ダンマス(異端者)

AN@RCHY

文字の大きさ
1,378 / 2,518

第1378話 決意

しおりを挟む
 夕食後に妻たちに残ってもらった。娘たちも残りたがっていたが、さすがに今からする話を娘たちには聞かせられなかったので、従魔たちに手伝ってもらって娘たちの興味をそらしてもらい、部屋に連れて行ってもらった。

 それでも多少ぐずったので、お風呂と一緒に寝る約束をしたら、これからする話のことなんて忘れたかのように喜び、従魔たちと戯れるために部屋へ向かった。

 ウルは何かを察してくれて、こちらのことをアシストしてくれた。本当に4歳の子供なのだろうか?

 娘たちがいなくなったので、昼間にチビ神から聞いた話をみんなにする事にした。

「……ということで、ユニークスキル【完全魅了】に目覚めた勇者と、魅了された人たちを抹殺する事になった」

 痛く感じるほどの沈黙が食堂を支配する。

「……それは、ご主人様がしなければならないことなのですか?」

 初めに声を出したのはピーチだった。妊娠しているメンバーに負担を掛けたくなかったが、仲間外れにする方が気に病んで良くないと判断したので聞いてもらっている。

「どうやら、人間はその魅了に逆らえないそうなんだ。ダブルの冒険者でも殺す前に魅了されてしまうとか」

「他の人も殺さないといけないのですか?」

 これはアリスからだ。

「さっきも話したけど、この完全魅了は1度かかると、行使した者が死んでも解除されないんだってさ。後追いをしてしまうから、苦痛を感じることなくすべてを終わらせようと思ってるんだ」

 またしばらく沈黙が場を支配した。

「シュウ君、それは魔物たちではダメなの?」

「相手にダブルの冒険者もいるから、生半可ではダメだし魔物たちだと少なからず苦しむ事になると思う。だから苦しまないようにメテオを使うよ」

 それを聞いた妻たちは目を見開いた。この世界でも隕石はあるので、その威力は伝わっているのだ。正確には隕石ではなく、この世界を動かしているシステムが生み出して落としている物なんだけどね。

 隕石を疑似的に真似て、巨大な石を落とすメテオの威力を理解している妻たちの反応は正しいと思う。

 その後もいくつか話をするが、俺の決意が固いことを悟った妻たちは少し話し合って、

「従魔たちは連れて行ってください。1人で行くことだけは絶対に許可できません。もし1人で行くというのならば、全力で止めさせていただきます」

 シュリが前に出てきて収納の腕輪から剣と盾を取り出して、本気だということを行動で示してきた。

「その辺は大丈夫だよ。魔物は魅了されないみたいだし、さすがに魔法を使おうとすればダブルの冒険者は気づいて襲ってくると思う。守りを固めるために、ニコたちスライムやハク、ギン、クロたちは連れて行くよ。もちろんダマたちもね。シリウスは来てくれると思うけど、メグちゃんは来てくれるかな?」

