ダンマス(異端者)

AN@RCHY

文字の大きさ
1,775 / 2,518

第1775話 厄介事

しおりを挟む
 テトたちを呼び出してから、数日が経った。こいつらの行動パターンが分かってきた。

 基本的には、ちょっと前までのダマの立ち位置が近いだろう。最近は護衛以外では自由にしているダマたちだが、テトたちに仕事を教えるために付きっきりである。

 今、庁舎に向かって歩いているのだが、色々な人に声をかけられる。会いに行けるアイドルならぬ、よく会える領主は街の人にフレンドリーに接してもらえている。

 度が過ぎた対応をすると、ダマたちが怒るので今のくらいの対応がベストだと、街の人たちが理解して声をかけてくれているようだ。

 庁舎に向かって階段を上がっていると、学校エリアで子どもたちに捕まった。

 小さいダマも人形みたいで街の人に人気があるのだが、大きな毛玉のランは特に、子どもたちから絶大な人気を集めている。ディストピアには、魔獣の猫も放し飼いにしているし、人造ゴーレムの猫型も放しているので、猫が好きな人が多いのだ。

 そんな猫が大きな姿で現れれば、子どもたちが飛び付いても仕方がないだろう。

 猫といっても身体の大きな魔物なので、ステータスは高いため子どもたちが飛び付いても、ビーチボールをぶつけられた程度の衝撃しか感じていないため、怒ることもなく子どもたちの相手をしてくれるしな。人気になるのも頷ける。

 ライの方も人気はあるのだが、ランがどちらかというと男の子に人気があるのだが、ライは女の子に人気がある。猫としては大きいけど、抱き付くにはちょうどいいので、女の子に人気なようだ。娘たちもよく抱き付いているしな。

 ダマ、人気が取られたからって拗ねるな。俺が撫でてやるからさ。よしよし、ここがええのか? 耳の後ろをかいてやると、目を細めている。追い討ちで顎のしたもやってやろう。

 ランが来たことによって、俺の執務室は少し手狭になってしまったので、ダンジョンマスターの能力を使って、建物を少し高くしている。

 先日までは、俺の執務室は職員たちと同じフロアにあったのだが、改装後は最上階のフロア全体が俺専用になっている。階段の側に秘書が詰めている部屋があり、その先が大きな部屋になっており、俺が仕事をする空間だ。

 グリエルやガリアの執務室は、階段のすぐしたにあるので、呼べば1分もあればこれる距離だ。前みたいに、呼んですぐ来てもらえるように、同じフロアに執務室を作ろうとしたが、職員たちと距離が離れると仕事の効率が下がるので拒否されてしまった。

 全てが俺の都合でどうにでもできる訳じゃないので、しょうがないよな。グリエルたちの執務室は、もともと俺の執務室があったところなので、無駄にハイテクな空間投影などをつかえるから、俺が行っても問題ないしな。

 それに、俺に対するグリエルやガリアの立ち位置は、今は妻たちに引き継がれているので、近くに自分たちがいる必要がないと考えているようだ。

 大きな執務室があるのだが、あまりにも広すぎるので、俺は執務室のいっかくに本棚やロッカー等を置いて、20畳ほどの空間を作って妻たちと仕事をしている。

 もちろん広すぎる執務室も使えるように、色々準備しているので話し合い等をするときは、使えるようにしている。まぁ、大半は従魔たち運動スペースになっているけどね。

 クリエイトゴーレムで、下の階に足音が響かないように処理している。あ、日の当たる窓の近くには、テトたち専用のクッションが置かれている。運動をした後にあそこで休むのだ。ストームキャットは、自分お腹の毛の手入れをする場所でもある。

 今は、ダマを呼んで胡座の上に乗せ、モフりながら妻たちが、仕分けしてくれた報告書を読んでいる。

 いつもある報告書ばかりだな。マンネリ化している報告書だが、しっかりと隅々まで読んでいく。ありきたりな報告書や日報などは、読む人間が重要だと思っている部分だけを読んでしまう、ということがあるそうだ。

 意識的に読んでいればそんなことはないだろうが、時間に追われていたり、忙しかったりするときやマンネリ化しているときに多いのだとか。

 俺の仕事はこれしかないのだから、マンネリ化なんて言ってはいけないな。気を引き締めないと!

 報告書を読んでいると、飛び入りで早急に判断してもらいたい案件として、一つだけ緊急マークの付いた報告書が上がってきた。

 緊急ということは、ディストピアの上層部全員に届いていることになる。妻たちにも届いていることになる。チラッと今日のお供の妻たちを見る。シュリとマリアが険しい顔をしていた。

 ムムム? 俺が読む前に既に読んでいたようで、内容が拙いのだろう。

 俺も読んでみよう。

 ふむふむ…………確かにこれは、問題だな。二人の顔が険しくなるのも仕方がないかな。

 要約すれば、勇者が俺の商会に保護を求めてきたそうだ。

 勇者ね……関わってきた勇者は十中八九面倒を起こしてるからな。関わった勇者で面倒事じゃなかったのって、綾乃だけだもんな。いや待てよ……綾乃も面倒といえば面倒だったな。そう考えると全員か?

 そして助けを求めてきたのは、フレデリクの支店なのだとか。聖国から逃げ出して、小国郡を抜けてフレデリクまで来たそうだ。抜けてきた小国郡にも、支店はあったんだけどなんでフレデリクだったんだろうか?

