ダンマス(異端者)

AN@RCHY

文字の大きさ
1,345 / 2,518

第1345話 交戦開始

しおりを挟む
 暫くしてグリエルから連絡が入った。まだ帝国軍には動きは見えない。

『シュウ様。今よろしいですか?』

「帝国軍はまだ動いてないから平気だよ~」

『では手短に、皇帝へ連絡しました。端的に言えば、皇帝はこの事態を想定していなかったとの事です。メギドの近くで戦争が起きた事は、前に確認した通り知っていましたが、軍がこれほどの規模で動いている事は知らなかったようです』

 ふ~ん。でもさ30000人の軍を相手にするなら、最低でも同数、安全を期すなら倍はいてもおかしくないかと思うけど、ただ知らなかっただけか?

『皇帝の所へは、東面方域の領主たち貴族が対応するので、問題ないと連絡が入っていたそうです。中央軍やインペリアルガード等の戦力は、必要ないとの連絡があったみたいですね』

 今回の事は、皇帝の認知していない兵力の移動のようだ。今回の件はどう決着をつけるつもりなのだろうか?

『もし私たちの想定で事が動いている場合は、帝国の領土の10~15パーセントがシュウ様の領土になる可能性が高いようです。もしそうなれば、皇帝もさすがに困るという事で、穏便に解決してほしい……との事でした』

「穏便にって言うけど、どうすりゃいいんだ? 手心を加えてこっちに被害が出るのは面白くないぞ?」

 兵士は、上官の指示に従い戦うだけで、状況を理解できていない可能性が高いので、見逃してもらえないか? との話だったとか。

 んなバカな。状況を理解していない99パーセント位の兵士を見逃せって、どれだけ無茶な事を言っているか分かってるのか?

『おそらくですが、シュウ様の力をご存じですから、こんなバカな事を言っておられるのかと思います。ですが、向こうの要求に従う必要もないです。思うままにしても問題ないかと思います』

 とりあえず、要求はあるがそれを考慮しても従う必要はない、そりゃそうだ。出来るからやれって言うのは違うよな。もし見逃した所で、帝国から何か報酬のような物が出るわけでもない。お願いされているのにそれはどうなんだ?

 話は終わったのだが、帝国軍に動きが見られないので、グリエルを話を続けた。

 どうやらいままでのは表向きの内容だったようだ。何故それを俺に話した! と思ったのだが、対外的にも内外的にも、自分たちが最大限利益があるように交渉する物だと、でもさ、それってただの押し付けじゃね?

 って思ったのだが、グリエルは俺から一任されているが、それは俺の街に対して絶対的な権限を持っているだけで、対外的には俺の代理なだけで強い権限はないのだ。だから、今回は一方的な皇帝の要求という事だ。

 皇帝が絶対的な権限を持っているとはいえ、1人ですべてを決められるわけでは無い。大統領制に近い力を持ってはいるが、今回のような事案だと大臣を交えて話をする必要があるため、最大限の要求をしたようだ。実力主義の帝国でも、権力の限界はあるようだ。

 皇帝とはそもそも国で一番強いだけなのだ。皇帝が変わるたびに、法律が変わっているようであれば、国として成り立たなかったため、強い権限は持っているが縛りはあるようだ。

 そう言う意味では、自分の領地を持っている貴族の方が、好き勝手しているのが帝国の現状らしい。とはいえ、皇帝の命令を無視するのであれば制裁が加えられるので、貴族も気をつけているのだとか。

 皇帝は領地を持っていないのか? と思ったが、帝都は領地という扱いではないらしい。貴族みたいに好き勝手は出来ない。なんか、帝国の印象が変わったな。もっとゴリゴリの脳筋かと思っていたら違うんだな。

 それで大臣がいなくなった後に、皇帝はグリエルと一対一で本音を話したそうだ。

 一般の兵の被害は出来る限り抑えてほしい、と懇願されたそうだ。指揮官クラスは、どうなってもいいとの事だ。この戦いの火蓋が落されたとすれば、生き残っても処刑は免れない。むしろ生きて帰れば、反逆罪に問われ家族も一緒に処刑になってしまうのだとか。

 だから、こちらで処分してもらった方が、後腐れなくて助かるらしい。家族もどうしようもない人間であれば、一族全員処刑した方がいいけど、そうでもない人だっているよな?

