ダンマス(異端者)

AN@RCHY

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第1782話 シンラらしくない

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 椎茸は椎茸でも、天恵菇てんけいこと呼ばれる、巨大椎茸を焼いている。1つが250グラムもある大きな椎茸だ。ダンジョン農園でも発芽確率が低く、熟成加速部屋で栽培しているらしい。

 ブラウニーたちに頼まれて、色々な椎茸を召喚しているときに発見した、巨大椎茸だ。食べてみたら美味しかったようで、是非栽培しましょうといわれ、種菌を召喚している。

 種菌はドリアードが管理しているが、植物に特化した精霊でも発芽率を上げることができないようだ。ダンジョン農園では種菌を繁殖させ、菌床を熟成加速部屋に置き栽培を行っているので、時間を加速させ数を確保していると話していた。

 発芽率が低いからわざと、キノコを育てると大変な目に合う熟成加速部屋を使うとは、思ってもみなかった。菌が育つのは熟成ではないのだが、熟成加速は菌に影響があるため、今回は助かっている形だな。

 よく考えれば、味噌や醤油も発行して熟成しているのだから、同じ原理なのかね? ファンタジー世界は、たまによくわからないシステムがあるよな。

 天恵菇てんけいこの傘の上部分を炭火で焼いていく。傘の下の部分のひだから汗をかいてきたら、バターを乗せ醤油をちょっと垂らす……あたり一面に良い匂いが立ち込める。

 1つまるまる食べると、それだけでお腹いっぱいになってしまうので、ブラウニーたちに切り別けてもらい食べていく。歯ごたえも良く、ジューシーで味も濃い……控えめに言っても、美味い!

 エリンギも好きだけど、こいつも悪くないな。うまうま。

 同時に焼き始めた松茸を今度は食べてみよう。実は俺、今日初めて松茸を食べる。香りを楽しむ食材の1つだっけ? 土瓶蒸しとかにすると、いい出汁が出るんだっけ? 良く分からんが、実食だ!

「…………」

 俺は黙ってしまった。妻たちも半々で微妙な顔をしている。

 正直に言おう。普通に食べるなら天恵菇てんけいこの方が断然美味い。なんというか、俺には香りだけがいいキノコだった。匂いが嫌いな妻もいるみたいだが、俺は嫌いじゃないぞ!

 でもな、美味しいと感じない自分がいる。

 DPで同じような物を召喚しようとすると、松茸は二十DP程からだな。その代わり天恵菇てんけいこは一DPだった。松茸一本で天恵菇てんけいこが二十本召喚できる……ただ、松茸の匂いが、味も満足度も含めて天恵菇てんけいこの二十倍も価値があるとは思えなかった。

 値段が満足度に直結して、値段が倍になれば満足度も、倍になるわけではないことを知っているが、正直これは……期待外れだな。

 個人的意見なので、好きな人は自由に食べてくれ。俺は、カットされた天恵菇てんけいこを食べさせてもらうよ。でも、夕食には土瓶蒸しはよろしく、一度飲んでみたいからね。

 実食会は終わりにして、帰ろうか。夕食まではまだ時間があるから、今日は先にお風呂へ入ろうか。

 俺は、シンラとの約束で、男風呂でシンラと2人で入ることにした。ニコだけはこっちに来てくれ。他の従魔は妻たちに任せる。よろしくな!

 こんなこと言わなくてもあいつらは、俺の方じゃなくて子どもたちの方に行っちまうんだけどな。

 さて、シンラよ、風呂に行くぞ!

 抱っこしようとしたら嫌がり、小脇に抱えてほしそうに訴えてきた……え? 何でそんな持たれ方をしたいんだ? かまわず抱っこをしようとすると泣くため、仕方がなく小脇に抱えると、めっちゃ喜び始めた。お前はこんな扱いでいいのか?

 そんな疑問を覚えながら、シンラを脇に抱えて風呂へ向かう。向かう間も喜びながら、手足をバタバタさせているので、正直危なっかしい。足元にニコがいなかったら、怖くてできねえな。

 服を脱がせてやると、そのままお風呂に突入しそうな勢いだったので、捕まえてから体を洗ってやる。俺が使っているナイロン製の少し硬めの垢すりだと、子どもたちの肌を痛めてしまうので、赤ちゃん用の手袋型垢すりで体を洗っていく。

 いつになくシンラが元気なので、いつものスポンジではどうにも危なっかしいのだ。手袋型を慌てて召喚した。いつもなら、プラムやシオンに使う奴なのだが……本当に今日は何があったんだ?

 逃げないようにニコにも協力してもらい、全身を洗っていく……あっ! 先に体を洗ってしまった。いつもは髪からなんだけどな。このまま風呂に飛び込みそうな勢いだけど、髪の毛を洗うまではダメだぞ!

 体を洗ったら湯舟! の思考のようで、俺の手からなんとか逃れて、湯舟へ向かおうとするシンラ。それを何とか食い止める俺。そしてニコは……俺の味方だった。シンラの全身を包み顔だけ出している状態だ。

 今のうちに洗ってしまおう! ニコに捕食されているように見えなくもないが、ニコが子どもたちにそんなことするわけがないのは知っている。ササッと髪の毛を洗ってやり、湯舟へ入らせてやる。

 俺も見ながらだが、ニコがシンラを体に座らせて、湯舟で面倒を看てくれているので、俺もその間に体を洗ってしまう。

 相変わらず、オッサン座りの好きな子どもだな。最近は、貫禄が出てきた気がする。

 俺が好きなのは熱めのお湯なのだが、子どもたちがいると熱いお湯には入れない。だけど今日は、シンラの好きな温度のお湯をタライに張り、それを湯舟へ浮かべニコが補助しているので、湯舟のお湯の温度は、俺の適温である!

 個人的には、シンラにサウナも好きになってもらいたいところである。もっと大きくなったら、お父さんと一緒にサウナに入らないか? シンラはそんなことに興味はない! と言わんばかりに、ニコの上でくつろいでる。

 ニコは芸が細かいな。背もたれだけじゃなく、首と頭の補助までしっかりと行っている。そのせいで、より一層シンラがオッサンっぽく見えるのだが……

 シンラが満足するまで入浴したので出るのだが、かなりダレ切っている。あれだけ弛緩してれば、こんな風になっても仕方がないか?

 着替えさせてキノコの話をすると、目が光り息を吹き返したかの如く復活して、高速ハイハイで出ていってしまった。歩けるようになったのに、ハイハイの方がまだ早いのだ。ニコ、頼んだぞ。

 俺も慌てて着替えてシンラを追うが、既に食堂へ着いており定位置に座っていた。
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