ダンマス(異端者)

AN@RCHY

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第1379話 戦略級魔法

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 ゴオオオオオオオオッ!

 っと音が聞こえてきそうな光景を見上げて、今から亡くなる人たちのことを考える。

 チビ神に言われたからと言って全部を信じたわけではない。そしてこれは妻たちにも話していないこと、危険を冒してまで調べた。

 チビ神の話から、ドッペルゲンガーを使っても精神から支配する完全魅了は防げない、と考えている。だけど支配できるのは人間だけ。なぜ対象が限定されているのかは分からないが、魔物には効果がない。

 それはドッペルを使って確認している。そして妻たちにはこの確認作業をするということは話していない。理由は簡単、話したら絶対に止められるからだ。最低限安全を確保するために、憑依ではなくニコの大冒険で使った従魔たちを後ろから見る視点を使って観察した。

 もちろん初めから観察していたわけではない。都合よく近場に盗賊がいたので、半殺しにして5人ばかり連れて来て安全を確認してから観察している。

 件の完全魅了を使う勇者に遭遇するまでに3日も使ってしまった。

 ドッペルはLv5で召喚しているので、多少強い人に殴られれば死んでしまうレベルだ。もし人をコピーしたドッペルにも効くのであれば大事である。多少DPを消費して、こちらの情報を全く持たせないまま街へ行くように誘導している。

 そして1週間程かけて情報を収集して、完全魅了は本当に解除できないモノだと判断した。すべての魔法を使って、四大精霊に闇精霊、光精霊にも訊いてみたが、効果的なものはないと判断した。

 もし可能だとすれば、完全魅了を治す事の出来るユニークスキルの存在だろう。

 完全魅了は、自然発生した神の管理下に無いイレギュラーのユニークスキルと考えているが、チビ神たちが手はないと言っているのであれば、召喚可能なユニークスキルでは治療ができないはず。同じイレギュラーなユニークスキルでもないと無理だろう。

 そして盗賊の記憶を闇魔法でいじってから街に行かせてみたが、完全魅了の恐ろしさが判明した。検証人数が3人なので完全ではないが、姿を視認しただけで魅了されてしまう、常時発動型のユニークスキルだった。

 ダブルの冒険者でも魅了される理由はそこにあったのだ。盲目の人間か目をつぶって対象を殺せる、ブラインドキラーでもなければ無理だろう。ユニークスキル持ちのあの勇者は、個人としてはAランク冒険者に届かないくらいの実力しかない。

 最低でも500メートルは有効範囲内だった。でもさ地球で考えると500メートル先っていえば、望遠鏡を使っても正確に姿を視認できる気がしないよね。それを裸眼で認識できるってマサイ族かよ!

 他にも目が良い種族はいるけど、マサイ族って何故か分からないが、目が良い種族で取り上げられるよな。

 完全魅了は獣人を魅了するが、ドワーフは魅了することはなかった。ドワーフは人間じゃなくて精霊より……一応精霊だけど……だからか、魅了されないようだった。それでもいい装備を作ることができるので、監禁され昼夜装備を作らされていた。

 さすがにこの人たちを巻き添えにするのはよろしくなかったので、種族的に魅了されなかった人たちをまとめて救出している。ジェノサイドキャラバンに参上してもらい、ゴーストタウンに送り届けてもらっている。

 で、チビ神からもらった情報はもう1つある。このユニークスキル持ちが死んだら、魅了にかかっていた人間が後を追って死んでしまうというやつだ。それを検証するためには、殺さなければいけない。

 今更人殺しを忌避することはないが、もしチビ神が言っていることが正しかった場合、壮絶な光景があの街で起こる事になる。自殺か他の人に頼んで殺してもらうか、殺し合いが始まるか……それは俺には分からない。

 ただ、これまでの情報は正しかったので、まず間違いないと考えている。

 その勇者を殺すためにシャドウアサシンを召喚している。妻たちや重要な人材の影の中に潜ませているシャドウの上位個体だ。アサシン……暗殺者。気づかれずに行われる一撃必殺にかけては、右に出るモノはいないかもな。

 Lvも600までドーピングして、スキルもテンコ盛り。もしここまで強い個体が存在したら、俺でもかなり危険ではないだろうか? シャドウもそうだが、基本的なステータスは高くない。それをスキルで強化しているのでかなり極悪な性能になっている感じだ。

 ここまでしたのは、確実に息の根を止めるためだ。近くにはダブルの冒険者が護衛についてはいるが、あまり弱いと防がれてしまう心配を考慮してのドーピングだ。

 そして3分前に殺したのだが、その後の街の中は酷かった。殺した瞬間に魅了した者が死んだと分かったのだろう、遅い者でも30秒で発狂した。

 自分の首を掻きむしり今にも死にそうな人、親に首の骨を折られた子ども、子どもに刺された親、冒険者同士の殺し合い、巻き込まれて死んだ人……この街が死に向かっていることは理解できた。そしてこれ以上の苦しみは良くない。

 そこで練り込んでいた魔力を使いメテオ発動した。力学や爆発の力などは全く分からないが、以前使ってみたときに直径300メートルのメテオで3キロメートル近くのクレーターができた。200メートルで2キロメートルだったので、メテオの大きさの10倍がクレーターのサイズになると勝手に理解した。

 そしてこの街は直径5キロメートル……500メートルサイズのメテオを落とせば街は吹き飛ぶ。だけどこれ以上苦しまないように殺すつもりなので、1キロメートルのメテオで街を潰す事にした。

 俺のいる位置は、20キロメートル程離れた山の上だ。おそらくメテオの影響はここまで来るだろう。さすがに10キロメートルのクレーターと周囲がボロボロになるのは良くないので、シエルに結界を張ってもらっている。

 結界の頂上に大きめの穴をあけ、そこにメテオを落とした。全部塞いだ結界だと、メテオが結界を壊して周囲がボロボロになるので穴をあけている。他にも爆発の力を逃がすための出口でもある。そしてこの結界がどれだけ機能するか。

 街にメテオが直撃すると、土煙が凄い事になった。

 直径10キロメートルのクレーターは出来てしまった。それより外はクレーターにより地面が動いた際の影響で多少歪んでしまったが、大きな被害は10キロメートル以内で済んだ。

 そして天高く舞い上げられた土煙がヤバい。分厚過ぎて昼間なのに夜っぽくなっている。ただ、局部的な夜なので不思議な光景を見ている感じだ。

 っと、感心して見ている場合では無かった。このまま放置できるような状況ではないので、シリウスに頼んで土を水に付着させて地上に振らせてもらった。

 ちなみにメグちゃんは、ディストピアの最終防衛ラインとして残っている。

 これで一先ずは終了かな。およそ3万人の人間をこの手で殺した。個人で記録した、この世界でも有数のキルカウントだろうな。だけど、妻や娘たちを守るためだ何の後悔もない。
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