ダンマス(異端者)

AN@RCHY

文字の大きさ
705 / 2,518

第705話 その瞬間は突然に! パート2

しおりを挟む
 メデューサがドロップ品に変わって呆然としていると、

「ご主人様! ボーっとしてる場合じゃないの! 向こうの蛇の方に行くの!」

 シェリルが呆然としている俺たちに向かって、大きな声をあげる。

「お、おぅ……そうだな。ここで呆然としてる場合じゃないな。みんな、向こうの空飛び蛇の方に行くよ。何人かは外れたアンカーを回収してくれ。ダンジョンに結構深くに埋め込んでるから、大変かもしれないけどよろしく。俺は空飛び蛇に刺さってるアンカーを、引き寄せてみるかな」

 地面に引き落とさないと話にならないと思い、考えていた案を口にして実行してみる事にした。一番近くにあるアンカーに近付き、ワイヤーを掴み引っ張ってみた。

 普通に考えて俺の数千倍の重量を持つ空飛び蛇が、たかが俺の重量で引きずり下ろせるわけはなかった。あいつからすればゴミ虫と変わらないのだから、引きずり下ろせるわけがなかった。

 気を取り直して、まずはアンカーを付け直さないとな。みんなが回収してきたアンカーの1本を受け取り、動きを制限され牽制されている空飛び蛇に向かって、再度アンカーを投げて打ち込む。

「リンド! アンカーをいつでも打ち込めるように、準備しておいてくれ」

 初めのアンカーは、行動制限の事をあまり考えずに打ち込んでいるので、結構なゆるみがあったが、今回はそのゆるみを可能な限り減らして行動制限をかけるつもりだ。

「遠距離攻撃は、体の左側面を狙って可能な限り右側に、誘導するようにけん制してくれ。リリー、アンカーをもって向こうの方に移動してくれ。リンドもついていって、指示があったら打ち込んでくれ。シュリも向こう側でヘイトを稼いでくれ」

 俺の指示で遠距離攻撃を持っている全員が空飛び蛇の左側面を狙い、右側誘導している。俺も遠距離攻撃に加わって誘導の手伝いをする。シュリの【挑発】がきいて空飛び蛇が、目標の方向へ移動していく。

「リリー! シュリ! 今だやれ!」

 俺の指示に従ってアンカーが打ち込まれる。俺はすかさずに回収されたアンカーを受け取り、もがいている空飛び蛇の体に、追加で5本のアンカーを打ち込むと、シュリが注意を引いていたのだが、俺にターゲットを変えて襲ってきた。

「俺が注意をひいておくから、地面に打ち込むアンカーをもって四方に散ってくれ。リンドはまたアンカーの打ち込みを頼む! シュリは、盾を使ってでもいいから、アンカーを打ち込むのを手伝ってくれ!他にも打ち込めるメンバーは頼む。

 回収したアンカーを持っているメンバーは、ちょっと離れた所にアンカーを置いておいてくれ! 余裕があったら回収して打ち込むから頼む!」

 みんなに指示を出して、自分たちに有利になるように立ちまわっていく。3本のアンカーを回収している間に、先ほど空飛び蛇の体に打ち込んだアンカーの先を、ダンジョンに固定してくれていた。大分行動制限がかかっている。

 同じ様に残りのアンカーを打ち込み固定していく。ダンジョンの壁や床に比べて、空飛び蛇の体の方がアンカーが抜けやすいようで、打ち込んでいる間にも3本も抜けてしまったため、アンカーを回収している。

「みんな、大分行動制限の効果が出てきたね。これなら攻撃をできるかな? 無理をする必要はないけど……みんな、退避!」

 俺が次の指示を出そうとしていた時に、空飛び蛇が大きな鳴き声を上げて体が大きくなっていた。それと同時に体から大量の禍々しい色の霧を放出していたのだ。

 アンカーはアダマンコーティングで対処していたため、特に問題なかったのだが生身の俺たちは危険だった。戦闘中はいくつかの集団になっていて、結界や水魔法の霧で何とか防いでいたのだが、俺だけ離れていて空飛び蛇の対応をしていたので、とっさに防御する事が出来なかった。

 しかも俺との距離が近かったためか、全身が空飛び蛇が放出した禍々しい色の霧に包まれてしまった。

「あがっ!!!」

 俺の全身に痛みが走った。この世界に来て切り傷、擦り傷、骨折等々いろんな痛みを負ってきたが、今回の痛みが一番痛いと感じる程の痛みだった……気合を入れていたのに、思わず声が出てしまったほどだ。

 全身に走る痛みに目をつぶり耐えながら、1つの事を考えていた。ここで絶対に息を吸ってはいけない!すったら最後、肺の中が焼かれてしまう。だがどうする事も出来ずその場で息を止めて、うずくまってしまった。

