ダンマス(異端者)

AN@RCHY

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第1220話 事後処理

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 誰が引き起こしたか分からないが、意味不明な奴からの襲撃を退けた我が軍は、今回あった騒ぎを一応周囲に話しながら戦利品の回収を行っている。とはいえ、領主館に価値のある物はほとんど残されておらず、商会も今までの半量位しかなかった。

「どういうことだと思う?」

「これまでの街の様子をどうにか知って、領主は金目の物を持ち出して逃げたのでしょう。商会に関しては、可能な限り商会の従業員の家に運んだのではないでしょうか? 全部運ばなかったのは、全く無いと不審がられる……と言った所でしょうか?」

「まぁ考えられるのはその辺だよな。従業員の家にあったら、どれが個人の物か商会の物か分からんからな。あの戦争に加担していた商会は全てどうにかしたかったけど・・・無理かな?」

「ご主人様、横から失礼します。確認ですが、商会から物やお金が無くなればいいのですよね? 別に、金品の回収がしたいからという事では無いですよね?」

 ピーチが俺とレイリーの会話に入って来た。

 確かに俺やレイリーは、金が欲しいから盗んでいるわけでは無い。戦争に加担したので、報復に近い形で罰をあたえている感覚に近い。兵士や冒険者はお金が欲しい奴らもいるだろうが、結局頭割りになるのでそこまで行動的ではないだろう。

 今までに十分と言えるだけ回収できているので、ブーブー言う人間はいないはずだ。なので、ピーチに頷いて答えた。

「でしたら、商会の幹部を全員捕えて、聞き出しましょう」

「それだと、知らぬ存ぜぬを貫くだけだろ? 拷問でもするのか?」

 ピーチの笑みが深くなった。あぁ、これは久しぶりに見るブラックピーチか?

「ですので、街の中心で人を集めて本人にそう言わせましょう。その上で、戦争に加担した罪で奴隷落ちという事にしましょう。あくまでも表向きは、罪で裁かれる商会の幹部という形にしましょう。でも幹部には嘘を付いてので……と思わせるような話し方をすればいいのです」

「レイリー、それでも知らぬ存ぜぬを貫いたとして、連れて行っても問題ないのか?」

「表向きの罪で十分奴隷落ちにしても問題ありませんね。もっと言うなら、こちらは勝者です。今まで甘い対応をしてきましたが気が変わったと言って、この街の全員を奴隷にしても問題はありません。

 まぁ聖国がどう思うのかは知りませんが、獣人というだけで奴隷にしていた奴らなので、それくらいした方がいいかもしれませんね」

 おっと、レイリーが黒い発言をし始めてしまった。

 とりあえず、問題は無いのか?

「じゃぁ、荷物の少なかった商会の幹部を全員捕えよう。そこで一旦この話をしようか」

 そう言うと、レイリーが副官に指示をして、その副官が部下に指示を出していた。部下は、いくつかのグループになって散っていった。

 30分もしない内に紹介の幹部が俺の前に連れてこられた。そこでレイリーが、先程決めた通りに質問を始めた。

「あなたたちの商会は、落ち目だったのですか?」

「バカを言うな! この街でもトップの商会だ! 失礼な奴め」

「お前がふざけた事を言うな! 私の商会がトップだ!」

 こいつらはアホなのだろうか? 戦争の勝者が前にいるのに言い争うとか……レイリーは資料を見ながら、質問を続ける。

「では、何故こんなにお金の物が少ないのですか?」

「お前たちが戦争をしたからだろうが! そのせいで商品が届かないわ、軍が安値で買い占めて行くわで大変なんだよ!」

「戦争を始めたのはそちらですので、文句を言うのであれば領主に言ってください。ですが……目標金額に達しなかったので、あなたたちには奴隷になっていただきましょう。戦争に加担したあなたたちは、犯罪奴隷として……聖国を憎んでいる国にでも高く売り払いましょうか」

 そう言うと全員が青ざめるが、今までの街の様子を考えると、どうせブラフだろうという希望的観測で強気に出ていた。

 レイリーは話を切り上げ、中央広場に連れて行くように指示を出していた。何やら騒ぎ出した商会の幹部たちは、問答無用で兵士に連れていかれる。

 中央広場には、多くの住人が集まっていた。

「聖国がミューズに向かって侵攻してきました。口上も無く、侵略戦争を仕掛けてきた。返り討ちにした私たちは、勝者の権利で略奪をしています。他の街の商会では十分な金品を回収できましたが、この街ではそれができませんでしたので、今回の戦争に加担していた商会の幹部を奴隷にさせていたただきます」

 住人からは「ふざけるな!」とか罵詈雑言が飛んでくるが、

「では、文句を言っているあなたたちを奴隷にしましょうか? かつてあなたたちは、獣人というだけで奴隷にしていましたよね? 戦争で勝った私たちには、あなたたちを全員奴隷に落とす事だってできるのですよ? 人数が多いので面倒なだけでやっていないだけですが、反抗するというのであれば……」

 レイリーはそこで言葉を止め、副官に視線をむけた。そうすると副官が手をあげ振り下ろした。

 そうすると、広場の隅で待機していた兵士たちが自分の武器を地面に叩きつけた。

 それを聞いた広場にいた人たちは、ビクリッと震え黙った。

「分かっていただけたようで、何よりです。最後に1つ皆様に伝言があります。ここにおられる商会の幹部たちは、商会にあった物以外に自分の物はないとの事でした。ですので、私たちが来る前に何か預けられていたとしても、それは全てその人の物という事だそうです。

 問題にならない様に、近隣の人たちと分ける事をお勧めします。では、私たちはこの辺で出て行きます。残った人たちで頑張ってください」

 そう言って、商会の幹部を連れて移動を始めようとすると、誰そこの家に商会の金がある! それを持って行っていいから、連れて行かないでくれ! と騒ぎ出したので、

「何を言っているのですか? その人の家にあるのであれば、あなたたちの物では無いですよね? 広場に来る前に聞きましたよね? 商会にあった物以外は無いって言いましたよね? 何を言ってもあなたたちは奴隷になるのは変わりませんよ。あ~、でもあまりにうるさければ、首をはねるかもしれませんね」

 レイリーは、追い打ちをかけるように怖い事を言った。そして商会の幹部は、自分たちが選択肢を間違えた事に気付いたようだ。

「まぁ、あなたたちがどうやって他の街の情報を仕入れたか知りませんが、私たちは人に手を出していません。だからと言って、この街でもそうであるとは限らないのですよ? だから聞きましたよね? 嘘をついた事が分かっていたので、今回の様な対応をとっただけです」

 私たちとしては、奴隷など面倒なだけでいらなかったのですが、嘘を付いた事と運が無かったと思ってください。と言って締めくくっていた。

 さて問題は、逃げた領主なんだよな。隣街にいるとはいえ、そこには今回の戦争に参加していない兵士たちもいる上に、神殿騎士団も常駐しているのだ。それも見込んでこの街の領主は逃げ込んだのだと思うけどな。

 さすがに4000人で兵士も神殿騎士団もいる、大きな都市を攻めるのは無謀だよな。さっき待っている軍に連絡を入れたけど、準備してここまで来るのに、1週間はかかるよな……馬車の大半はこっちの移動で使ってるからな。

 商会の幹部共は、檻に入れておけばいいから問題ないとして、この人数でしばらく時間稼ぎしないといけないか? 打って出てこられた時とか色々作戦を考えておかないとな。
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