783 / 2,518
第783話 ロマン武器
しおりを挟む
一昨日、萎える惨状を見た俺は、次の日にグリエルの元を再度訪れて思ったことをそのまま伝え、特殊雇用としての冒険者枠を作る事になった。グリエルがゴーストタウンの領主をやっている老ドワーフとギルドマスターに話を通した。
その時、ディストピア以外では、女性冒険者は男性冒険者に比べて、稼ぎが低いので、冒険者ギルドとしては稼ぎが少ない新人の女性冒険者が、質の悪いパーティーに捕まらないでも大丈夫になる事はありがたいと、ゴーストタウンからと冒険者ギルドの両方の出資となった。
俺はその報告を受けて、悪い奴らに捕まる女性冒険者が減るのは良い事だよな。基本自己責任の冒険者活動でも、騙されてとか色々問題はあるけど、そういう人が減るのは良い事だろう。
特に女性冒険者は横のつながりが強いので、助け合う事も多く分母が多くなれば、それだけ安全が確保できるからな、ギルドとしても嬉しい仕事だろう。
正規の牢番1人と女性冒険者2名で夜勤をやる事になったので、毎日2人の雇用が生まれた。このクエストに関しては、連続受注ができないようになっており、最低1週間はあけないと受けられない事になっている。その分、報酬も高くなっているから、本当に困っている女性冒険者に受けてもらいたいものだ。
昨日一日は、萎えた気持ちを持ち直すことはできずに、グリエルとガリア、ゼニスから確認してもらいたいと言われた内容の書類を処理して家に帰ったっけな? 最後の方は、魂が抜けて仕事してた気がする。あの3人が確認した書類だから、不備がほとんどなくサインをする機械になってたな。
と言うか、意図的に不備のある書類を混ぜるのはやめてほしい! 前に確認せずにサインして怒られたもんな。実質名前だけの領主だから、俺に確認しなくてもいいって言ってるのにな。未だに俺が最終確認しなきゃいけないと言って、重要書類を回してくるんだから、いやんなっちゃう!
何とか立ち直れた今日は、久々に訓練をする事にした。綾乃が新型とは違うな、改良型の人造ゴーレムを作ってみたから、性能評価してほしいと言われたので訓練場に来ている。
「あ~シュウ、やっと来てくれた。助かったよ。私、戦闘はまるでダメじゃん? だから性能評価ができないんだよ。そしてこれが、私の仕上げた最新作! 改良型人造ゴーレム君7号だよ!」
綾乃はそう言って、布をはぎ取る。そこには俺も一度は構想したことのあるタイプの、人造ゴーレムがそこには立っていた。
「綾乃、さすがにそれの性能評価は無理だ。危険とかいうレベルじゃない。そんなのと訓練したら怪我じゃすまないだろ!」
俺は綾乃が作った改良型人造ゴーレムを見てすぐに理解した。Sランクの魔石を使った魔核によって出力が桁違いに上がっており、手足が刃物状になっていて、その部分はアダマンタイト製の人造ゴーレムだ。
どう考えても避け損ねたら、手足の1本や2本は軽く切り落とされてしまう。そして構想したのに作っていないのは、この人造ゴーレムには欠点があるからだ。
「それに綾乃、こいつの欠点に気が付いてるか?」
「え? 欠点?」
「あーやっぱり気付いてないよな。ダンジョンの床が外の地面に比べて、圧倒的に強度が高いのは知ってるよな? 人造ゴーレムの装甲にアダマンタイト増やしてるだろ?