 大前提として、俺たちが戦いに勝利する事なのだが、皇帝は俺が負けるとは考えていないようだ。まぁこの程度の軍にやられるような俺たちではない。レベルを考えれば、殺すだけなら俺1人でも可能だ。ただ人が多いので、どれだけの数が逃げるかって所だな。

「グリエル、皇帝にもう1度連絡をとって、確実に殺してほしい貴族と生きて返して欲しい貴族の名前を聞いておいてくれ」

 グリエルは含むような声で「なるほど……」と言っていたので、俺の意図する所を理解してくれたようだ。

 俺は、帝国にとって有益となる跡取りや家族がいる貴族と、家族全員が害悪となる貴族を振り分けてもらう予定だ。

「あっ! グリエル! 帝国軍に動きがあるみたいだ! 早めに連絡を入れておいてくれ。できる限り貴族は捕えて、一般兵は追い返す。後、生かしておく貴族を連れて行かせるための人材を、寄越すように言っておいてくれ」

 そう言ってグリエルとの連絡を終わりにする。

 さて、動きは見られたが、どうするつもりだ? まぁ、強欲な貴族が兵を出しているわけで、このまま帰るなんて俺は思っていない。

 期待を裏切らず、攻城兵器を前に押し出してきた。

 帰るように何度も言うが、こちらに返答する事も無くカタパルトから岩が飛んできた。

「シエル! 防げるか?」

 手を上げて問題ないとジェスチャーをしてきた。守りはシエルに任せよう。

 俺はシエルが守っている間に、風魔法を準備する。

 準備している風魔法は、拡声魔法だ。声を大きくする、ただそれだけの魔法。

『帝国軍の屑共! 攻めてくるなら、死を覚悟してかかってこい! 死にたくない奴は、さっさと去れ! そしてこれは警告だ。バッハやれ!』

 俺の声に合わせてバッハが体を大きくした。カタパルトや破城槌等の攻城兵器に向かって、火の玉を吐き50個程用意されていた攻城兵器を全て壊した。

「ワイバーン家族のみなさん、空を飛んで馬車が逃げようとした奴らがいたら、捕まえて持ってきてくれ。グレン、馬で逃げる奴がいたら馬を殺して、逃げた奴を連れて来てくれ。ハク、お前は貴族だと思われる人間を見つかたら、動けないようにしておいてくれ」

 命令を出して行くように言うと、スライム全員が集まって、高速で震えだした。

 これだけの質量が高速で揺れると、ちょっと気持ち悪くなるから止めてくれ。うっぷ……

 自分達にも指示をくれと訴えているみたいだ。じゃぁお前たちは、兵士には傷付けないように地面を進んで、ハクと同じように貴族を捕らえるように指示しておく。

 マップ先生を見る限り当主が20人近くいて、貴族籍を持っている人間が100人はここに来ているのだ。従魔よ頑張ってくれ!
しおりを挟む
感想 316

あなたにおすすめの小説

現実世界にダンジョンが出現したのでフライングして最強に!

おとうふ
ファンタジー
2026年、突如として世界中にダンジョンが出現した。 ダンジョン内は無尽蔵にモンスターが湧き出し、それを倒すことでレベルが上がり、ステータスが上昇するという不思議空間だった。 過去の些細な事件のトラウマを克服できないまま、不登校の引きこもりになっていた中学2年生の橘冬夜は、好奇心から自宅近くに出現したダンジョンに真っ先に足を踏み入れた。 ダンジョンとは何なのか。なぜ出現したのか。その先に何があるのか。 世界が大混乱に陥る中、何もわからないままに、冬夜はこっそりとダンジョン探索にのめり込んでいく。 やがて来る厄災の日、そんな冬夜の好奇心が多くの人の命を救うことになるのだが、それはまだ誰も知らぬことだった。 至らぬところも多いと思いますが、よろしくお願いします!

人の才能が見えるようになりました。~いい才能は幸運な俺が育てる~

犬型大
ファンタジー
突如として変わった世界。 塔やゲートが現れて強いものが偉くてお金も稼げる世の中になった。 弱いことは才能がないことであるとみなされて、弱いことは役立たずであるとののしられる。 けれども違ったのだ。 この世の中、強い奴ほど才能がなかった。 これからの時代は本当に才能があるやつが強くなる。 見抜いて、育てる。 育てて、恩を売って、いい暮らしをする。 誰もが知らない才能を見抜け。 そしてこの世界を生き残れ。 なろう、カクヨムその他サイトでも掲載。 更新不定期

ハズレスキル【地図化(マッピング)】で追放された俺、実は未踏破ダンジョンの隠し通路やギミックを全て見通せる世界で唯一の『攻略神』でした

夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティの荷物持ちだったユキナガは、戦闘に役立たない【地図化】スキルを理由に「無能」と罵られ、追放された。 しかし、孤独の中で己のスキルと向き合った彼は、その真価に覚醒する。彼の脳内に広がるのは、モンスター、トラップ、隠し通路に至るまで、ダンジョンの全てを完璧に映し出す三次元マップだった。これは最強の『攻略神』の眼だ――。 彼はその圧倒的な情報力を武器に、同じく不遇なスキルを持つ仲間たちの才能を見出し、不可能と言われたダンジョンを次々と制覇していく。知略と分析で全てを先読みし、完璧な指示で仲間を導く『指揮官』の成り上がり譚。 一方、彼を失った勇者パーティは迷走を始める……。爽快なダンジョン攻略とカタルシス溢れる英雄譚が、今、始まる!

