ダンマス(異端者)

AN@RCHY

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第1178話 フェピー襲来

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 各街の衛生管理のための水道の魔導具の設置代金を、俺が預かっている(本質的にはシュウの物だが)各街から支払われた税金をあてる計画は、計画を実行に移す前にバレた。

 バレたのは、俺がいつもと違う事をしてグリエル達が訝しく思ったため、探られてすぐに露見してしまったのだ。

 何をしたかと言えば、無駄に庁舎に行って領主の仕事をしていたためだ。普段熱心では無いのに、急に熱心になれば誰でも怪しむってものだろう。そんな事を気付かずに俺は、領主の仕事に取り組んでいたためすぐにばれてしまったのだ。

 まぁ、バレた所でディストピアからというか、今回の衛生管理のための水道の魔導具の設置は、領主から領主代行への命令なので、俺のサインが無いと最終的な決済ができないのだ。なので、バレても強引に押し通して、今まで預かっていた税金を全部使っている。

 ただ、フレデリクとリーファスに関しては、俺が戻ってきた際に荒らしていた貴族一派が着服したお金を国王がむしり取り、さらに謝罪金もとっていたので、それを預かっていたのだ。被害を受けていた住人にも還元しているが、かなりの金額が手元に残っていたのだ。

 そのおかげと言っていいのか、その2つの都市とヴローツマインの3都市は、お金を払う事なく設置された。

 ただ、ジャルジャンの領主フェピーが、水道の魔導具の存在を聞きつけてゴーストタウンに来たため、しょうがなく設置理由を説明した所「ジャルジャンとリブロフにもお願いしたい!」と、土下座をしてきたのだ。

 しかもゴーストタウンの住人がいる前で……

 普通に相談してくれて、お金さえ出すのなら普通に設置してやるのにそんな事をされると、正直対応に困るからやめてほしい!

「わかったから、こんな街中で土下座すんな。せめて人のいない所でやれ。設置する水道の数が分かればこっちで準備するから、設置する場所と必要な個数の見積もりを出してくれ。そしたら、これはゼニスの案件だから、商会から連絡するから」

 そういうと、今度は飛び跳ねて俺に抱き着いてきた。おっさんに抱き着かれても嬉しくないわ!

 ゾクリッ!

 背筋が冷たくなったので、後ろを振り返ると久々に護衛についてきていたシュリとアリスがいた。微笑んでるけど全く笑ってない、最強に怖い笑顔だ。

 よくわからないけど、すいませんでした! と心の中で謝り、視線で謝っている事を訴えておいた。

「というかさ、水道の魔導具もその設置も結構な金になるけど、大丈夫なのか?」

「ん? 魔導具があれば、こちらで設置するから設置費用は関係なくないか?」

「あ~そこは説明してなかったな。フェピーは魔法が使えないから分からないと思うけど……そうだな、Sランクの魔法使いとBランクの魔法使いが、同じファイアアローを使った場合どうなるか知ってるか?」

「……? ぶつかって相殺されるのではないか?」

「実は、魔法って魔力の差で威力が変わるんだよ。だからこの場合は、Sランクの方のファイアアローが、Bランクのファイアアローを食い破ってしまうんだよ。それと同じで、土魔法で埋めたとしても力量の上の人間がいれば、掘り起こされちゃうんだよね」

「なるほど、でも土魔法使いは珍しいからそんな事にはならないのでは?」

「そこまで出来るのであれば、食っていけるからしないと思うけど、力量の低い土魔法使いやただの石を固めただけなら、簡単に掘り起こされるぞ? 盗難の事も考えておかないと大変だろ?」

「確かに……ちなみに水道の魔導具の方は簡単に壊れないので?」

「そんなもんを街中に設置すると思うか? それに最終加工しているのは、俺たちだぜ。Aランクの冒険者でも連れてこなければ壊せないよ。それにそのレベルの冒険者なら、犯罪をしてまで盗まないと思うしな」

「なるほど。でもいずれは劣化してしまうのですよね?」

「それはしょうがないだろ? 劣化しないようにも作れるけど、そうすると手間もかかるし、かかる金額も跳ね上がるぞ。それなら、今は普通に水道の魔導具を設置して、その魔導具が劣化するまでに新しい上水のシステムを考えればいいんじゃないか?」

「確かにその通りですな。衛生管理が大切だと分かれば、水の大切さも理解できて、魔導具を含めた技術が進歩しますからね。私たちもしっかりかんがえなければいけませんね!」

 フェピーは、近くにいた文官にそう言って、今から案を考えていくように話していた。

「それよりもさ、水道の魔導具はそこまで高くないけど、街中に設置する事を考えるとかなりの額になるぞ?大丈夫なのか?」

「問題ない。ゴーストタウンやディストピアからくる冒険者に、商人も街を利用するから、ここ数年は税収もあがっていて使えるお金も十分にあるんだよ。できれば、街の職人に委託して街の中でお金を回したいけど、今回はそんな事言ってられないです」

「危機管理ができるって素晴らしいな。それを分かっていない領主が多いから、そこに住んでいる住人は大変だろうな。後、上水に関してだけど、参考になりそうな物がバレルって街にあるから、機会があったら行ってみるといい」

「シュウ殿が言うなら間違いないと思うが……バレルって街は何処にあるので?」

「帝国の方だな。ダンジョンのあるメギドって街を知ってるか? そこの近くに新しく俺が作った街だ。実験的な意味のある街だから、参考になる物があると思うぞ。それに前に買ったあの馬車があれば、1ヶ月もかからずに戻ってこれるんじゃないか?」

「ふむ……魔導列車とやらは、使わせてもらえないですか?」

「あれは基本的に物資や街に派遣している人やその家族のための物だからな……と言っても、強引に押し通れるようなレベルでも造りでもないから、お金さえ出すならいいぞ」

「本当ですか!? ちなみに魔導列車を使えばどの位の時間で往復できます?」

「えっと、夕方出発して魔導列車で1泊。街に付いたら移動で半日ってところか?」

「実質1日かからずにその街にたどり着けるという事か……でしたら、往復に1ヶ月なので、その過程でかかる金額の倍出しますので、是非利用させてください!」

 そんなこんなで、いろんな話が進んでいった。

 1ヶ月かかる所を2日で往復できるんだから、倍出しても安いのかな? 1ヶ月は政務から離れないといけないし、護衛も移動も大変だもんな。利用料金については、ゼニスに一任しよう。そういったお金関係は、あいつに任せるに限る! 頼んだぞゼニス!
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