Sランクの魔石で魔核が作れるようになったから、出力の面では問題ないけど、重くなってるだろ? ダンジョンでは立っていられても、外に出たら動けなくなるぞ。ダンジョンならスパイクみたいに、軽く刺さるだけだと思うけど、外だとな……」
アダマンタイトは重いのだ。重量のある刃物が地面に……
「あっ! 足が地面に埋まっちゃう?」
「ダンジョンでも高速戦闘したら、多分抜くのが大変なレベルで刺さると思う」
「……」
無言になった綾乃を見て、返答を待っていると、
「シュウ、よく来てくれたね! 助かったよ。私、戦闘はまるでダメじゃん? だから性能評価ができないんだよ。そしてこれが、私の仕上げた最新作! 改良型人造ゴーレム君8号だよ!」
もう1個準備していた改良型人造ゴーレムの布をめくって、初めの人造ゴーレムをなかったことにしたようだ。
次に出てきたのは、ちょっと重装甲に見えるタイプの人造ゴーレムだ。俺の初めて作った人造ゴーレムのコンセプトは、人型……いわゆる万能型、武器を持たせて戦うタイプの物を作っている。
それに対して、綾乃が作ったのは装備一体型とでもいえばいいだろう。そして装備しているのは、両手に盾のような物、あれはおそらくロマン武器だと思う。
「両手に持った盾は、もちろん盾の役目を果たしますが、拳側のこの部分を攻撃対象にあててトリガーを握ると、なんと! 杭が出ます! ロボットゲームにある、ロマン武器のパイルバンカーです!」
やっぱりパイルバンカーだったか。あれは、火薬などで杭を打ち出すだけで、銃判定ではないから使えるんだろうけど、人間だと反動に耐えられないから実用的な武器ではないが、重量のある人造ゴーレムなら使えるってことか?
「火薬方式は重量が増えるし、リロードしないといけないので、今回はマッスルメタルを使って、結構な威力を実現したのよ!」
「試射はしたのか?」
「まだよ?」
「バカ! まずは試射しろ! 何もなしに性能試験とかするな!」
「え~、だってめんどいじゃん? 私作るのが好きなんだもん!」
「もんって、可愛くないわ! しょうがない、戦闘訓練のつもりだったけど、性能実験か」
ただ、今回の性能実験で分かった事は、パイルバンカーは本当の意味でロマン武器だった。人造ゴーレムの重さでも、ひっくり返ってしまった。
姿勢が悪いと倒れてしまうようだ。質量体を打ち出すまでは良いが、杭が刺さった際の反動をうち消せないので、その部分を解決できないと武器として利用する事ができない、と結論に達した。
その時、ディストピア以外では、女性冒険者は男性冒険者に比べて、稼ぎが低いので、冒険者ギルドとしては稼ぎが少ない新人の女性冒険者が、質の悪いパーティーに捕まらないでも大丈夫になる事はありがたいと、ゴーストタウンからと冒険者ギルドの両方の出資となった。
俺はその報告を受けて、悪い奴らに捕まる女性冒険者が減るのは良い事だよな。基本自己責任の冒険者活動でも、騙されてとか色々問題はあるけど、そういう人が減るのは良い事だろう。
特に女性冒険者は横のつながりが強いので、助け合う事も多く分母が多くなれば、それだけ安全が確保できるからな、ギルドとしても嬉しい仕事だろう。
正規の牢番1人と女性冒険者2名で夜勤をやる事になったので、毎日2人の雇用が生まれた。このクエストに関しては、連続受注ができないようになっており、最低1週間はあけないと受けられない事になっている。その分、報酬も高くなっているから、本当に困っている女性冒険者に受けてもらいたいものだ。
昨日一日は、萎えた気持ちを持ち直すことはできずに、グリエルとガリア、ゼニスから確認してもらいたいと言われた内容の書類を処理して家に帰ったっけな? 最後の方は、魂が抜けて仕事してた気がする。あの3人が確認した書類だから、不備がほとんどなくサインをする機械になってたな。
と言うか、意図的に不備のある書類を混ぜるのはやめてほしい! 前に確認せずにサインして怒られたもんな。実質名前だけの領主だから、俺に確認しなくてもいいって言ってるのにな。未だに俺が最終確認しなきゃいけないと言って、重要書類を回してくるんだから、いやんなっちゃう!