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

【もうダメだ!】貧乏大学生、絶望から一気に成り上がる〜もし、無属性でFランクの俺が異文明の魔道兵器を担いでダンジョンに潜ったら〜

KEINO
ファンタジー
貧乏大学生の探索者はダンジョンに潜り、全てを覆す。 ~あらすじ~ 世界に突如出現した異次元空間「ダンジョン」。 そこから産出される魔石は人類に無限のエネルギーをもたらし、アーティファクトは魔法の力を授けた。 しかし、その恩恵は平等ではなかった。 富と力はダンジョン利権を牛耳る企業と、「属性適性」という特別な才能を持つ「選ばれし者」たちに独占され、世界は新たな格差社会へと変貌していた。 そんな歪んだ現代日本で、及川翔は「無属性」という最底辺の烙印を押された青年だった。 彼には魔法の才能も、富も、未来への希望もない。 あるのは、両親を失った二年前のダンジョン氾濫で、原因不明の昏睡状態に陥った最愛の妹、美咲を救うという、ただ一つの願いだけだった。 妹を治すため、彼は最先端の「魔力生体学」を学ぶが、学費と治療費という冷酷な現実が彼の行く手を阻む。 希望と絶望の狭間で、翔に残された道はただ一つ――危険なダンジョンに潜り、泥臭く魔石を稼ぐこと。 英雄とも呼べるようなSランク探索者が脚光を浴びる華やかな世界とは裏腹に、翔は今日も一人、薄暗いダンジョンの奥へと足を踏み入れる。 これは、神に選ばれなかった「持たざる者」が、絶望的な現実にもがきながら、たった一つの希望を掴むために抗い、やがて世界の真実と向き合う、戦いの物語。 彼の「無属性」の力が、世界を揺るがす光となることを、彼はまだ知らない。 テンプレのダンジョン物を書いてみたくなり、手を出しました。 SF味が増してくるのは結構先の予定です。 スローペースですが、しっかりと世界観を楽しんでもらえる作品になってると思います。 良かったら読んでください!

どうしてこうなった道中記-サブスキルで面倒ごとだらけ-

すずめさん
ファンタジー
ある日、友達に誘われ始めたMMORPG…[アルバスクロニクルオンライン] 何の変哲も無くゲームを始めたつもりがしかし!?… たった一つのスキルのせい?…で起きる波乱万丈な冒険物語。 ※本作品はPCで編集・改行がされて居る為、スマホ・タブレットにおける 縦読みでの読書は読み難い点が出て来ると思います…それでも良いと言う方は…… ゆっくりしていってね!!! ※ 現在書き直し慣行中!!!

ダンジョン作成から始まる最強クラン

山椒
ファンタジー
ダンジョンが出現して数十年が経ち、ダンジョンがあることが日常となっていた。 そんな世界で五年前に起きた大規模魔物侵攻により心に傷を受けた青年がいた。 極力誰とも関わりを持たずにいた彼の住んでいる部屋に寝ている間にダンジョンが出現し、彼はそこに落ちた。 そのダンジョンは他に確認されていない自作するダンジョンであった。 ダンジョンとモンスターにトラウマを抱えつつもダンジョン作成を始めていく。 ただそのダンジョンは特別性であった。 ダンジョンが彼を、彼の大事な人を強くするダンジョンであった。

ダンジョン学園サブカル同好会の日常

くずもち
ファンタジー
ダンジョンを攻略する人材を育成する学校、竜桜学園に入学した主人公綿貫 鐘太郎(ワタヌキ カネタロウ)はサブカル同好会に所属し、気の合う仲間達とまったりと平和な日常を過ごしていた。しかしそんな心地のいい時間は長くは続かなかった。 まったく貢献度のない同好会が部室を持っているのはどうなのか?と生徒会から同好会解散を打診されたのだ。 しかしそれは困るワタヌキ達は部室と同好会を守るため、ある条件を持ちかけた。 一週間以内に学園のため、学園に貢献できる成果を提出することになったワタヌキは秘策として同好会のメンバーに彼の秘密を打ちあけることにした。

処理中です...