ダンマス(異端者)

AN@RCHY

文字の大きさ
1,831 / 2,518

第1831話 不測の事態

しおりを挟む
 爺ドワーフどもに罰を言い渡した次の日、庁舎へ行く前に様子を見にゴーストタウンの領主館へ向かっている。昨日の今日で酒は飲んでいないと思うが、アイツラノコトだから……何をしでかすか分からんからな。

「あ~、今日は昨日の爺様方の様子を見に来ただけだから、気にしなくていいよ。むしろ仕事がはかどらなくて、残業とかになると困るから、仕事を優先してくれ。いや、俺を接待するのが仕事って……俺は接待されなくてもいいから、そんなことで怒らない怒らない。仕事が遅れる方が怒るかもな」

 そう言うと、やっと自分の仕事へ戻ってくれた。どこに行ってもこんな感じなのが面倒だな。グリエルたちに仕事に入れるなって何度も言ってるのに、一向に無くならないんだよね。グリエルたちの指示が届いていないのか、指示に従っていないのか……

「おぉ~、今日はしっかりと執務室にいるな。爺共、しっかり仕事しているか? って、おい! なんでそんなにやつれてるんだ? 昨日の今日でこんな風にはならんだろ……ブラウニー何があった?」

 お目付け役のブラウニーに聞いてみると、昨日の夕食時に水だと言って、アルコール度数30度のお酒を飲もうとして、ブラウニーの逆鱗に触れたらしい。

 ドワーフは、アルコール度数40度以下は水だと言って、カパカパ飲むのでその認識で飲もうとしていたらしい。そのため、ブラウニーに見つかって、水と言い張ったドワーフたちの食事が、精進料理になったらしい。

 肉と味の濃い食事を好むドワーフに、精進料理か……それでも1日、いや半日でこんな風になる物か?

 もうね、別人って言うレベルで、体が細くなってたわ。ここで働いている老ドワーフたちは、ずんぐりむっくりでビア樽体系で筋肉の塊なのだが、何かね筋肉ダルマからちょっとマッチョに変わっていたのだ。

 どっちにしろ筋肉ではあるのだが、一回りくらい身体が小さく見えたのだ。食事の所為か? それともアルコールが無いからか?

「ブラウニー、お前たちから見て、減刑してもいいと思える仕事っぷりをしたら、お前たちの判断で罰の期間を短くしていいぞ。だけど、昨日みたいにアルコールが入った物を水と言って飲もうとしたら、ヴローツマインに叩き返すぞ。リンドの弟に仕事をしませんでした、って張り紙してな」

 この老ドワーフたちは、領主の仕事をするという契約で、俺が中級の火精霊を住まわせた精霊炉を貸し出しているのだ。それが使いたくて選抜されたドワーフたちなのだが、それが仕事をしないって張り紙されて送り返したら、残った老ドワーフたちにボコボコにされるだろうな。

 さすがに、状況を理解した老ドワーフたちは、仕事のペースを上げた。

 よし、これで問題なさそうだな。ブラウニーたちに後を任せて庁舎へ向かう。

 庁舎へ着くと、グリエルやガリアはすでに仕事を始めていた。本当に仕事ばっかだな……強制的に休みにさせて、旅行に行かせたけど、あれって評価どうだったんだろう? 喜んでいる職員が多かったって言ってたけど、実際どうだったんだろうか?

 妻たちが仕分けを始めたので、秘書たちがいる前室に話を聞きに行ってみる。

「あ~あれですね。皆さん、本当に喜んでいましたよ。皆さん、仕事が嫌いってわけはなく、むしろ働けば働くだけ評価されるので、喜んでいる人ばかりです。そのせいで、シュウ様の残業をゼロに……という施策が上手くいっていませんが……」

 強制休暇は、好評だったようだ。今度からはしっかりと、休みを取るようにさせないとな。有給休暇って言っても、理解してもらえてないからな。この世界は、商会のトップや幹部でもなければ、毎日働くのがデフォルトみたいだからな……

 仕事は好き好んでやってくれているのは嬉しいが、そのせいで残業がゼロにならないって……本末転倒か? その前に、残業しても仕事が終わっていないって言うのは……仕事が多すぎるってことか?

