ダンマス(異端者)

AN@RCHY

文字の大きさ
1,119 / 2,518

第1119話 トラップ対決

しおりを挟む
 ダンジョンバトル3日目。

 俺たちが寝ている間に得た情報の報告を受けている。

 一番初めに先行させていた魔物達が死んだ理由が判明したのだ。ほぼ即死だったので何事かと思ったら、相手のダンジョンの2階は、トラップエリアみたいな物だった。

 トラップエリアみたいな物と言うのも、ダンジョンの機能で言うと厳密にはトラップではなく、地形効果と言う事になるため、このようなあいまいな表現をしている。

 で、相手が2階に用意していたのは、火山地帯みたいな物である。でも、マグマに落ちて即死する程あほな魔物では無かったはずなのだが、何で即死したのかバザールが予想を話してくれた。

「恐らくでござるが、火山地帯の有毒ガスによって、魔物が即死したのではないかと思うでござる。スケルトンに戦闘をさせてみたでござるが、配置されている魔物は、マグマの中からと言うだけで厄介でござったが、全く強くなかったでござる」

 と、こんな感じだった。あっ、何でバザールが報告しているかと言うと、俺と綾乃が寝ている間もダンジョンバトルの様子を見て指示を出していたからである。

「魔物が強くなかったという事は、それ以外に原因があったと思うでござる。なので、それを検証するためにランクの低い魔物を召喚して、スケルトンの前に突入させてみようと思い派遣しているでござる!」

 先行させた人型と獣型の魔物を使い潰すのは得策では無いと思ったのか、新しく召喚した魔物を何匹か派遣したようだった。派遣する前に、有毒ガスへの抵抗の強さも簡単に調べているようなので、参考までにまとめられたレポートを見ている。

「今まであまり気にしてなかったけど、いわゆる生物型の魔物って、毒に弱いんだな。魔物と言っても、普通の生物と大して違わないって事か」

「確かにこれは意外ね。普通の毒って表現していいのか分からないけど、魔物が出す毒には結構高い耐性があるのに、自然界に存在する毒には大した耐性が無いって、どういうことなのかしら?」

「ん~そもそも、この世界に地球でもあるような有毒ガスの発生する場所って、ほとんどないんじゃないか? まぁ地球でも、そんなに多かったわけじゃないだろうけどね」

 3人で悩んでみるが、絶対的に知識の量が乏しいので判断できなかった。でも、召喚した魔物のおかげで、相手のダンジョンの2階について情報を入手する事ができた。

 予想通り有毒なガス……火山ガスの所為で魔物が死んだようだ。そして理由は分からないが、いくつかの部屋にその仕掛けがあったようだ。それに何故だか分からないが、廊下までは火山ガスが出てこないようだったのだ。

 そういえば、バザールのアンデッドに対する指揮能力は、無線越しでも有効なのでわざわざ前線に出る必要がなくなった。

「それにしても、たまたま作ったダンジョンの1階2階の構想が似てるって面白いね。1階は、とにかく時間をかけさせる迷路のような物で、2階がトラップエリア。その内容に差はあるけど、考える事が近いのってダンジョンマスターの特性なのかな?」

 綾乃が笑いながらそんな事を言っていた。

「それはたまたまでござるよ。1階にトラップエリアを作らないのは、ゾンビアタックでもされれば罠の効果が無くなるでござるから、きっと2階以降に仕掛けただけでござる。死んだ魔物を補充するのも大変でござるからな」

「まぁどっちでもいいんじゃね? 2階は1階みたいに広くないんだし、そのまま進んでも問題ないだろ?」

 有毒ガスも火山エリアによる高温もアンデッドのスケルトンには何障害にもならなかったので、サクサク進んでいる。そうして3階に到着……

「何も見えん!」
「何も見えないね」
「何も見えないでござる」

 3階に入ると真っ暗だったのだ。暗視カメラでは無いので、光が無いとカメラは何も映し出してくれなかった。何も見えなかったら、神たちがブーイングするんじゃないか? そんな事を考えていると、

『私たちが見ているのは、特別なカメラだから3階も明るく見えるわよ!』

 と、なんかドヤ顔で言われた気がした。

 まぁスケルトンには魔法の使える奴もいるので、バザールの指示に従って進んでいくことになった。そして俺は、いつかの黒い悪魔の階層を思い出したので、防衛の方に力を入れる事にした。

 力を入れると言っても、自分のダンジョンをダンジョンの機能で何故か見る事ができないので、新しく用意したスケルトンにカメラを持たせて出動させる事にしたのだ。1階にいる間は使う必要は無いと思ったので、まだまだ時間がかかると思っていた。

