ダンマス(異端者)

AN@RCHY

文字の大きさ
1,714 / 2,518

第1714話 久々の魔物

しおりを挟む
 20階に到着した。俺たちはまず、周囲の確認から始める。

 水晶の色は変わっておらず、濃い赤で相変わらず見難い。問題は魔物の種類だ。全員が索敵に力を入れ周囲に敵がいないかを確認する。

 階段を下りた所には基本的に敵が少ない。今回もその例に違わず感知できる範囲には魔物がいなかった。マップ先生で確認しているが、ウィスプが見つけてマーキングした敵しか表示されないから、新しくわいたり何かしらの方法で、マーキングが解除されたりすると分からなくなるからな。

 最短距離で進んでいくと、

「止まって!」

 先行偵察をしていたソフィーが、短く鋭い警告を出した。

「分かりにくいですが、この先にいくつか気配がある気がします。ウィスプたちも気配の薄い昆虫や爬虫類に、マーキングできない事が多いです。マーキングできてなかった魔物がいる可能性が高いです」

 ウィスプたちがマーキングできていない、昆虫タイプや爬虫類タイプがいる可能性があるとの事だ。

 キリエが、

「ソフィーには、何匹くらいいるか感じられる?」

「4~5匹はいるような気がします」

「強くはないと思いますが、場所が判断できないので焼き払いましょうか」

「キリエ、ちょっといいか? ちょっと試したい事があるんだけど、少しだけ指揮をもらっても」

「問題ないです。何するかだけ教えてください」

「前に考えた魔法をちょっと使ってみたいんだよ」

 分かりました。と言って、みんなに指示を出していく。俺に怪我をさせないように、フォーメーションを組み始めた。

 俺はイメージをする。

 魔法はイメージが重要。

 索敵できる魔法をイメージしたことがあるが、魔法で索敵をしてみた事があるのだが、思ったより精度が高くなかったんだよね。だから、魔法での索敵はあまり得策ではないと考えた。使えないとは言わないが、ダンジョンで隠密が得意な魔物にはあまり効果が無い。

 森の中で隠密が苦手な相手であれば、それなりの精度で発見できるんだけどね。スキルの範囲より広いから、便利といえば便利なんだよな。

 隠密、発見できないのは、気配などが察知できないからだと思う。人間でも亜人でも動いていないと、察知できる可能性が低くなる。それに体温や音が加わると、更に察知できる可能性が上下する。

 では、俺が今回使おうとしているのは分類にすれば、攻撃魔法の一部だろう。

 ただ、攻撃に魔力を使うというより、範囲を拡大する方に魔力を使うタイプだ。近い魔法といえば、風魔法で薄く広くしたストーム系だろう。

 魔力を各属性に変換するのも魔力をそこそこ使うので、魔力のまま使うことで魔力の消費量を減らす工夫をしている。魔力でごり押ししてもいいけど、それだと魔法技能が上達しないからな。

 錬った魔力を使い切るためには、今から使う魔法がどれだけの魔力を使うかしっかりと認識して、狂いなく魔力を練り上げる必要があるのだ。

 ずいぶん前の話だが、イメージした魔法を使う際に勝手に魔力が消費されていると思ったのだが、魔力を追加してブーストできることを考えると、魔法によって固定された魔力が消費される、と言う都合のいいものではないかと考えた。

 鑑定を使って、魔法の使える冒険者たちに協力を仰ぎ判明したのが、熟練度の高い人ほど消費が少なかった。魔法技能のスキルLvによっても消費量が変わるが、何度も試してこの事実が判明した。

 っと、思考がそれてるな。

 これから使うのは、魔力をそのまま使う無属性魔法の応用だ。小さく細かい魔力の球を作り、それを大量に作って周囲に飛ばす。小さくて細かくても当たれば、多少体を動かすだろう。それを索敵スキルで拾ったらどうかと考えたのだ。

 半径は索敵スキルの50mに合わせて放出する。

「みんな、索敵に力を入れてくれ」

 フレンドリーファイアもあるけど、ダメージはほとんどないので大丈夫だろう。

「ソフィー、何か感じた?」

「はい、先ほどより濃い気配を4つ感じました」

「他の人は?」

 全員3~4匹の魔物を索敵スキルで発見している。前衛が走って4匹の魔物を処理する。

 今回は、蛇の魔物も出てきたな。しかも、かなり強い毒を蓄えているタイプのようだ。

 焼き払ってもいいのだが、進むのに冷やさないといけないので、多少面倒ではあるのだ。斥候を担当しているメンバーに、先ほどの魔法を教えた。消費量が多少増えても問題はないので、常に放出し続けて敵をあぶりだしながら索敵をする方法をとった。