「ご主人様! ライム! 私たちの防御は良いからご主人様を! 他の魔法使いのメンバーもご主人様を助けなさい!」

 ピーチが指示を出していた、俺の事は良いから自分の身を守ってくれ。全身に針を刺したり抜いたりされるような痛みに耐えながら、そんな事を考えていた。

 魔法の発動兆候が感じられる。何人かが魔法の発動準備をしているのだろう。そんなことしたら自分たちの身が危ないのに……薄れゆく意識の中で俺は、魔法を発動していた。

【ウォーターストーム】

 水嵐の魔法を使用して、俺を中心に毒を押し流していた。

「ゴホッゴホ!ブハァッ!」

 咳をしてから、息を吸って肺の中を空気で満たす。

「はぁはぁ、みんな大丈夫か? まだ体が痛むが問題ないか?」

 俺の声にこたえるわけでは無いだろうが、妻たちが全員俺の方に向かって走ってきていた。敵を前にそれはダメだろ! あれ? 俺ってこんなに冷静に色々考えられる人間だったっけ? 自分の冷静な判断に混乱するという矛盾を感じながら声をあげる。

「敵が近くにいるんだぞ! 全員戦闘に戻れ!」

 今までにない俺の声を聴いて、全員がはっとした顔で空飛び蛇に視線を戻し、戦闘態勢をとっていた。俺も視線を向けると……

「大分でかくなってるな、体の方に打ち込んだアンカーのつなぎ目が見えなくなってる。メデューサみたいに肥大化したから、暴走状態みたいなものか? ダメージなんてそんなに与えて無かったはずなのに、どうしてだ? もしかして体のサイズに似合わず弱い?」

 自分で言ったセリフを再度頭の中で考え否定する。もし今までのダメージ量で暴走状態になるのなら、リビングアーマーで戦った時に、暴走状態にできてたはずだ……ならどうしてだ?

 俺が思考の渦に飲み込まれている間も空飛び蛇は、身をねじりアンカーと格闘していた。体に打ち込まれたアンカーは肥大化した時に、体の中に取り込んでしまい体から抜ける事は無かった。

 ダンジョンに打ち込まれたアンカーも、ミシミシと音を立てているが外れる気配は見られない。苛立ったのか地面に下りて、アンカーを直接外そうとしている姿が見られる。

 その隙を見逃すわけもなく近接組が空飛び蛇の元に殺到して、スキルリンクを加えながらダメージを与えていた。身をよじって回避をしようとしているが、ワイヤーが変な風に絡みついたのか、ドンドンと動きが制限されていくのが目に見えて分かった。

 大きく鳴いて、体を強引に浮かせてワイヤーを引きちぎろうとして、消えた……

「「「「「はぁっ!?」」」」」

 メデューサと同じく唐突にドロップ品に変わってしまった。
しおりを挟む
感想 316

あなたにおすすめの小説

現実世界にダンジョンが出現したのでフライングして最強に!

おとうふ
ファンタジー
2026年、突如として世界中にダンジョンが出現した。 ダンジョン内は無尽蔵にモンスターが湧き出し、それを倒すことでレベルが上がり、ステータスが上昇するという不思議空間だった。 過去の些細な事件のトラウマを克服できないまま、不登校の引きこもりになっていた中学2年生の橘冬夜は、好奇心から自宅近くに出現したダンジョンに真っ先に足を踏み入れた。 ダンジョンとは何なのか。なぜ出現したのか。その先に何があるのか。 世界が大混乱に陥る中、何もわからないままに、冬夜はこっそりとダンジョン探索にのめり込んでいく。 やがて来る厄災の日、そんな冬夜の好奇心が多くの人の命を救うことになるのだが、それはまだ誰も知らぬことだった。 至らぬところも多いと思いますが、よろしくお願いします!

人の才能が見えるようになりました。~いい才能は幸運な俺が育てる~

犬型大
ファンタジー
突如として変わった世界。 塔やゲートが現れて強いものが偉くてお金も稼げる世の中になった。 弱いことは才能がないことであるとみなされて、弱いことは役立たずであるとののしられる。 けれども違ったのだ。 この世の中、強い奴ほど才能がなかった。 これからの時代は本当に才能があるやつが強くなる。 見抜いて、育てる。 育てて、恩を売って、いい暮らしをする。 誰もが知らない才能を見抜け。 そしてこの世界を生き残れ。 なろう、カクヨムその他サイトでも掲載。 更新不定期

ハズレスキル【地図化(マッピング)】で追放された俺、実は未踏破ダンジョンの隠し通路やギミックを全て見通せる世界で唯一の『攻略神』でした

夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティの荷物持ちだったユキナガは、戦闘に役立たない【地図化】スキルを理由に「無能」と罵られ、追放された。 しかし、孤独の中で己のスキルと向き合った彼は、その真価に覚醒する。彼の脳内に広がるのは、モンスター、トラップ、隠し通路に至るまで、ダンジョンの全てを完璧に映し出す三次元マップだった。これは最強の『攻略神』の眼だ――。 彼はその圧倒的な情報力を武器に、同じく不遇なスキルを持つ仲間たちの才能を見出し、不可能と言われたダンジョンを次々と制覇していく。知略と分析で全てを先読みし、完璧な指示で仲間を導く『指揮官』の成り上がり譚。 一方、彼を失った勇者パーティは迷走を始める……。爽快なダンジョン攻略とカタルシス溢れる英雄譚が、今、始まる!

