ダンマス(異端者)

AN@RCHY

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第1945話 判明する事実

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 朝起きて一番初めに確認したのは、昨日の強敵を殺せたのかどうかだ。

「それでござるが、何かの気配を少しでも感じると、すぐに起きてしまったでござる。寝ているのに、ほとんど寝ていない状態とか、本当に良く分からないでござった」

 漫画やアニメでよくあるあれか? 少しでも異変があると、一気にトップギアに入る達人みたいな人間がいるんだよな。あれって、実際にできる物なのか?

「それってすごいわね。まるで達人みたいじゃん!」

 俺の考えと同じことを綾乃が言った。でもさ、本当の達人ってそう言うことじゃない気がするんだよな。俺も勘違いしているけどな。俺たちの知識が漫画やアニメが中心だから、偏っているというより間違ってるイメージが多いんだよな。

 達人って、何かの分野を極めた人を指す言葉なので、達人=気配察知が出来たり、寝ていても異変を感じてトップギアにいれられるわけではない。武芸の達人なら、いるかもしれないがそう簡単な話でもないだろう。

「動向に注意して、俺たちに接近するようなら報告してくれ」

「別に、チャンスがあれば殺してしまっても、構わんのでござろう?」

「そのネタはいらんな。無駄なことはしないで、監視だけでもいいよ。殺したいなら殺してもいいけど、話を聞く限り倒せなさそうだから、こっちに来ないなら放置でもいいかな」

「物量で押せば殺せそうでござるが、それはしなくてもいいのでござるか?」

「そうだな。損失無く倒せるかもしれないけど、もしかしたら多大な損害が出るかもしれないから、監視だけでいいよ。サイレントアサシンは、耐久力が驚くほど低いからな。相性が悪い気がするんだよ。

 勇者やその仲間は問答無用で攻撃できるけど、本来は攻撃する際に具現化するときに反撃するしかないんだよな。あのギリースーツは、それが簡単にできる気がするから、物量もあまり意味をなさないかもしれないんだよな」

 不意打ちが持ち味のサイレントアサシンは、存在がバレると一気に不利になるのだ。一回勝負の奇襲で倒せないのであれば、無意味に命を散らせることになる。チャンスがあればとも思うが、気配を察知されているのであれば、無駄に突っ込ませるわけにはいかない。

 いざという時は命を懸けてもらうが、今は無理に命を捨てさせる必要は無いので、温存してもらうことにした。

「今日は……ギリースーツの奴を避けるように、山の反対側へ向かおうか。このまま北へ向かえば、山を東回りで移動できるから、そっちに人がいないか探そう」

「それにしても、殺伐とした感じになったわね。人を探すって言うのが、生存者と力を合わせてって言うのが王道だと思うけど、自分たちが帰れるか実験のために、殺す人間を集めてるって言うのがね……」

 俺もそう思わなくもないが、帰る方法が分からないので、実験するしかないのだ。綾乃には負担を強いることになるけど、やらなければ分からないので、我慢してほしい。

 殺した数で願いが叶えられるなら、俺が敵を鏖殺するのだが、俺が一番に帰ってしまうのは避けたいのだ。何度でもいうが、俺はウルを置いて元の世界に戻るという選択肢はないのだ!

 気を引き締めて、5日目の探索へ出る。

 その日は不意打ちされることも無く、強敵と出会うことも無く、淡々と作業のように人間を捕まえて、自白剤を使い情報を抜き出してから、拠点へ運んでもらった。問題というか、違うことがあったとすれば、俺たちみたいに協力している人間のグループが、複数あった事だろう。

 死にたくない! とか言われたが話し合いが成立するか試したところ、こっちを殺す気で襲ってきたのに、殺さないでくれ……は無いだろう。殺すつもりは無かったとか言うが、敵意を見せた時点でアウトだ。数に物を言わせてウンタラカンタラとか言ってたしな。

 その日で、綾乃の殺した数が50人を超える。数日で、50人を超える人間を殺すって、地球で言えば戦術兵器を使わないと1人で殺すのは無理じゃないか?

「綾乃殿、何かあるとすれば、50人か100人だと考えているでござるが、準備は問題ないでござるか?」

「ちょっと怖いけど、私が適任なんだから、気にする必要はないわ。シュウにもアンタにも、色々借りがあるからね。グダグダ考える前に、やってしまいましょう」

 綾乃が数えて50人目を殺した瞬間に、綾乃の動きが止まった。

 俺たちは近付いていいのか分からず、距離を取った状態で綾乃を観察することにした。多少動いてはいるのだが、俺たちの声に反応する様子がない。まるで聞こえていないような状態だ。それに、何かしゃべっているのだが、俺たちに声が届くことは無かった。

 10分ほどすると、綾乃がふと目が覚めたようにこちらを見た。

「っと、心配させてごめんね。神から話があって、色々質問できたから必要な情報を聞いておいたわ」

「それだと、殺すだけじゃ帰れないってことか?」

「ちょっと違うわね。順を追って話すね」

 綾乃の話では、この世界は俺たちの予想通り、神たちの娯楽を兼ねた新しいゲーム盤の1つらしい。実験に近い事をしているらしい。強化した地球の人間が、レベルを上げた人間に勝てるのかというものだったらしい。

 実験の成功は、半々だったようだ。それは、イレギュラーともいえる俺たちがゲーム盤に入ってきてしまったからだ。それまでは、地球の人間の方が優勢だったのだが、俺たちのせいですべてがひっくり返されたようだ。それでも条件の1つである50人を、1人で殺すことは出来なかったらしい。

 実験として停滞していたので、ちょうどいいカンフル剤になったと喜んでいたようだ。今日捕らえた人間たちが、停滞の原因になっていたので殺してくれて助かったってさ。

 何を持って停滞としたのか……この世界に入れる人間がMAXで200人なんだとか。生きるためだけにこの世界で過ごす奴は、いらないんだとさ。回転を良くしたいから、さっさと死んでほしいらしい。勝手に送り込んで、勝手な言い分だな。

 地球からの人間に、同じ奴がいたことについては、地球の人間をそのまま送り込んでも相手にならないので、改造をして送り出しているのだと。その際に完全複製を行い、身体強化を行ったらしい。元になる人間は何も知らされずに、複製されているらしい。

 忍者の格好で巫女が関わっている奴は、偽の情報を埋め込まれて送り出されているとか。

 そして最後に綾乃が爆弾を落とした。

「どうも、50人を殺すと1つだけお願いを聞いてくれるらしいわよ。今回は、情報を聞くために使ったけど、ダンジョンマスターと勇者は、元の世界に帰れるみたいよ。誰かが達成しても問題ないみたいね」

 綾乃は、帰ることを選ばずに、情報を引き出したようだ。

「殺すのは、誰でもいいのか。それなら、綾乃にこれ以上殺しをさせる必要もなさそうで、よかった。後は俺たちがるから、ゆっくりしていていいぞ」

 いい情報をありがと、いちいち連れて帰らなくてもいいのは、助かるな。明日からは、ライガと手分けをして、殺していくだけで良さそうだな。
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