ダンマス(異端者)

AN@RCHY

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第1155話 探検!

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「今日は、湖でいっぱい泳ぐの!」

 沈没した豪華客船の名シーンみたいに、船首に立っているシェリルがビシッと指をさしながら宣言している。その後ろには、シエルがいつもより大きめのサイズで控えていた。

 落ちた時のための保険と言う所だろう。

 色々思う所はあるが、何故湖の中を泳ぐことになったのか……それは、昨日の夜シエルが、湖の中に街があったと年少組に話した所、みんなが興味を持ち行ってみたいと騒ぎ出したため、船をこの前発見した街のある所に移動させたのだ。

 全員準備断端である。

 みんなの身につけている物は、全身タイツのようにぴったりと体の隙間を埋めてくれる特殊なウェットスーツみたいな物だ。

 みたいな物と言うのは、伸縮性抜群で外から中へ水がしみこまないのに、中から外へは水分が抜け出るという、本当に謎の素材を使って昨日の内に準備した物だ。なので、長時間着ても汗で蒸れる事も無く、塩水に浸かる部分は最小限ですむのだ。

 その素材となったのは、一月くらい前にゴーストタウンで見つかったゴーレムのドロップ品だ。

 ゴーレムから素材と言われた瞬間は、石とか金属をイメージしたが、よくよく考えると、無機質な物であればゴーレムになるのだという事を忘れていた。

 そのゴーレムは、スライムゴーレムと言うらしい……はぁ? スライムなのかゴーレムなのかはっきりしろよ! って思ったのだが、スライムのようなゴーレムとかそういう訳ではなく、ニコみたいなスライムのような素材でできているゴーレムだったようだ。

 何でそんな魔物の素材を年少組が知っていたのかを聞くと、秘密だと言われてしまった。で、その素材の特徴をつかんだのは、ゴーストタウンの錬金術工房だったようだ。

 初めは伸ばして中に水を入れてみたりしていたらしい。そうすると、表と裏で水が漏れたり漏れなかったりしたのだ。こねてから伸ばしても一定方向にしか水が浸透しないという特徴があった。

 これに目をつけたのが、冒険者ギルドだ。魔法で水分を出せないパーティーもおり、水筒のような物を持ってダンジョンに入る冒険者も少なくない。

 その際使われるのが革袋であり、その中に水を入れると美味しくないんだとの事。それにきちんと手入れをしないとすぐにカビたりしてしまうらしい。

 その革袋の内側に謎素材を水が漏れないように張り付けると……あら不思議! 水が臭くなったりしなくなったのだとか。この素材のいい所は、洗うのが簡単という事だ。水を入れてシェイクするだけで大抵の汚れが落ちるのだとか。カビにくいのも特徴らしい。

 ただし、液体なら何でも入れられるわけでは無かったそうだ。どこかのドワーフが酒を入れた所、謎素材は溶けてしまったらしい。アルコールとは相性が良くないそうだ。

 まぁ、こんな素材を教えてくれたので、クリエイトゴーレムを使ってウェットスーツをつくったのだ。色は黒く透けにくいため見た目もまんまウェットスーツに見えるな。

 年長組では付けなかった足ヒレ、フィンをつけて、酸素ボンベも背負って海の中に飛び込んだ。

 この酸素ボンベは、夜暇な時に改造しておいた特注品だ。前回はボンベ内の酸素の関係で一度に長く潜れなかったのだ。1回ボンベを交換に船に戻っている。

 本来であれば、連続で潜るのは体によくないのだが、この世界には回復魔法があるため何の問題も無かった。そのうえ、ステータスにより体は強化されているため、長時間の水中遊泳も問題ないのだ。

 それを改めて理解したので、長時間潜れるボンベができないか思案した時に、魔核を使って空気を作り出せないか頑張ったのだが、それは何故かできなかった。でも、酸素濃度なら調整できないか? と思いついたのだ。それ自体は成功して、ボンベと呼吸で空気が循環するようにできたのだ。

 だけど、かなり呼吸がしづらくなったのだ。普通のボンベは、空気が圧縮されて入っていて、呼吸によって弁が開いたり閉じたりして、ある程度呼吸がしやすくなっているのだが、空気が入る管と出る管を用意しただけでは呼吸が大変だったのだ。

 なので、ある一定の空気を圧縮して入れたのだが、実験した時に、吸う時が良くても息を吐きだせずに死ぬかと思った。

 吐き出す空気が溜まる部分が1気圧いかにして吐きやすくしていて、吸う空気の部分が酸素ボンベの様に圧縮空気が入っているよな二重構造にした。

 そして、空気の操作は魔核で何の問題も無いので、吐いた空気のたまっているエリアから圧縮空気の入っているエリアには、魔核を使って空気を送り込む。そうすると、永久的に呼吸のできるボンベが完成する。

 吐き出した空気が泡となって水面にほとんど浮かばなくなり、快適な水中遊泳を楽しめるようになっている。

 というか、フィンをつけた年少組の泳ぐ速度がヤバい。身体能力が高く疲れ知らずではしゃいでいるため、追いつくのに一苦労だった。体の大きさも影響しているのかな?

 護衛はシエルとシールドに任せているので問題ないだろうが、心配である。一応みんなには、三つ又の槍を持たせているが……近寄ってくる魔物も魚はいないかな?

 年長組は、水中都市の上を泳いで景色を楽しんでいたが、年少組の水中都市の楽しみ方は一味違った。

 みんなで追いかけっこをしながら、水中都市の建物の中や路地みたいなところを探索し始めたのだ。

 そんな事をしていたため、水中都市を見て回るのにかなりの時間がかかった。そして、最後に探検する場所に選ばれたのは、領主館……館と言うよりは、もう城だな。

 ヘッドライトをつけて城の中に入ってみると、無駄に手の込んだ作りになっていた。バザールと綾乃が力を入れて作った事が窺える物だった。

 結構朽ち果てているのだが、水中にある絵が不自然に劣化していなかったり、今にも動き出しそうな石像や鎧等も置いてあった。

 極めつけは、玉座がありそうな謁見の間に、巨大なアコヤガイが置かれていたのだ。

 あっ、初めに言っておくけど、アコヤガイだと思ったのは勘だ。あいつらの事だから、たどり着いた報奨だ! と言って、真珠をと考えて出た結論だ。

 過程の部分に間違いはあるかもしれないが、今回は大正解だった。

 殺すのはかわいそうだったので、殻が壊れないように慎重にこじ開けて、中にある真珠をとるために腕を中に突っ込みほじくり出す。

 出てきたのは、バスケットボール程ある大きくまん丸な真珠だった。こんなに大きいのも普通はありえんのに、まん丸ってどうなんだ? 本当にありえなくね?

 でも、年少組は大満足したようで、みんなで交代交代で持ち船へと持ち帰った。帰ったら家の目立つところに飾ろうね! とはしゃいでいた。

 見栄えはいいかもしれないけど、猫や従魔たちにいたずらされないように、台座を作ってガラスケースの中に入れるか?
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