「って、壁型ゴーレムの存在がバレたか、しかも最短距離で次の階層に行くコースまで発見された」

 予想外の事が起きたのだ。昨日の様子からもうちょい時間がかかると思ったのにな。まぁ、スケルトンの出番が早めに来たと思えばいいか。相手のSランクと思われる魔物が何か気になるな。

「ところでシュウ、何で2階への階段が1階の入り口の真裏にあるの?」

「え? 決まってるじゃん。こんなに近くにあるのに探すのに時間がかかったらイライラするべ? その様子を見れないのは残念だけど、想像するのは自由じゃん? だからからかうためにやったんだよ」

 綾乃にはこの理由が分かってもらえないようだ。まぁ、分かってほしいわけでもないので、気にする必要も無いのだが。

「さて、俺たちの作ったトラップエリアは、相手の魔物をどれだけ減らせるかな?」

「そんな事言ってるけど、ゾンビアタックができる距離なのに何呑気な事言ってるのよ」

「だって、本命は9階10階だから、ここら辺の階は楽しまないと!」

 1~8階は、試験的な意味で作ったダンジョンなので、情報収集ができればいいと思っている。冒険者を呼び込むダンジョンとしては、凶悪な物が多いのでこういった事が無ければ、作る事すら考えなかった代物なのだ。

 1つ目はダンジョンの機能では作れない程凶悪な落とし穴。部屋の7割が落とし穴になっている、ゴーレムによる落とし穴部屋。落とし穴の先には、相手と同じマグマを準備していた。

 マグマにした理由は、硫酸とかだと溶けないやつもいたり、ガスが溜まったりしそうで何となく嫌だったので、特殊な能力でもない限り死ぬマグマを選んでいる。

 まぁ、相手はそのガスすら利用したトラップを仕掛けていたけどな。うちって、ゴーレムやスケルトン以外で、特殊な地形に対応できる魔物ってそんなに多くないんだよね。だからそれ自体トラップに使うって発想が産まれなかったんだと思う。

 そして2つ目は、ダンジョンの機能を使った通れる人数の制限のある、橋の先で1匹ずつのバトルをしなければいけない、デスマッチ式のバトルエリアだ。場外は、古典的な針地獄なので強い魔物であれば即死はしない。でも落ちたら登れないくらいには深い穴である。

 しかもきちんと、橋の入口には日本語で【1匹ずつ進み、部屋の中央で戦え!】と言った内容の立て看板がある。

 他にもいくつかトラップを用意しているので楽しみだ。
しおりを挟む
感想 316

あなたにおすすめの小説

現実世界にダンジョンが出現したのでフライングして最強に!

おとうふ
ファンタジー
2026年、突如として世界中にダンジョンが出現した。 ダンジョン内は無尽蔵にモンスターが湧き出し、それを倒すことでレベルが上がり、ステータスが上昇するという不思議空間だった。 過去の些細な事件のトラウマを克服できないまま、不登校の引きこもりになっていた中学2年生の橘冬夜は、好奇心から自宅近くに出現したダンジョンに真っ先に足を踏み入れた。 ダンジョンとは何なのか。なぜ出現したのか。その先に何があるのか。 世界が大混乱に陥る中、何もわからないままに、冬夜はこっそりとダンジョン探索にのめり込んでいく。 やがて来る厄災の日、そんな冬夜の好奇心が多くの人の命を救うことになるのだが、それはまだ誰も知らぬことだった。 至らぬところも多いと思いますが、よろしくお願いします!

人の才能が見えるようになりました。~いい才能は幸運な俺が育てる~

犬型大
ファンタジー
突如として変わった世界。 塔やゲートが現れて強いものが偉くてお金も稼げる世の中になった。 弱いことは才能がないことであるとみなされて、弱いことは役立たずであるとののしられる。 けれども違ったのだ。 この世の中、強い奴ほど才能がなかった。 これからの時代は本当に才能があるやつが強くなる。 見抜いて、育てる。 育てて、恩を売って、いい暮らしをする。 誰もが知らない才能を見抜け。 そしてこの世界を生き残れ。 なろう、カクヨムその他サイトでも掲載。 更新不定期

ハズレスキル【地図化(マッピング)】で追放された俺、実は未踏破ダンジョンの隠し通路やギミックを全て見通せる世界で唯一の『攻略神』でした

夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティの荷物持ちだったユキナガは、戦闘に役立たない【地図化】スキルを理由に「無能」と罵られ、追放された。 しかし、孤独の中で己のスキルと向き合った彼は、その真価に覚醒する。彼の脳内に広がるのは、モンスター、トラップ、隠し通路に至るまで、ダンジョンの全てを完璧に映し出す三次元マップだった。これは最強の『攻略神』の眼だ――。 彼はその圧倒的な情報力を武器に、同じく不遇なスキルを持つ仲間たちの才能を見出し、不可能と言われたダンジョンを次々と制覇していく。知略と分析で全てを先読みし、完璧な指示で仲間を導く『指揮官』の成り上がり譚。 一方、彼を失った勇者パーティは迷走を始める……。爽快なダンジョン攻略とカタルシス溢れる英雄譚が、今、始まる!