 思ったより発見率が高くなり、進むペースが上がった。

 だけど、すぐに問題が出てきた。

 25階を越えた後だ。

 水晶がなくなったのだが洞窟タイプは変わらず、火山エリアによくみられる、溶岩が流れている川のようなものをちらほら見かけるようになった。

 亜人の魔物はゴブリンやコボルトはいなくなり、オークやミノタウロス、リザードマンが中心になった。問題は、しばらく進んだ後だ。

 それなりの速度を維持して進んでいたのだが、不意に攻撃をくらったのだ。しかも、中心近くで妻たちに守られている俺がだ。

 不意打ちに近い攻撃だったが、素手による攻撃だったので何とかガードが間に合った。もし相手が強い武器を持っていたら、それなりの怪我をした可能性が高いだろう。

 誰一人気付けなかった魔物は、ゴーレムだった。

 こいつらがいることを想定していたが、不意打ちをくらうことなんてないと考えていたのが、拙かったのだろう。実際、見つけにくいけど見逃したことは無かったのだ。

 それなのに今回気付けなかったのは、鑑定した結果、擬態というスキルを保有しており、そのスキルを使っていたため、誰一人として認識できなかったのだ。

 擬態を持っている奴らは他にもいるのだが、ここまで気配が感じられなかったのは亜人の中でも、魔法生物のタイプの魔物だったからだろう。

 もともと、あいつらは動かないと判断しにくいのに、擬態をすると気付けなくなるようだ。

 ロックゴーレムは洞窟と同じ見た目なので、擬態されているとどうにもならない事だけが分かった。

 ゴーレムには今まで使っていた火魔法が効きにくいんだよね。石なので解ける程高温で焼いてやれば死ぬのだが、無駄に魔力を食うしダンジョンの温度がかなり上がるので、冷やすのに時間も魔力も使ってしまう。

 雷魔法でも水魔法でも、威力が弱ければ全く効果が出ないからかなり面倒だ。見つけられるならピンポイントで攻撃すればいいんだけど、ここまで隠れられているとな。広範囲に魔法を使うことを考えると、かなり厄介な相手だ。
しおりを挟む
感想 316

あなたにおすすめの小説

現実世界にダンジョンが出現したのでフライングして最強に!

おとうふ
ファンタジー
2026年、突如として世界中にダンジョンが出現した。 ダンジョン内は無尽蔵にモンスターが湧き出し、それを倒すことでレベルが上がり、ステータスが上昇するという不思議空間だった。 過去の些細な事件のトラウマを克服できないまま、不登校の引きこもりになっていた中学2年生の橘冬夜は、好奇心から自宅近くに出現したダンジョンに真っ先に足を踏み入れた。 ダンジョンとは何なのか。なぜ出現したのか。その先に何があるのか。 世界が大混乱に陥る中、何もわからないままに、冬夜はこっそりとダンジョン探索にのめり込んでいく。 やがて来る厄災の日、そんな冬夜の好奇心が多くの人の命を救うことになるのだが、それはまだ誰も知らぬことだった。 至らぬところも多いと思いますが、よろしくお願いします!

人の才能が見えるようになりました。~いい才能は幸運な俺が育てる~

犬型大
ファンタジー
突如として変わった世界。 塔やゲートが現れて強いものが偉くてお金も稼げる世の中になった。 弱いことは才能がないことであるとみなされて、弱いことは役立たずであるとののしられる。 けれども違ったのだ。 この世の中、強い奴ほど才能がなかった。 これからの時代は本当に才能があるやつが強くなる。 見抜いて、育てる。 育てて、恩を売って、いい暮らしをする。 誰もが知らない才能を見抜け。 そしてこの世界を生き残れ。 なろう、カクヨムその他サイトでも掲載。 更新不定期

ハズレスキル【地図化(マッピング)】で追放された俺、実は未踏破ダンジョンの隠し通路やギミックを全て見通せる世界で唯一の『攻略神』でした

夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティの荷物持ちだったユキナガは、戦闘に役立たない【地図化】スキルを理由に「無能」と罵られ、追放された。 しかし、孤独の中で己のスキルと向き合った彼は、その真価に覚醒する。彼の脳内に広がるのは、モンスター、トラップ、隠し通路に至るまで、ダンジョンの全てを完璧に映し出す三次元マップだった。これは最強の『攻略神』の眼だ――。 彼はその圧倒的な情報力を武器に、同じく不遇なスキルを持つ仲間たちの才能を見出し、不可能と言われたダンジョンを次々と制覇していく。知略と分析で全てを先読みし、完璧な指示で仲間を導く『指揮官』の成り上がり譚。 一方、彼を失った勇者パーティは迷走を始める……。爽快なダンジョン攻略とカタルシス溢れる英雄譚が、今、始まる!