「気になったんだけど、残業しても仕事が終わらないって、仕事量に対して職員の数が少ないのか?」

「いえ……そうことではなくて、仕事ではあるのですが、優先しなくても時間がある時にすればいい仕事を、残業して行っている感じなんです。それも、自分の時間を使って勝手にやっているという体で、残業しているが残業をしていない感じになっているんです……」

 自分勝手にサービス残業をしている感じか? いや、サービス残業って、どういう意味だっけ? お金にならない残業を示すならその通りだけど、会社が強要しているって言う条件が付くと、この件はサービス残業じゃなくなるな。

 どうでもいいことを考えながら……

「じゃぁさ、その後回しにしてもいい仕事で残業している人を、その仕事に専念させたら、他の仕事が滞るかな?」

「えっと……6割くらいの職員がやっていますので、全員を回すとなると、メインの仕事が追い付きません」

 答え辛そうに秘書の子がこたえてくれた。確かに、6割も俺の施策を無視しているとなると……言い辛いよな。

「了解。じゃぁ、メイン……通常の仕事が回る人数を残して、後回しにしている仕事に人を投入するのはどうだ?」

「それなら問題ないですが、それでも残って仕事をしようとする人は出ると思いますが……」

「じゃぁ、面倒だけど、残業じゃなくて庁舎に指定された時間以降も残る場合は、残る理由を出してもらうって言うのはどうだ?」

「それでしたら、全員で通常の仕事を終わらせてから、全員で残りの時間に後回しの仕事をさせても、同じなのではないでしょうか?」

 ……言われてみれば、専属で仕事させる必要ないよな。

「なら、今日から『就業から30分以降も庁舎に残る場合は、残る理由を先に提出するように!』って通達出してくれ。これなら、残る人がどんな仕事しているか分かるし、もし回数が多いなら人が足りてないってことだよな?」

「そうですね。文言はグリエル様たちと相談して、お昼前には通達を出します」

「よろしく!」

 妻たちが仕分けをしている書類で俺が読まないといけないのは……これだな。いつも通りの報告書だな。特に変わりはなさそうだ。

 のんびりとしていると、グリエルが執務室に入ってきた。何かあったのか?

「シュウ様、緊急ではないですが、可及的速やかに処理した方が良い案件が上がってきました。ゴーストタウンで問題が発生して、どう対応するのか見当が必要です」

 あの爺共、何かしたのか?

「帝国から来た冒険者グループなのですが、シングルではないのですが、シングルと同程度の力があるグループが、ゴーストタウンで専属で働いているこちらの冒険者5人を捕らえ人質として、グレッグへの地下通路を通ってグレッグへ向かっています」

 はぁ? 人質? グレッグにすでに移動を開始している? 何が起こってんだ?
しおりを挟む
感想 316

あなたにおすすめの小説

現実世界にダンジョンが出現したのでフライングして最強に!

おとうふ
ファンタジー
2026年、突如として世界中にダンジョンが出現した。 ダンジョン内は無尽蔵にモンスターが湧き出し、それを倒すことでレベルが上がり、ステータスが上昇するという不思議空間だった。 過去の些細な事件のトラウマを克服できないまま、不登校の引きこもりになっていた中学2年生の橘冬夜は、好奇心から自宅近くに出現したダンジョンに真っ先に足を踏み入れた。 ダンジョンとは何なのか。なぜ出現したのか。その先に何があるのか。 世界が大混乱に陥る中、何もわからないままに、冬夜はこっそりとダンジョン探索にのめり込んでいく。 やがて来る厄災の日、そんな冬夜の好奇心が多くの人の命を救うことになるのだが、それはまだ誰も知らぬことだった。 至らぬところも多いと思いますが、よろしくお願いします!

人の才能が見えるようになりました。~いい才能は幸運な俺が育てる~

犬型大
ファンタジー
突如として変わった世界。 塔やゲートが現れて強いものが偉くてお金も稼げる世の中になった。 弱いことは才能がないことであるとみなされて、弱いことは役立たずであるとののしられる。 けれども違ったのだ。 この世の中、強い奴ほど才能がなかった。 これからの時代は本当に才能があるやつが強くなる。 見抜いて、育てる。 育てて、恩を売って、いい暮らしをする。 誰もが知らない才能を見抜け。 そしてこの世界を生き残れ。 なろう、カクヨムその他サイトでも掲載。 更新不定期

ハズレスキル【地図化(マッピング)】で追放された俺、実は未踏破ダンジョンの隠し通路やギミックを全て見通せる世界で唯一の『攻略神』でした

夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティの荷物持ちだったユキナガは、戦闘に役立たない【地図化】スキルを理由に「無能」と罵られ、追放された。 しかし、孤独の中で己のスキルと向き合った彼は、その真価に覚醒する。彼の脳内に広がるのは、モンスター、トラップ、隠し通路に至るまで、ダンジョンの全てを完璧に映し出す三次元マップだった。これは最強の『攻略神』の眼だ――。 彼はその圧倒的な情報力を武器に、同じく不遇なスキルを持つ仲間たちの才能を見出し、不可能と言われたダンジョンを次々と制覇していく。知略と分析で全てを先読みし、完璧な指示で仲間を導く『指揮官』の成り上がり譚。 一方、彼を失った勇者パーティは迷走を始める……。爽快なダンジョン攻略とカタルシス溢れる英雄譚が、今、始まる!