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

【もうダメだ!】貧乏大学生、絶望から一気に成り上がる〜もし、無属性でFランクの俺が異文明の魔道兵器を担いでダンジョンに潜ったら〜

KEINO
ファンタジー
貧乏大学生の探索者はダンジョンに潜り、全てを覆す。 ~あらすじ~ 世界に突如出現した異次元空間「ダンジョン」。 そこから産出される魔石は人類に無限のエネルギーをもたらし、アーティファクトは魔法の力を授けた。 しかし、その恩恵は平等ではなかった。 富と力はダンジョン利権を牛耳る企業と、「属性適性」という特別な才能を持つ「選ばれし者」たちに独占され、世界は新たな格差社会へと変貌していた。 そんな歪んだ現代日本で、及川翔は「無属性」という最底辺の烙印を押された青年だった。 彼には魔法の才能も、富も、未来への希望もない。 あるのは、両親を失った二年前のダンジョン氾濫で、原因不明の昏睡状態に陥った最愛の妹、美咲を救うという、ただ一つの願いだけだった。 妹を治すため、彼は最先端の「魔力生体学」を学ぶが、学費と治療費という冷酷な現実が彼の行く手を阻む。 希望と絶望の狭間で、翔に残された道はただ一つ――危険なダンジョンに潜り、泥臭く魔石を稼ぐこと。 英雄とも呼べるようなSランク探索者が脚光を浴びる華やかな世界とは裏腹に、翔は今日も一人、薄暗いダンジョンの奥へと足を踏み入れる。 これは、神に選ばれなかった「持たざる者」が、絶望的な現実にもがきながら、たった一つの希望を掴むために抗い、やがて世界の真実と向き合う、戦いの物語。 彼の「無属性」の力が、世界を揺るがす光となることを、彼はまだ知らない。 テンプレのダンジョン物を書いてみたくなり、手を出しました。 SF味が増してくるのは結構先の予定です。 スローペースですが、しっかりと世界観を楽しんでもらえる作品になってると思います。 良かったら読んでください!

どうしてこうなった道中記-サブスキルで面倒ごとだらけ-

すずめさん
ファンタジー
ある日、友達に誘われ始めたMMORPG…[アルバスクロニクルオンライン] 何の変哲も無くゲームを始めたつもりがしかし!?… たった一つのスキルのせい?…で起きる波乱万丈な冒険物語。 ※本作品はPCで編集・改行がされて居る為、スマホ・タブレットにおける 縦読みでの読書は読み難い点が出て来ると思います…それでも良いと言う方は…… ゆっくりしていってね!!! ※ 現在書き直し慣行中!!!

ダンジョン作成から始まる最強クラン

山椒
ファンタジー
ダンジョンが出現して数十年が経ち、ダンジョンがあることが日常となっていた。 そんな世界で五年前に起きた大規模魔物侵攻により心に傷を受けた青年がいた。 極力誰とも関わりを持たずにいた彼の住んでいる部屋に寝ている間にダンジョンが出現し、彼はそこに落ちた。 そのダンジョンは他に確認されていない自作するダンジョンであった。 ダンジョンとモンスターにトラウマを抱えつつもダンジョン作成を始めていく。 ただそのダンジョンは特別性であった。 ダンジョンが彼を、彼の大事な人を強くするダンジョンであった。

ダンジョン学園サブカル同好会の日常

くずもち
ファンタジー
ダンジョンを攻略する人材を育成する学校、竜桜学園に入学した主人公綿貫 鐘太郎(ワタヌキ カネタロウ)はサブカル同好会に所属し、気の合う仲間達とまったりと平和な日常を過ごしていた。しかしそんな心地のいい時間は長くは続かなかった。 まったく貢献度のない同好会が部室を持っているのはどうなのか?と生徒会から同好会解散を打診されたのだ。 しかしそれは困るワタヌキ達は部室と同好会を守るため、ある条件を持ちかけた。 一週間以内に学園のため、学園に貢献できる成果を提出することになったワタヌキは秘策として同好会のメンバーに彼の秘密を打ちあけることにした。

処理中です...