 妻たちも、フレデリクで助けを求めた理由が気になるようだった。

 俺たちが危惧しているのは、聖国の上層部は俺がダンジョンマスターだと知っている。勇者がダンジョンマスターに対する切り札だということも知っているはずだ。

 教皇が逆らうとは思えないが、あの腐った宗教なら上層部は欲まみれだし、俺を排除してミューズや俺の支配下にある街を、手中におさめることを考えてもおかしくない。

 本当に助けを求めてきているのかもしれない……

 そう考えると、どうしていいのか判断に迷う。

 部屋の外から階段を駆け上がってくる足音が聞こえる。ノックもしないで、俺の執務室の扉を開けて誰かが入ってきた。

 グリエルとガリアだ。この二人も険しい顔だ。

 話し合いを始めるために、狭い部屋から出て広い空間へ。

「シュウ様、その様子だとお読みになったようですね。ゼニスさんもすぐに駆けつけるそうです。ドワーフの皆様も領主代行も、通信で集まれるようになってます」

 上層部が揃うようだ。
しおりを挟む
感想 316

あなたにおすすめの小説

現実世界にダンジョンが出現したのでフライングして最強に!

おとうふ
ファンタジー
2026年、突如として世界中にダンジョンが出現した。 ダンジョン内は無尽蔵にモンスターが湧き出し、それを倒すことでレベルが上がり、ステータスが上昇するという不思議空間だった。 過去の些細な事件のトラウマを克服できないまま、不登校の引きこもりになっていた中学2年生の橘冬夜は、好奇心から自宅近くに出現したダンジョンに真っ先に足を踏み入れた。 ダンジョンとは何なのか。なぜ出現したのか。その先に何があるのか。 世界が大混乱に陥る中、何もわからないままに、冬夜はこっそりとダンジョン探索にのめり込んでいく。 やがて来る厄災の日、そんな冬夜の好奇心が多くの人の命を救うことになるのだが、それはまだ誰も知らぬことだった。 至らぬところも多いと思いますが、よろしくお願いします!

ハズレスキル【地図化(マッピング)】で追放された俺、実は未踏破ダンジョンの隠し通路やギミックを全て見通せる世界で唯一の『攻略神』でした

夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティの荷物持ちだったユキナガは、戦闘に役立たない【地図化】スキルを理由に「無能」と罵られ、追放された。 しかし、孤独の中で己のスキルと向き合った彼は、その真価に覚醒する。彼の脳内に広がるのは、モンスター、トラップ、隠し通路に至るまで、ダンジョンの全てを完璧に映し出す三次元マップだった。これは最強の『攻略神』の眼だ――。 彼はその圧倒的な情報力を武器に、同じく不遇なスキルを持つ仲間たちの才能を見出し、不可能と言われたダンジョンを次々と制覇していく。知略と分析で全てを先読みし、完璧な指示で仲間を導く『指揮官』の成り上がり譚。 一方、彼を失った勇者パーティは迷走を始める……。爽快なダンジョン攻略とカタルシス溢れる英雄譚が、今、始まる!

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

人の才能が見えるようになりました。~いい才能は幸運な俺が育てる~

犬型大
ファンタジー
突如として変わった世界。 塔やゲートが現れて強いものが偉くてお金も稼げる世の中になった。 弱いことは才能がないことであるとみなされて、弱いことは役立たずであるとののしられる。 けれども違ったのだ。 この世の中、強い奴ほど才能がなかった。 これからの時代は本当に才能があるやつが強くなる。 見抜いて、育てる。 育てて、恩を売って、いい暮らしをする。 誰もが知らない才能を見抜け。 そしてこの世界を生き残れ。 なろう、カクヨムその他サイトでも掲載。 更新不定期

痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~

ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。 食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。 最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。 それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。 ※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。 カクヨムで先行投稿中!

どうしてこうなった道中記-サブスキルで面倒ごとだらけ-

すずめさん
ファンタジー
ある日、友達に誘われ始めたMMORPG…[アルバスクロニクルオンライン] 何の変哲も無くゲームを始めたつもりがしかし!?… たった一つのスキルのせい?…で起きる波乱万丈な冒険物語。 ※本作品はPCで編集・改行がされて居る為、スマホ・タブレットにおける 縦読みでの読書は読み難い点が出て来ると思います…それでも良いと言う方は…… ゆっくりしていってね!!! ※ 現在書き直し慣行中!!!

『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる

仙道
ファンタジー
 気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。  この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。  俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。  オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。  腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。  俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。  こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。 12/23 HOT男性向け1位

ブラック企業で心身ボロボロの社畜だった俺が少年の姿で異世界に転生!? ~鑑定スキルと無限収納を駆使して錬金術師として第二の人生を謳歌します~

楠富 つかさ
ファンタジー
 ブラック企業で働いていた小坂直人は、ある日、仕事中の過労で意識を失い、気がつくと異世界の森の中で少年の姿になっていた。しかも、【錬金術】という強力なスキルを持っており、物質を分解・合成・強化できる能力を手にしていた。  そんなナオが出会ったのは、森で冒険者として活動する巨乳の美少女・エルフィーナ(エル)。彼女は魔物討伐の依頼をこなしていたが、強敵との戦闘で深手を負ってしまう。 「やばい……これ、動けない……」  怪我人のエルを目の当たりにしたナオは、錬金術で作成していたポーションを与え彼女を助ける。 「す、すごい……ナオのおかげで助かった……!」  異世界で自由気ままに錬金術を駆使するナオと、彼に惚れた美少女冒険者エルとのスローライフ&冒険ファンタジーが今、始まる!

処理中です...