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

【もうダメだ!】貧乏大学生、絶望から一気に成り上がる〜もし、無属性でFランクの俺が異文明の魔道兵器を担いでダンジョンに潜ったら〜

KEINO
ファンタジー
貧乏大学生の探索者はダンジョンに潜り、全てを覆す。 ~あらすじ~ 世界に突如出現した異次元空間「ダンジョン」。 そこから産出される魔石は人類に無限のエネルギーをもたらし、アーティファクトは魔法の力を授けた。 しかし、その恩恵は平等ではなかった。 富と力はダンジョン利権を牛耳る企業と、「属性適性」という特別な才能を持つ「選ばれし者」たちに独占され、世界は新たな格差社会へと変貌していた。 そんな歪んだ現代日本で、及川翔は「無属性」という最底辺の烙印を押された青年だった。 彼には魔法の才能も、富も、未来への希望もない。 あるのは、両親を失った二年前のダンジョン氾濫で、原因不明の昏睡状態に陥った最愛の妹、美咲を救うという、ただ一つの願いだけだった。 妹を治すため、彼は最先端の「魔力生体学」を学ぶが、学費と治療費という冷酷な現実が彼の行く手を阻む。 希望と絶望の狭間で、翔に残された道はただ一つ――危険なダンジョンに潜り、泥臭く魔石を稼ぐこと。 英雄とも呼べるようなSランク探索者が脚光を浴びる華やかな世界とは裏腹に、翔は今日も一人、薄暗いダンジョンの奥へと足を踏み入れる。 これは、神に選ばれなかった「持たざる者」が、絶望的な現実にもがきながら、たった一つの希望を掴むために抗い、やがて世界の真実と向き合う、戦いの物語。 彼の「無属性」の力が、世界を揺るがす光となることを、彼はまだ知らない。 テンプレのダンジョン物を書いてみたくなり、手を出しました。 SF味が増してくるのは結構先の予定です。 スローペースですが、しっかりと世界観を楽しんでもらえる作品になってると思います。 良かったら読んでください!

どうしてこうなった道中記-サブスキルで面倒ごとだらけ-

すずめさん
ファンタジー
ある日、友達に誘われ始めたMMORPG…[アルバスクロニクルオンライン] 何の変哲も無くゲームを始めたつもりがしかし!?… たった一つのスキルのせい?…で起きる波乱万丈な冒険物語。 ※本作品はPCで編集・改行がされて居る為、スマホ・タブレットにおける 縦読みでの読書は読み難い点が出て来ると思います…それでも良いと言う方は…… ゆっくりしていってね!!! ※ 現在書き直し慣行中!!!

ダンジョン作成から始まる最強クラン

山椒
ファンタジー
ダンジョンが出現して数十年が経ち、ダンジョンがあることが日常となっていた。 そんな世界で五年前に起きた大規模魔物侵攻により心に傷を受けた青年がいた。 極力誰とも関わりを持たずにいた彼の住んでいる部屋に寝ている間にダンジョンが出現し、彼はそこに落ちた。 そのダンジョンは他に確認されていない自作するダンジョンであった。 ダンジョンとモンスターにトラウマを抱えつつもダンジョン作成を始めていく。 ただそのダンジョンは特別性であった。 ダンジョンが彼を、彼の大事な人を強くするダンジョンであった。

ダンジョン学園サブカル同好会の日常

くずもち
ファンタジー
ダンジョンを攻略する人材を育成する学校、竜桜学園に入学した主人公綿貫 鐘太郎(ワタヌキ カネタロウ)はサブカル同好会に所属し、気の合う仲間達とまったりと平和な日常を過ごしていた。しかしそんな心地のいい時間は長くは続かなかった。 まったく貢献度のない同好会が部室を持っているのはどうなのか?と生徒会から同好会解散を打診されたのだ。 しかしそれは困るワタヌキ達は部室と同好会を守るため、ある条件を持ちかけた。 一週間以内に学園のため、学園に貢献できる成果を提出することになったワタヌキは秘策として同好会のメンバーに彼の秘密を打ちあけることにした。

処理中です...