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

【もうダメだ!】貧乏大学生、絶望から一気に成り上がる〜もし、無属性でFランクの俺が異文明の魔道兵器を担いでダンジョンに潜ったら〜

KEINO
ファンタジー
貧乏大学生の探索者はダンジョンに潜り、全てを覆す。 ~あらすじ~ 世界に突如出現した異次元空間「ダンジョン」。 そこから産出される魔石は人類に無限のエネルギーをもたらし、アーティファクトは魔法の力を授けた。 しかし、その恩恵は平等ではなかった。 富と力はダンジョン利権を牛耳る企業と、「属性適性」という特別な才能を持つ「選ばれし者」たちに独占され、世界は新たな格差社会へと変貌していた。 そんな歪んだ現代日本で、及川翔は「無属性」という最底辺の烙印を押された青年だった。 彼には魔法の才能も、富も、未来への希望もない。 あるのは、両親を失った二年前のダンジョン氾濫で、原因不明の昏睡状態に陥った最愛の妹、美咲を救うという、ただ一つの願いだけだった。 妹を治すため、彼は最先端の「魔力生体学」を学ぶが、学費と治療費という冷酷な現実が彼の行く手を阻む。 希望と絶望の狭間で、翔に残された道はただ一つ――危険なダンジョンに潜り、泥臭く魔石を稼ぐこと。 英雄とも呼べるようなSランク探索者が脚光を浴びる華やかな世界とは裏腹に、翔は今日も一人、薄暗いダンジョンの奥へと足を踏み入れる。 これは、神に選ばれなかった「持たざる者」が、絶望的な現実にもがきながら、たった一つの希望を掴むために抗い、やがて世界の真実と向き合う、戦いの物語。 彼の「無属性」の力が、世界を揺るがす光となることを、彼はまだ知らない。 テンプレのダンジョン物を書いてみたくなり、手を出しました。 SF味が増してくるのは結構先の予定です。 スローペースですが、しっかりと世界観を楽しんでもらえる作品になってると思います。 良かったら読んでください!

どうしてこうなった道中記-サブスキルで面倒ごとだらけ-

すずめさん
ファンタジー
ある日、友達に誘われ始めたMMORPG…[アルバスクロニクルオンライン] 何の変哲も無くゲームを始めたつもりがしかし!?… たった一つのスキルのせい?…で起きる波乱万丈な冒険物語。 ※本作品はPCで編集・改行がされて居る為、スマホ・タブレットにおける 縦読みでの読書は読み難い点が出て来ると思います…それでも良いと言う方は…… ゆっくりしていってね!!! ※ 現在書き直し慣行中!!!

ダンジョン作成から始まる最強クラン

山椒
ファンタジー
ダンジョンが出現して数十年が経ち、ダンジョンがあることが日常となっていた。 そんな世界で五年前に起きた大規模魔物侵攻により心に傷を受けた青年がいた。 極力誰とも関わりを持たずにいた彼の住んでいる部屋に寝ている間にダンジョンが出現し、彼はそこに落ちた。 そのダンジョンは他に確認されていない自作するダンジョンであった。 ダンジョンとモンスターにトラウマを抱えつつもダンジョン作成を始めていく。 ただそのダンジョンは特別性であった。 ダンジョンが彼を、彼の大事な人を強くするダンジョンであった。

ダンジョン学園サブカル同好会の日常

くずもち
ファンタジー
ダンジョンを攻略する人材を育成する学校、竜桜学園に入学した主人公綿貫 鐘太郎(ワタヌキ カネタロウ)はサブカル同好会に所属し、気の合う仲間達とまったりと平和な日常を過ごしていた。しかしそんな心地のいい時間は長くは続かなかった。 まったく貢献度のない同好会が部室を持っているのはどうなのか?と生徒会から同好会解散を打診されたのだ。 しかしそれは困るワタヌキ達は部室と同好会を守るため、ある条件を持ちかけた。 一週間以内に学園のため、学園に貢献できる成果を提出することになったワタヌキは秘策として同好会のメンバーに彼の秘密を打ちあけることにした。

処理中です...