 とにかく戦力になる邪魔にならない従魔は全部連れて行く予定だ。

 これで妻たちには納得してもらえた。そのまま話し込んでいると、娘たちが食堂に突撃してきた。

「とーたん! お風呂の時間!」
「はやくはやく」
「約束した!」

 ウルはそんな姿を苦笑しながら見ている。

「3人ともさっきからまだかまだかって、ずっと言ってるよ。早くしないと嫌われちゃうかもね」

 おっと、嫌われるだと? それはあかんですな。

 あれ? 思ったより時間が経ってたみたいで、俺が圧倒的に悪い状態だな。

「みんなごめんな。ちょっと話に夢中になり過ぎちゃった」

 俺がそういうと、スミレがウルの顔を見て1歩前に出た。

「またせたことによる、しゃざいとばいしょーをようきゅうする! です」

 意味が分からず言っているのか、棒読みに近い謝罪と賠償を要求されてしまった。

「本当にごめんね。賠償は何にしようか? お風呂と一緒に寝る以外に、何かしてほしいことはあるのかな?」

 3人は意味が分かってなかったので振り返ってウルの方を見ている。小声でウルが3人に説明している。何か悪巧みをしているようで可愛いな。ブルムが前に出て、

「明日は休みだから、今日はずっと一緒に遊びたい!」

 おっと、それは俺だけでは決められない案件だぞ。なので母親たちの方を見ると「今日だけね」と許可が下りたので、

「わかった! ずっと付き合うぞ! だけど、今日だけだからな!」

 ウルも一緒になって4人で喜んでいた。

 そのまま手を引かれ背中を押されお風呂へ向かう。

 いつものように洗ってあげ、一緒に湯船につかる。もちろん娘たちに合わせた高さの椅子がある湯船だ。

 お風呂から出た後は、4人と一緒にアニメを見る事になった。俺の寝室にある巨大スクリーンでベッドの上から、寝転がって見えるようになっている。行儀は悪いが座っている状態なら、軽いお菓子が食べれるように準備している。

 少し部屋が暗くなっているから、電池が切れたらそのまま寝るだろうな。そうしたら場所を動かして寝かせないとな。

 俺は全く興味がなかったが、娘たちは少女アニメを見たがったので一緒に見ている。恋愛系かと思ったら、予想していたより内容が濃くてびっくりしたな。

 6話、約2時間程アニメを見たところで、ウルの電池が切れた。ミーシャたちは1時間30分ほどで寝てしまっている。

 う~む、ミーシャたちはいつものように、3人でくっつくように寝ている。さすがに1人ずつ動かすのは難しいか? 3人を起こさないように抱きかかえ場所を移動させる。

 娘たちの枕をセットして、ウルも抱きかかえ移動させる。3人の隣に寝かせようとしたら、俺の服を掴んで離さなくなってしまったので、ミーシャたち・俺・ウルという順番で並び寝る事になった。

 次の日のウルは、何で俺にしがみついているのかを覚えているわけでもなく、起こした時に恥ずかしそうな顔をしていた。
しおりを挟む
感想 316

あなたにおすすめの小説

現実世界にダンジョンが出現したのでフライングして最強に!

おとうふ
ファンタジー
2026年、突如として世界中にダンジョンが出現した。 ダンジョン内は無尽蔵にモンスターが湧き出し、それを倒すことでレベルが上がり、ステータスが上昇するという不思議空間だった。 過去の些細な事件のトラウマを克服できないまま、不登校の引きこもりになっていた中学2年生の橘冬夜は、好奇心から自宅近くに出現したダンジョンに真っ先に足を踏み入れた。 ダンジョンとは何なのか。なぜ出現したのか。その先に何があるのか。 世界が大混乱に陥る中、何もわからないままに、冬夜はこっそりとダンジョン探索にのめり込んでいく。 やがて来る厄災の日、そんな冬夜の好奇心が多くの人の命を救うことになるのだが、それはまだ誰も知らぬことだった。 至らぬところも多いと思いますが、よろしくお願いします!

人の才能が見えるようになりました。~いい才能は幸運な俺が育てる~

犬型大
ファンタジー
突如として変わった世界。 塔やゲートが現れて強いものが偉くてお金も稼げる世の中になった。 弱いことは才能がないことであるとみなされて、弱いことは役立たずであるとののしられる。 けれども違ったのだ。 この世の中、強い奴ほど才能がなかった。 これからの時代は本当に才能があるやつが強くなる。 見抜いて、育てる。 育てて、恩を売って、いい暮らしをする。 誰もが知らない才能を見抜け。 そしてこの世界を生き残れ。 なろう、カクヨムその他サイトでも掲載。 更新不定期