何とか立ち直れた今日は、久々に訓練をする事にした。綾乃が新型とは違うな、改良型の人造ゴーレムを作ってみたから、性能評価してほしいと言われたので訓練場に来ている。
「あ~シュウ、やっと来てくれた。助かったよ。私、戦闘はまるでダメじゃん? だから性能評価ができないんだよ。そしてこれが、私の仕上げた最新作! 改良型人造ゴーレム君7号だよ!」
綾乃はそう言って、布をはぎ取る。そこには俺も一度は構想したことのあるタイプの、人造ゴーレムがそこには立っていた。
「綾乃、さすがにそれの性能評価は無理だ。危険とかいうレベルじゃない。そんなのと訓練したら怪我じゃすまないだろ!」
俺は綾乃が作った改良型人造ゴーレムを見てすぐに理解した。Sランクの魔石を使った魔核によって出力が桁違いに上がっており、手足が刃物状になっていて、その部分はアダマンタイト製の人造ゴーレムだ。
どう考えても避け損ねたら、手足の1本や2本は軽く切り落とされてしまう。そして構想したのに作っていないのは、この人造ゴーレムには欠点があるからだ。
「それに綾乃、こいつの欠点に気が付いてるか?」
「え? 欠点?」
「あーやっぱり気付いてないよな。ダンジョンの床が外の地面に比べて、圧倒的に強度が高いのは知ってるよな? 人造ゴーレムの装甲にアダマンタイト増やしてるだろ?
Sランクの魔石で魔核が作れるようになったから、出力の面では問題ないけど、重くなってるだろ? ダンジョンでは立っていられても、外に出たら動けなくなるぞ。ダンジョンならスパイクみたいに、軽く刺さるだけだと思うけど、外だとな……」
アダマンタイトは重いのだ。重量のある刃物が地面に……
「あっ! 足が地面に埋まっちゃう?」
「ダンジョンでも高速戦闘したら、多分抜くのが大変なレベルで刺さると思う」
「……」
無言になった綾乃を見て、返答を待っていると、
「シュウ、よく来てくれたね! 助かったよ。私、戦闘はまるでダメじゃん? だから性能評価ができないんだよ。そしてこれが、私の仕上げた最新作! 改良型人造ゴーレム君8号だよ!」
もう1個準備していた改良型人造ゴーレムの布をめくって、初めの人造ゴーレムをなかったことにしたようだ。
次に出てきたのは、ちょっと重装甲に見えるタイプの人造ゴーレムだ。俺の初めて作った人造ゴーレムのコンセプトは、人型……いわゆる万能型、武器を持たせて戦うタイプの物を作っている。
それに対して、綾乃が作ったのは装備一体型とでもいえばいいだろう。そして装備しているのは、両手に盾のような物、あれはおそらくロマン武器だと思う。
「両手に持った盾は、もちろん盾の役目を果たしますが、拳側のこの部分を攻撃対象にあててトリガーを握ると、なんと! 杭が出ます! ロボットゲームにある、ロマン武器のパイルバンカーです!」
やっぱりパイルバンカーだったか。あれは、火薬などで杭を打ち出すだけで、銃判定ではないから使えるんだろうけど、人間だと反動に耐えられないから実用的な武器ではないが、重量のある人造ゴーレムなら使えるってことか?
「火薬方式は重量が増えるし、リロードしないといけないので、今回はマッスルメタルを使って、結構な威力を実現したのよ!」
「試射はしたのか?」
「まだよ?」
「バカ! まずは試射しろ! 何もなしに性能試験とかするな!」
「え~、だってめんどいじゃん? 私作るのが好きなんだもん!」
「もんって、可愛くないわ! しょうがない、戦闘訓練のつもりだったけど、性能実験か」
ただ、今回の性能実験で分かった事は、パイルバンカーは本当の意味でロマン武器だった。人造ゴーレムの重さでも、ひっくり返ってしまった。
姿勢が悪いと倒れてしまうようだ。質量体を打ち出すまでは良いが、杭が刺さった際の反動をうち消せないので、その部分を解決できないと武器として利用する事ができない、と結論に達した。
2
あなたにおすすめの小説
現実世界にダンジョンが出現したのでフライングして最強に!
おとうふ
ファンタジー
2026年、突如として世界中にダンジョンが出現した。
ダンジョン内は無尽蔵にモンスターが湧き出し、それを倒すことでレベルが上がり、ステータスが上昇するという不思議空間だった。
過去の些細な事件のトラウマを克服できないまま、不登校の引きこもりになっていた中学2年生の橘冬夜は、好奇心から自宅近くに出現したダンジョンに真っ先に足を踏み入れた。
ダンジョンとは何なのか。なぜ出現したのか。その先に何があるのか。
世界が大混乱に陥る中、何もわからないままに、冬夜はこっそりとダンジョン探索にのめり込んでいく。
やがて来る厄災の日、そんな冬夜の好奇心が多くの人の命を救うことになるのだが、それはまだ誰も知らぬことだった。
至らぬところも多いと思いますが、よろしくお願いします!
