ダンマス(異端者)

AN@RCHY

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第1410話 ヤル気

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 俺たちは今、夜営の片付けを終えてから体をほぐしている。そしてガチ装備である。

 ダンジョンに入っているのに、今までガチ装備では無かった。舐めプをしているが、ガチ装備って意外に汎用性がないからね。ガチ装備は、俺たちの特性を引き出す付与がされているので、他の装備を使う時は使い難いんだよね。

 俺なんかは特に、複数の武器を使うので、タンクや前衛装備の硬めの装備をしている時に、弓や魔法を使うとかなり不便なんだよね。

 だから魔物が弱ければ、汎用装備、革で作られた装備を使うのだ。後衛に偏っているメンバーは革オンリーで、前衛に偏っている場合は革+鱗をつかった汎用装備を作っている。

 汎用と言えば聞こえはいいが、言ってしまえば防御力が高いだけなのだ。他の武器を使った時に阻害が無いように、作られている防具というだけなのだ。

 だけど俺たち先行部隊はガチ装備、特化装備と呼べばいいのだろうか? タンクなら防御力を強化する付与だったり自動回復の付与、中衛や遊撃なら速度や力に特化した付与、弓の威力や正確をあげる付与、魔法なら威力や詠唱補助や範囲拡大などの付与だ。

 そして俺は今回は魔法使いの枠で参加なので、威力に特化した装備を身につけている。部屋の中に魔法を撃ちこむ仕事なので、範囲よりは威力に特化した方が効率がいいのだ。ただ火魔法だけは今回使えない。

 ダンジョンの中では空気が循環しているが、それでも短時間に高火力で燃え上がれば酸素が無くなってしまう。魔法なのでダメージにはさほど影響は無いが、通る時に酸欠になる可能性があるのだ。そのため火魔法は使わない予定だ。

 スケルトン系に効果の高い火魔法が使えないのは少し面倒だが、この程度のLvの魔物であれば相手の得意属性でもなければ殲滅は容易だ。

 身を削る魔法として、風魔法と土魔法の複合魔法のサンドブラストを使う予定だ。本来この魔法は前方に風の力を使って、砂の粒子を高速でぶつける魔法なのだが、密閉空間で使うと部屋の中を嵐の様に縦横無尽に駆け巡り効果が増すのだ。

 綾乃とバザールとダンジョンで遊んでいた時に、密閉空間で風魔法を使って大変な目にあって気付いた物なのだ。

 おっと、戯言はこの辺で終わりだ。

「さて、みんな準備はできてるかな?」

 全員の顔を見渡して問題ないことを確認する。

「今日は速度が命だ。マッパーの3人は順路を間違えないようにね。もし途中で敵がわいたら連絡を入れて時間を記録しておいてくれ。先行部隊のマッパー、アリスは、タイムキーパーもつとめてもらうけど大丈夫だよな? よし、出発しよう!」

 先行部隊だけ何故タイムキーパーがいるかと言えば、どの部屋をいつ倒したか正確な時間を記録しておかないと、沸き時間が把握できないからだ。そもそも、このダンジョンが時間沸きなのか、決まった時間に沸くのか分かっていないのだ。なので、情報収集も兼ねている。

 先行部隊は準備万端。階段を駆け下りていく。アリスの指示に従って通路を進んでいく。

 1つ目の部屋に到着する。景気づけに俺が1つ目の部屋を担当することが決まっている。魔力を練り上げサンドブラストを発動待機状態にしてから、扉を開けてもらう。

 詠唱反応は無いようで扉を開けていても近づいてくる気配はない。次からは開けたまま詠唱をしてもいいかもしれないな。

【サンドブラスト】

 部屋の中に2つの竜巻が起きていた。部屋を真っ二つに分けるように砂が撃ち出され、それが対辺にぶつかり左右に分かれ、左右に分かれた砂が風の勢い壁沿いを走り、俺が魔法を撃ちこんでいる入口まで戻ってきて、持続して使っている魔法にあおられて同じ軌道を飛んでいく。

 これによって2つの竜巻が部屋の中に完成した。

 この魔法を使うとこんな風になるんだな。中のパイレーツスケルトンと海辺の悪魔が、竜巻の中心に吸い込まれている。骨や殻を削られ絶命していく魔物たち。こちらに向かってきたいのに風に阻まれて、哀れな魔物たちである。

 一部屋目クリア。

「サンドブラストは威力をあげるのには向いていますが屋内で使うと、結構大変な事になりますね」

 ライムが俺の気持ちを代弁してくれた。

「やっぱりそう思うよな。次の部屋はサンドブラストじゃなくて、違う魔法にするべきかな?」

「そうですね。水をつかっても大惨事になりそうな予感がしますので、おそらく有効なのは風と上位魔法の雷ですかね? ですが骨には雷って聞くのでしょうか?」

「雷って誤解されがちだけど、感電だけが力じゃないんだよね。出力が低ければ感電しか起こらないんだけど、出力が上がるにつれて物理的な攻撃力も追加されるんだ。まぁその物理的な攻撃力は、水蒸気爆発による物だったはずだから、このフロアではかなり有効かもしれないな」

 知識はあっても実際に見ていないので、雷の威力を理解するのは難しいと思う。説明した俺だって、実際に雷が落ちた木や岩が割れたりするメカニズムはよくわかっていない。確か水蒸気爆発だったはず……程度の知識だ。

 海にも雷は落ちている。しかも塩水だ。電気を通しやすい塩水で泳いでいる魚たちは雷が落ちても死なない。それは地球が電気を中和しているのだとかなんとか……う~ん、理系は強かったはずだけど、勉強していない分野だからよくわからんな。

 次の部屋ではライムがウィンドカッタートルネードを使った。戦術級の魔法だが魔力を抑えて放っていた。この魔法は、ウィンドカッター、風の刃を多数つくってトルネード、竜巻の中に放り込む魔法だ。サンドブラストの砂を風の刃に変えた感じかな?

 ウィンドカッタートルネードは、ブラスト、突風よりも上位の魔法であるため、消費魔力が大きい。しかも砂は生み出せばそれだけで効果があるが、風の刃は維持するのにも魔力を使う。

 ウィンドカッタートルネードを抑えて使っても、サンドブラストをブーストして使った魔力を簡単に超えてしまう。

 3部屋目は、普通に雷魔法のライトニングを使った。サンダーは上から落雷の様に降ってくるのに対して、ライトニングは術者を中心に撃ち出される魔法だ。一点に絞ることもできれば、扇状に拡散させることも可能だ。魔力を練り込んで放ってもらうと十分な威力は出た。

 出たけど魔力の消費量を考えると、さすがに上位魔法なだけはあった。もともと単体……複数だったとしても少数に使う魔法だと思うので、一点突破の魔法を拡散すれば魔力消費が上がっても仕方がないか。

 サンダーストームみたいな範囲魔法はあるが、あれってそれなりの威力の雷を多数落とす魔法なんだよな。一定範囲にサンダーを連続で落としているだけ、数で補っているんだよな。

 魔力の消費量は、ウィンドカッタートルネードが一番消費が少なくて済むという判断になった。

 魔法選択は自由だが、次の順番に魔法が放てなくなるような使い方はしないことになった。今日は21階まで進むことが絶対条件だからな! 移動速度が遅くなるようなことは全部なしだ!
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