いしています。しばらくはここに詰めておくことになるので」

「待て待て、きちんと家に帰れ! ここにはドッペルで来れるようにしておけば問題ないし、通信機を持っておけば問題ないだろ? これは命令だからな! 今からドッペル用意するから、しっかりリンクしておけよ」

 グリエルとガリアに厳命してから、ドッペルゲンガーを召喚してニ人とリンクできるようにしておく。

「そだ、三人は何かしておいた方がいいと思う事ってあるか?」

「シュウ君の言う通り外の対応は、現状で問題ないと思いますが、内側の対応が大丈夫なのかと気になります。外から物が入ってこないと、住人たちが騒ぎ出すかもしれませんね。

 私たちや商会の人間は、秘密ルートがある事を知っているので、暴動とかにはならないと思いますが」

「言われてみれば、街の中の事を考えていなかったな。秘密をばらすわけにはいかないから、メギドでの有名なスカルズと獣娘たちを使って、仕入れているとかにした方がいいかな? でも値段は一緒にしておけば問題ないか?」

「その辺で手を打っておきましょう。専用の馬車を準備しておかないといけませんね」

「それならこの前俺たちがつかった、収納箱がいくつも備え付けてある奴があるから、それを使ってくれ。これで商会が本気だという事が、伝わるかな?」

「そうですね。もし問題があるなら何か違う方法を考えましょう。ですが、あの7人をつけるという事は、襲われても返り討ちにする事前提ってことですよね?」

「そうだぞ。むしろ兵士を盗賊として処理してしまえば楽かと思ってな。メギド所属の商会だとわかれば、つられて襲ってくる奴らがいるだろうから、簡単になればいいな」

 後半は希望的観測で話している。

「竜騎士からの連絡待ちかな。しばらくは休んでてくれ。何かあったら連絡して、こっちも何かあれば連絡するから。夜は絶対に家に帰れよ! 夜帰って来なかったとか言って、奥さんと不仲になりましたじゃシャレにならんからな」

「そんな事でしたか。シュウ様からの仕事とわかれば、奥さんも子供も死んでも勤めを果たして来い、って言いますよ」

「まてまて、死なれたら困るから! 特に俺が困る! そんなことにならないように、エリクサーを大量に準備しておくべきか!回復魔法に特化した魔物とかいなかったっけな」

「シュウ様! 待ってください! 家に帰りますので、魔法薬や魔物の事を検討しないでください。少しでも体調が悪くなったら、きちんと申告しますので」

「そうか……でも、いざって時のために、エリクサーは数本準備しておくべきだよな。回復魔法の使える魔物も欲しいな。スケルトンが良い結果を出してくれれば、うれしいんだけど、俺の思惑通りに進んでくれないかな?」

 グリエルとガリアが顔を見合わせて、迂闊な発言だったか? みたいな顔をしているが、俺は真剣にエリクサーのストックと、回復魔法の使える魔物の検討をしているので、気付く事は無かった。

 そろそろ夕食の時間かなと思っていると、竜騎士から連絡が入ったとの事で慌てて指令室へ戻る。

「シュウ様、竜騎士が帝都について、皇帝に謁見ができたそうです」

 指令室へ戻ると、グリエルとガリアがいたが、しっかりとドッペルに変わっている。

「今すぐあっちと話せる状態?」

「大丈夫です。皇帝にも通信機の概要を伝えていますので、問題ないと思われます」

『ディストピアの領主殿、この度は私の管理下にある街で、反乱がおきてしまった。シュウ殿が来られる前に、領主代行のグリエル殿と、話のすり合わせをさせてもらっている。

 情報には差異は無く、そちらが予想していることが間違いなく起こるだろう。本来ならこんな事を頼むのは、筋違いなのだが……これ以上街を切り取るのは、ご勘弁いただけないだろうか?』

「本音で話せば、街を管理するのも面倒臭いから、何とか侵攻してこない様にならんのか?」

『急いで近衛騎士たちを向かわせてはいるが、おそらく間に合わないであろう。こちらの被害を減らすための策があるのだが、、聞いていただけるだろうか?』

「聞いてから判断するから教えてくれ」

『こちらで未然に防ぐのは、おそらく無理だろう。なので、メギドから東の帝国のはずれのニつの街を、短時間で落としてもらえないだろうか? 他国との境目は色々と経費が掛かるので、最悪切り取られてもこちらとしては被害が少ないのだ』

「こっちのメリットは?」

『ニつの街を攻め落とす労力として、見合うかは分からないが、そのニつの街と隣国の丁度境目あたりに、湖タイプの魔物の領域がある。水産資源が多い場所だ。そこの領主たちでは有効活用できないが、シュウ殿であれば問題ないと思うのだが?』

「水産資源の取れる魔物の領域か……ちょっと大変かもしれないけど、何とかなるかもな」

『そこで採れた物を卸してくれれば、いい値段をつけさせていただく』

「そこが本音か。それより、東にあるニつを攻め落とすと、どうしてそっちの被害が減るんだ?」

『短時間で落とされれば、さすがに奴らも二の足を踏むであろう。その時間でメギド周辺の街を、反逆罪を理由に取り上げて、皇帝直轄の街にすればよいと考えている』

「なるほどな。グリエル、どう思う?」

「そうですね、シュウ様の想いを考えると、悪くない申し出だと思います。その線で行きますか?」

「皇帝、その線で行こう。俺たちは東にあるニつの街を攻め落とすわ。その後は攻めてきても、壁を越されないように死守している間に、他の街は任せたぞ!」

 帝国との密約がここに締結された。
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