人の才能が見えるようになりました。~いい才能は幸運な俺が育てる~
犬型大
ファンタジー
突如として変わった世界。
塔やゲートが現れて強いものが偉くてお金も稼げる世の中になった。
弱いことは才能がないことであるとみなされて、弱いことは役立たずであるとののしられる。
けれども違ったのだ。
この世の中、強い奴ほど才能がなかった。
これからの時代は本当に才能があるやつが強くなる。
見抜いて、育てる。
育てて、恩を売って、いい暮らしをする。
誰もが知らない才能を見抜け。
そしてこの世界を生き残れ。
なろう、カクヨムその他サイトでも掲載。
更新不定期
痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~
ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。
食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。
最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。
それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。
※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。
カクヨムで先行投稿中!
ブラック企業で心身ボロボロの社畜だった俺が少年の姿で異世界に転生!? ~鑑定スキルと無限収納を駆使して錬金術師として第二の人生を謳歌します~
楠富 つかさ
ファンタジー
ブラック企業で働いていた小坂直人は、ある日、仕事中の過労で意識を失い、気がつくと異世界の森の中で少年の姿になっていた。しかも、【錬金術】という強力なスキルを持っており、物質を分解・合成・強化できる能力を手にしていた。
そんなナオが出会ったのは、森で冒険者として活動する巨乳の美少女・エルフィーナ(エル)。彼女は魔物討伐の依頼をこなしていたが、強敵との戦闘で深手を負ってしまう。
「やばい……これ、動けない……」
怪我人のエルを目の当たりにしたナオは、錬金術で作成していたポーションを与え彼女を助ける。
「す、すごい……ナオのおかげで助かった……!」
異世界で自由気ままに錬金術を駆使するナオと、彼に惚れた美少女冒険者エルとのスローライフ&冒険ファンタジーが今、始まる!
ダンジョン作成から始まる最強クラン
山椒
ファンタジー
ダンジョンが出現して数十年が経ち、ダンジョンがあることが日常となっていた。
そんな世界で五年前に起きた大規模魔物侵攻により心に傷を受けた青年がいた。
極力誰とも関わりを持たずにいた彼の住んでいる部屋に寝ている間にダンジョンが出現し、彼はそこに落ちた。
そのダンジョンは他に確認されていない自作するダンジョンであった。
ダンジョンとモンスターにトラウマを抱えつつもダンジョン作成を始めていく。
ただそのダンジョンは特別性であった。
ダンジョンが彼を、彼の大事な人を強くするダンジョンであった。
Sランクパーティーを追放された鑑定士の俺、実は『神の眼』を持ってました〜最神神獣と最強になったので、今さら戻ってこいと言われてももう遅い〜
夏見ナイ
ファンタジー
Sランクパーティーで地味な【鑑定】スキルを使い、仲間を支えてきたカイン。しかしある日、リーダーの勇者から「お前はもういらない」と理不尽に追放されてしまう。
絶望の淵で流れ着いた辺境の街。そこで偶然発見した古代ダンジョンが、彼の運命を変える。絶体絶命の危機に陥ったその時、彼のスキルは万物を見通す【神の眼】へと覚醒。さらに、ダンジョンの奥で伝説のもふもふ神獣「フェン」と出会い、最強の相棒を得る。
一方、カインを失った元パーティーは鑑定ミスを連発し、崩壊の一途を辿っていた。「今さら戻ってこい」と懇願されても、もう遅い。
無能と蔑まれた鑑定士の、痛快な成り上がり冒険譚が今、始まる!
男:女=1:10000の世界に来た記憶が無いけど生きる俺
マオセン
ファンタジー
突然公園で目覚めた青年「優心」は身辺状況の記憶をすべて忘れていた。分かるのは自分の名前と剣道の経験、常識くらいだった。
その公園を通りすがった「七瀬 椿」に話しかけてからこの物語は幕を開ける。
彼は何も記憶が無い状態で男女比が圧倒的な世界を生き抜けることができるのか。
そして....彼の身体は大丈夫なのか!?
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる