ダンマス(異端者)

AN@RCHY

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第1037話 ちょっとした問題

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 ケットシーを3人の娘に1匹ずつ召喚してから1週間が経った。

 俺は仕事の合間に娘たちの様子を見ている。1日の大半を寝て過ごしているが、起きている時は何かを掴もうとするような仕草を見せる事がある。

 目が見えていないのにそんな事あるわけないのだが、だけど、家に帰って伸ばしている手に小指を差し出すと、キュッと握ってくれるのだ。それが何とも愛くるしい。

 猫たちは、自分たちが守らなければいけない相手だと思っているのか、寝ていて俺たちが近くにいない時は、離れずに近くにいて様子を見ている。

 そして、動物だからにおいに敏感なのか、排尿の時はあまり反応しないが、排便の時はすぐに近くにいる誰かに鳴いて知らせてくれるのだ。何とも賢い猫たちだ。ただ食欲に負けて俺を集団で起こしに来るだけでは、無かったようだ。

 そして、ケットシーも猫たちに受け入れられており、一緒に娘たちを護ってくれている。レベルは600まで上げており、そこら辺の有象無象であれば、1匹で数千単位を楽々に屠ってしまうほどの強さを持っている。

 やり過ぎかと思ったが、強くて困る事は無いので気にするのを止めた。

 この1週間で、ドワーフたちがとうとうやってしまい、足踏みミシンが完成したのだ。水車などから取り入れる動力は使わずに、足踏みにしている。水車を動力にするなら、設置できる場所が限られるからな。

 そして俺たちは、何とか電源の確保に成功した。だけど、問題もあった。

 電気でモーターを回して使う予定だったやすり、よく考えたら電源コードなんていうものはなく、手作りでコードを作るのなんて面倒にも程があった。モーターに使う銅線に関してもかなり苦労をしたけどね。

 モーターと電気の部分が完成していたので、手持ちに出来るだけのコンパクトサイズに仕上げる事に成功したが、ドリルはそれでもよかったのだが、細かい調整をするやすりの方は、重すぎて使い物にならなかったので、仕方がなくモーターの銅線を元にどうにかコードを作っている。

 蒸気機関は、ドワーフたちがミシンを作り終わってから話をする予定だったので、今の所進んでいない。

 順調に近代化が進んできている、絶対に外にはもらせない技術だな。しっかりと情報が拡散しないようにしないとな。

「シュウ様、織機なのですが、かなり評判がいいですね。シャトルに慣れは必要そうですが、おおむね生地の質も生産量もあがりました。できた生地を巻き取る所なんですが、もう少し多く生地を巻き取れないか? という話が上がってきていますね」

「ちょっとコンパクトにし過ぎたか? そのせいで巻き取れる生地の量が、少なくなってしまったかな? でも、巻き取る部分を体から離すと、巻き取るのが大変だよな。そこら辺はちょっと綾乃たちと相談してみるわ」

「今でも十分ですので、出来ればと言う事で大丈夫です。決して無理はなさらないでください」

「了解、りょうか~い」

 ディストピアの庁舎に様子を聞きに行った所、概ね好評のようでよかった。その後は、もう少ししたらミシンもできると伝えると、えらく喜ばれた。

 でも、ふと考えたのだが、衣服関係もディストピアで完結すると、この街は完全に外海から隔離されても問題なく自給自足できてしまうな。今だって、衣服関係はお金があるから買った方が楽なので、メインの仕事で稼いで買うという流れになっているだけで……

 ゴーストタウンの生産力も借りれば、中立地域の都市は問題なく養う事ができる。グレッグやミューズも農業地開拓を行っているため、5年後位には自給率が90パーセントを超えると言われているので、各都市も近い内に自給自足ができそうなくらいだ。

 ディストピアに限っては、食料自給率は100パーセントを優に超え、収穫ペースが異様に早いため実際に何パーセントあるか不明である。以前1000パーセントを超えているとか言ってたけど、人口も増えて食料以外の用途の食材も増えているので、下がっているかもしれないな。

 そんな事を考えながら、ゴーストタウンにある工房へ向けて専用魔導列車を走らせている。

 少し時間が空いたので、3人の娘につけているケットシーと視覚同調をしてみた。

 俺が意識同調したことが分かったのか、ケットシーが起き上がって娘たちの様子を見せてくれる。他と比べた事が無いのでよくわからないが、3人共起きている時は元気よく手足をバタつかせている。活動的な子供になるのだろうか?

 とにかく元気に育ってくれたら嬉しいな。

 ケットシーが近付いて、前足をミリーの娘、ミーシャのほっぺたに肉球を当てると、何かが嬉しかったのかめっちゃ喜んで、今まで以上に手足をバタつかせていた……可愛いな。

 次にカエデの娘、スミレに近付いてほっぺたに肉球を当てると、ミーシャとは違い前足を掴んで肉球をムニムニしていた。肉球触るのって気持ちいいんだよな。その年で肉球の良さを知ってしまったか……

 最後にリンドの娘、ブルムに近付くと今度は肉球を額に当てる。手足をバタつかせていたブルムの動きが止まった。そして肉球を離すとまたバタバタしだした。また肉球を当てると止まり、離すとバタバタしだした。遊んでるのか? ピタッと止まる姿とかかわいいけどさ!

 それにしてもみんな起きてたんだな。寝てる姿も可愛いけど、起きて動いている姿も可愛いな。

 そんな様子を見ていると、ミーシャの近くで寝ていた猫が起き上がって、扉の外へ出て行った。しばらくすると、ブラウニーたちを連れて戻ってきた。

 どうやらオムツ交換のために呼んだらしい。視覚同調していたケットシーが、丸まって目を閉じてしまった。さすがに自分の子どもとはいえ、自分で作業するわけじゃないのに見てるのは良くないよな。

 視覚同調を切って、自分がどこにいるか確認する。もうすぐゴーストタウンに着くようだ。

 到着してすぐに織機について相談する。

「ん~縦糸の操作のために足踏みの部分から繋がってるから、その手前の空間を使うしかないよね。でも今のままだと、スペースが狭いよね? ちょっとシャトルを通す部分を長くしようか? そうすれば足元に少し余裕が出ると思うよ?」

「確かに、それ以外にすぐ思いつく対策方法は無いかな? でもさ、巻き取る部分が手動だから、遠くなると立たないといけないよな? いや、歯車ができたから、足と連動もさせられるかもしれないけど、比率が分からないから、手巻き出来る場所を手前に作ればいいか?」

 そういって、試作を始める。伸ばすだけなら部品の耐久性だけを考えればいいから簡単に加工が済んだ。

 その時に役に立ったのが、水車式動力の丸鋸だ。ドリルは完成していたので、加工が楽になるので丸鋸ができないかと思い試作したが、思いのほか使えたのでノコギリより簡単に加工出来て助かっている。

 まぁ丸鋸自体は固定しているので、木材の方を動かす感じだけどな。あと、電動程スピードが無いので、一気に押し込むのは厳禁である。
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