ダンマス(異端者)

AN@RCHY

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第1376話 ディストピアにある問題

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 解体所でブラウニーたちの知られざる努力を知って、改めてブラウニーたちに感謝をした。

 よく考えたら地球でも解体は人の力で行ってたんだよな。精肉店では1匹まるまる解体をしているかは知らないけど、牛なんかは大きいからかなりの労力だよな。

 少し小さくなるけど豚の解体だって大変だと思う。でも日本で豚の安い部位は100g78円とかで売られていたような……豚自体の値段に解体する人の労力、切り分ける人、陳列する人、売る人等々の人件費を考えると、よくあんな値段で売れるもんだな。

 確か養殖のマグロで40~50キログラム位の個体が20万とかで紹介されてたっけな? 食べれない部位だってあるのに、安くないか? とか考えた覚えがある。でもマグロの刺身ってそれなりにいい値段してたっけな?

 解体に関しては全てを機械化することは不可能だろう。精密機械みたいにほとんど狂いの無いモノなら、機械化も可能だと思うが、生物みたいに同じ個体が存在しないモノを機械化などできるはずがない。

 それを考えると日本中、世界中で売りに出されている解体された肉は、誰かが捌いていたってことだよな。それが全部売れるわけではなかったはずだ。その内の何割かが破棄されていると聞いた覚えがある。

 あんなに安く売っても商売が成り立つってことは、多少なり儲けがあったってことだよな。

 ん~焼肉店は食品ロスを少なくするために、いかに消費しきれる……売りさばける量を仕入れるかも、仕入れ担当の腕の見せ所って話もあったっけな? 生肉は長い時間保存がきくものではないからな。

 そういった見えないところでの苦労があって、俺たちは毎日美味しい食事が食べれているんだな。料理を作ってくれているブラウニーたちにも感謝をしているが、本当に感謝をすべきは見えないところで頑張ってくれている人たちなのかもな。

 そんなことを考えさせられる見学だったな。

 一応、レポートをまとめてグリエルたちに提出している。何故そんなことをしたかというと、街の人たちにも知ってほしいと思ったから、俺の名前を使って掲示板などに掲載してもらう事にしたのだ。

 ダンジョン農園の解体所はさすがに見せてあげられないが、家畜エリアの人たちの地位向上を狙える者だったので、利用する事にしたのだ。

 ディストピアでは、どんな職業についていても優劣を気にする人はいないのだが、家畜エリアを担当している人たちは後発組、後から一族で移り住んできたため自己評価が低いのだ。

 この人たちがいるからディストピアでは、お肉や内臓を美味しく食べられているのだが、自分たちがこんなにいい生活を送ってはいけない! と思っているような感じなのだ。

 今まで不当に搾取されていたのだが、それが当たり前だったのだ。ディストピアでの生活はそれほどまでに、この一族にとっては衝撃だったのだろう。

 それでも生活できなくなるほど搾取された彼らは、生きるために移り住むことを決めたのだ。

 低く見ていたわけではないが、解体所での苦労を知ったのだ。俺の中の評価はガン上がりである。ブラウニーたち程の解体技術は無いにしても、それに近いレベルで解体をするのだ。ディストピアにしっかりと貢献しているのに、家畜エリアで過ごすことが多いんだよね。

 子どもたちを学校に通わせようと四苦八苦しているのだが、いい返事を聞く事が出来ないでいるのだ。

 今回の件はちょうどいいと考えたのだ。

 ディストピアでは色んな場所へ見学をできるのだが、家畜エリアでは衛生管理の問題で解体所を見せていなかったのだ。この際、衛生管理を徹底することで見学をできるようにしよう、という計画のための報告だ。

 これには家畜エリアの人たちに、手を焼いていたグリエルたちも喜んでいた。何せ俺直々の命令になるから、そこを足掛かりに家畜エリアの人たちを、ディストピアの街の中へ来るように仕向けたいとの事だ。

 2週間後には解体所の見学が開始される程、急ピッチで準備が行われた。

 今までの解体所の衛生管理が悪いわけではないが、今まで頑張ってくれていたご褒美ということで、解体所を建て替えさらに使いやすくしている。見学は解体している近くで見るのではなく、カメラを通して見ることも可能だし、解体している隣からガラス越しに見ることもできるようにした。

 新しいものには興味を示すディストピアの住人たちは、新しく解放された解体所へこぞって足を運んでいた。

 お店の人たちもある程度の塊を捌くのだが、さすがに骨付きのまま捌くことはない。ここで解体され各部位に別けられたものを、精肉店の人が更に切り分けて販売する形だ。

 ディストピアでは魚がたくさん流通しているので、一般家庭でも捌ける人がほとんどだ。

 そのためか俺と同じような気持になった人たちがおおかった。動物の解体がここまで大変だとは思っていなかったそうだ。

 1週間で俺の思惑通りに、家畜エリアで働いている人たちの評価が高まった。今までもお肉を安定供給してくれているので、かなり感謝されていたのだけどね。

 特に肉ダンジョンがあるので、お肉に関しては捌きやすいというイメージがあったのだが、魔物のドロップする肉と家畜の肉とでは、ここまで違いがあることに驚いていたな。

 魔物のお肉も美味いのだが、食べるために飼育されている家畜は段違いに美味い。寿命を迎えた家畜の肉とは違うからな。オーク豚は例外だけどね。

 ここから提供されるお肉は、高級品として扱われている。とはいえ、上位の魔物たちの中には家畜より美味いお肉もあるのだが、そういったお肉を取ってくることが出来る冒険者は少ない。

 このときにお手伝いに来ていた土木組がいい働きをしてくれた。

 以前から年少組と土木組のみんなと交流があったこのエリアの子供たちを、連れ出して街の中心、中央広場に連れて行き行くことに抵抗が生まれないようにしてくれた。

 その子どもたちが親を連れて行く、といった好循環が生まれた。と言っても、親世代があのエリアから出るようになったのは、半年後くらいからだった。
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