ハズレスキル【地図化(マッピング)】で追放された俺、実は未踏破ダンジョンの隠し通路やギミックを全て見通せる世界で唯一の『攻略神』でした

夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティの荷物持ちだったユキナガは、戦闘に役立たない【地図化】スキルを理由に「無能」と罵られ、追放された。 しかし、孤独の中で己のスキルと向き合った彼は、その真価に覚醒する。彼の脳内に広がるのは、モンスター、トラップ、隠し通路に至るまで、ダンジョンの全てを完璧に映し出す三次元マップだった。これは最強の『攻略神』の眼だ――。 彼はその圧倒的な情報力を武器に、同じく不遇なスキルを持つ仲間たちの才能を見出し、不可能と言われたダンジョンを次々と制覇していく。知略と分析で全てを先読みし、完璧な指示で仲間を導く『指揮官』の成り上がり譚。 一方、彼を失った勇者パーティは迷走を始める……。爽快なダンジョン攻略とカタルシス溢れる英雄譚が、今、始まる!

どうしてこうなった道中記-サブスキルで面倒ごとだらけ-

すずめさん
ファンタジー
ある日、友達に誘われ始めたMMORPG…[アルバスクロニクルオンライン] 何の変哲も無くゲームを始めたつもりがしかし!?… たった一つのスキルのせい?…で起きる波乱万丈な冒険物語。 ※本作品はPCで編集・改行がされて居る為、スマホ・タブレットにおける 縦読みでの読書は読み難い点が出て来ると思います…それでも良いと言う方は…… ゆっくりしていってね!!! ※ 現在書き直し慣行中!!!

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

【もうダメだ!】貧乏大学生、絶望から一気に成り上がる〜もし、無属性でFランクの俺が異文明の魔道兵器を担いでダンジョンに潜ったら〜

KEINO
ファンタジー
貧乏大学生の探索者はダンジョンに潜り、全てを覆す。 ~あらすじ~ 世界に突如出現した異次元空間「ダンジョン」。 そこから産出される魔石は人類に無限のエネルギーをもたらし、アーティファクトは魔法の力を授けた。 しかし、その恩恵は平等ではなかった。 富と力はダンジョン利権を牛耳る企業と、「属性適性」という特別な才能を持つ「選ばれし者」たちに独占され、世界は新たな格差社会へと変貌していた。 そんな歪んだ現代日本で、及川翔は「無属性」という最底辺の烙印を押された青年だった。 彼には魔法の才能も、富も、未来への希望もない。 あるのは、両親を失った二年前のダンジョン氾濫で、原因不明の昏睡状態に陥った最愛の妹、美咲を救うという、ただ一つの願いだけだった。 妹を治すため、彼は最先端の「魔力生体学」を学ぶが、学費と治療費という冷酷な現実が彼の行く手を阻む。 希望と絶望の狭間で、翔に残された道はただ一つ――危険なダンジョンに潜り、泥臭く魔石を稼ぐこと。 英雄とも呼べるようなSランク探索者が脚光を浴びる華やかな世界とは裏腹に、翔は今日も一人、薄暗いダンジョンの奥へと足を踏み入れる。 これは、神に選ばれなかった「持たざる者」が、絶望的な現実にもがきながら、たった一つの希望を掴むために抗い、やがて世界の真実と向き合う、戦いの物語。 彼の「無属性」の力が、世界を揺るがす光となることを、彼はまだ知らない。 テンプレのダンジョン物を書いてみたくなり、手を出しました。 SF味が増してくるのは結構先の予定です。 スローペースですが、しっかりと世界観を楽しんでもらえる作品になってると思います。 良かったら読んでください!

痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~

ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。 食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。 最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。 それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。 ※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。 カクヨムで先行投稿中!

ダンジョン作成から始まる最強クラン

山椒
ファンタジー
ダンジョンが出現して数十年が経ち、ダンジョンがあることが日常となっていた。 そんな世界で五年前に起きた大規模魔物侵攻により心に傷を受けた青年がいた。 極力誰とも関わりを持たずにいた彼の住んでいる部屋に寝ている間にダンジョンが出現し、彼はそこに落ちた。 そのダンジョンは他に確認されていない自作するダンジョンであった。 ダンジョンとモンスターにトラウマを抱えつつもダンジョン作成を始めていく。 ただそのダンジョンは特別性であった。 ダンジョンが彼を、彼の大事な人を強くするダンジョンであった。

処理中です...