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

【もうダメだ!】貧乏大学生、絶望から一気に成り上がる〜もし、無属性でFランクの俺が異文明の魔道兵器を担いでダンジョンに潜ったら〜

KEINO
ファンタジー
貧乏大学生の探索者はダンジョンに潜り、全てを覆す。 ~あらすじ~ 世界に突如出現した異次元空間「ダンジョン」。 そこから産出される魔石は人類に無限のエネルギーをもたらし、アーティファクトは魔法の力を授けた。 しかし、その恩恵は平等ではなかった。 富と力はダンジョン利権を牛耳る企業と、「属性適性」という特別な才能を持つ「選ばれし者」たちに独占され、世界は新たな格差社会へと変貌していた。 そんな歪んだ現代日本で、及川翔は「無属性」という最底辺の烙印を押された青年だった。 彼には魔法の才能も、富も、未来への希望もない。 あるのは、両親を失った二年前のダンジョン氾濫で、原因不明の昏睡状態に陥った最愛の妹、美咲を救うという、ただ一つの願いだけだった。 妹を治すため、彼は最先端の「魔力生体学」を学ぶが、学費と治療費という冷酷な現実が彼の行く手を阻む。 希望と絶望の狭間で、翔に残された道はただ一つ――危険なダンジョンに潜り、泥臭く魔石を稼ぐこと。 英雄とも呼べるようなSランク探索者が脚光を浴びる華やかな世界とは裏腹に、翔は今日も一人、薄暗いダンジョンの奥へと足を踏み入れる。 これは、神に選ばれなかった「持たざる者」が、絶望的な現実にもがきながら、たった一つの希望を掴むために抗い、やがて世界の真実と向き合う、戦いの物語。 彼の「無属性」の力が、世界を揺るがす光となることを、彼はまだ知らない。 テンプレのダンジョン物を書いてみたくなり、手を出しました。 SF味が増してくるのは結構先の予定です。 スローペースですが、しっかりと世界観を楽しんでもらえる作品になってると思います。 良かったら読んでください!

どうしてこうなった道中記-サブスキルで面倒ごとだらけ-

すずめさん
ファンタジー
ある日、友達に誘われ始めたMMORPG…[アルバスクロニクルオンライン] 何の変哲も無くゲームを始めたつもりがしかし!?… たった一つのスキルのせい?…で起きる波乱万丈な冒険物語。 ※本作品はPCで編集・改行がされて居る為、スマホ・タブレットにおける 縦読みでの読書は読み難い点が出て来ると思います…それでも良いと言う方は…… ゆっくりしていってね!!! ※ 現在書き直し慣行中!!!

ダンジョン作成から始まる最強クラン

山椒
ファンタジー
ダンジョンが出現して数十年が経ち、ダンジョンがあることが日常となっていた。 そんな世界で五年前に起きた大規模魔物侵攻により心に傷を受けた青年がいた。 極力誰とも関わりを持たずにいた彼の住んでいる部屋に寝ている間にダンジョンが出現し、彼はそこに落ちた。 そのダンジョンは他に確認されていない自作するダンジョンであった。 ダンジョンとモンスターにトラウマを抱えつつもダンジョン作成を始めていく。 ただそのダンジョンは特別性であった。 ダンジョンが彼を、彼の大事な人を強くするダンジョンであった。

ダンジョン学園サブカル同好会の日常

くずもち
ファンタジー
ダンジョンを攻略する人材を育成する学校、竜桜学園に入学した主人公綿貫 鐘太郎(ワタヌキ カネタロウ)はサブカル同好会に所属し、気の合う仲間達とまったりと平和な日常を過ごしていた。しかしそんな心地のいい時間は長くは続かなかった。 まったく貢献度のない同好会が部室を持っているのはどうなのか?と生徒会から同好会解散を打診されたのだ。 しかしそれは困るワタヌキ達は部室と同好会を守るため、ある条件を持ちかけた。 一週間以内に学園のため、学園に貢献できる成果を提出することになったワタヌキは秘策として同好会のメンバーに彼の秘密を打ちあけることにした。

処理中です...