ダンマス(異端者)

AN@RCHY

文字の大きさ
1,947 / 2,518

第1947話 数を稼ぐ

しおりを挟む
 7日目は、昨日と同じように行動を開始する。遭遇する数は減ったが、1桁後半を排除することができた。

「昨日よりショボいでござるな。倒されてすぐではなく、ある程度まとめて呼び出されていると思うでござるから、この数が普通なのかもしれないでござるね」

「昨日は、まとまって行動している人間がいたから、数が減っても仕方がないんじゃないか?」

「そうですね。複数人で集まっていると奇襲するのが面倒なので、数は少なくなりますが1人でいてくれた方が、楽でいいですね」

 ライガの意見に思わず首を縦に振ってしまう。

 倒すのが楽になったのは、相手がこの世界の事を分かっていないのも影響しているが、1人でいるから周りに気を配る必要がないのが一番影響していると思う。

 色々気になることはあるのだが、今一番心配なのがウルなんだよな。俺たちが養子にするまで、かなりの扱いを受けていたが、養子になってからは年相応とは言い難いが、ミーシャたちと仲良く育ってくれていたのだ。

 フラッシュバックしているわけではないが、心細いのか寝る時は俺にしがみついていないと寝れないのだ。年を考えれば、一緒に寝たいというのは普通なのだと思うが、ディストピアにいる時のことを考えると、心配になってしまう。

 お姉ちゃんとして、気を張りすぎていたのかな? 綾乃と一緒に送り返す時に、様子次第ではシルクちゃんに記憶封印の措置を取ってもらう必要があるかもな。そこまで弱い子ではないが、しがみついて寝ることを考えると、心配になってしまうのだ。

 帰す前に綾乃に、妻たちへ伝言を頼もう。

 できる限り、ウルに負担をかけたくないので、明日は全力で移動することにした。とにかく広い範囲を索敵して、ウルたち3人のために明日帰す勢いで狩りつくしてやる。

 今日はお風呂も一緒に入りたいようで、お願いされたので一緒に入ることにした。綾乃も心配して俺に声をかけてきたので、後で帰る前に話があると伝えておく。

 昨日はそうでもなかったが、今日は今まで以上に甘えたがるな。ウルの心の状態がとても気になる……

 ディストピアにいれば、デレデレとだらしない顔をして、妻たちに大ヒンシュクを受けることになっただろう。でも、この状況じゃ喜べないな。満足するまで甘えさせて寝るのを待った。服をギュッとつかみ、放すつもりは無いと言わんばかりの仕草だな。


 朝まで起きることなく、同じ体勢で寝ていたようだな。体がバキバキだ。ウルはにへらと笑って、枕にしている俺の腕に顔を擦り付けている。ミーシャたちといる時とは大違いだな。

 早くディストピアに帰してやるからな……

 頭を撫でていると、目を覚ました。

「お父さん、おはよう。ご飯の準備しないと!」

 まだ早いからゆっくりしていても問題ないと、ウルの行動を止める。どうも昨日の俺たちの行動で、自分だけがゆっくり寝ていたのに悩んでいたらしい。子どもなんだから、そんなこと気にしなくてもいいのに……

 できることをしなければならないと、責任感を持つのはいいけど、今は素直に甘えてほしいことを伝える。昼間は一緒にいてあげられないから、一緒にいる時くらいはのんびりしてほしかった。

 ウルがこんなに悩んでいるのに、ロジーは全く関係ないと言わんばかりに、食っちゃ寝を繰り返しているぞ。あの妖精はもう少し、自分にできることをしてほしいところだ。魔法が使えるんだからさ!

 今日の予定をウルに伝えてから、夜に食べたい料理をリクエストしておいた。これで、少しは気が紛れてくれるといいな。

「バザール、今日はペースを上げるから、そっちも数を稼いでくれ。後半分程だけど、今日終わらせるつもりで頑張るぞ」

 ライガもバザールも、ウルの様子がいつもと違うことに気付いており、俺と同じように気合を入れてくれた。昨日が気合が入っていないわけではないが、心配なので早くディストピアに帰してあげたいのだ。

 散開する際のライガの勢いがヤバかった。俺も気合を入れて移動を開始したのに、それ以上の速度で昨日と同じコースを走っていったのだ。バザールの操るサイレントアサシンから苦笑が漏れていた。

 山の中を移動していると、昨日は無かった煙が見える。木の隙間からだったので、気付くのが遅れてしまったな。明るくなって煙を出すのは、命とりだけど何を考えているのやら。

 距離にして1キロメートルを慎重に進み、3分かからずに到着する。

 おや? 俺より先に煙に気付いて、ここに来た奴がいるな。火を焚いていたのがダンジョンマスターで、襲ったのが鑑定で分からないから、地球から来た人間だろう。

 ダンジョンマスターは、両手両足を縛られ動けないようにされている。何やら尋問をしているようだが、声は聞き取れなかった。

 そう言えば、俺たちは条件を満たせば帰れることが分かったが、この世界で死んだ場合はどうなるんだ? 地球の人間は複製体らしいから帰る必要は無いけど、俺たちは生身の肉体ってことだよな。ここでの死は、本当の死なのかね?

 ふと、そんなことを考えてしまったが、だからといって殺さないという選択肢は無いので、考えることを止めた。

 今回は相手の警戒度が高いので、思ったより距離が詰められないんだよな……木の上なんて見つかりやすいので、さすがに下りるべきかな。少し離れてから木から下り、2人に再度近付く。

 あ~、ここにきて第三の気配がする。こいつも俺と同じように、煙につられて確認しにきたのかね。獲物を取られるのは勘弁してもらいたい。多少強引にでも、殺しておくか。尋問しているやつをなんとかできれば、もう片方は縛られてるからな。

 およそ30メートルの距離。投げナイフを3本取り出し、2本を立て続けに投げる。投げ終わると同時に、俺も突撃する。

 ナイフの気配に気付いた敵が、飛ぶように大きく距離を取った。着地先に向かって、準備しておいた最後の投げナイフを投擲する。

 敵が腰から抜いたナイフで、俺の投げナイフを弾いた。

 さすがにやられるほど、甘い相手ではないか。でも、動きが少し止まったな。距離をさらに詰め、腰から下げていた刀で抜刀術を使い、一太刀で切り伏せる。

 最速の技ともいわれる抜刀術を、ナイフで防ごうとして軌道上に置き、左手で押し込まれないように押さえていたナイフごと切り裂いた。

 武器の性能の差だな。

 助かったと思ったのか、ダンジョンマスターが助けてほしいとお願いしてきたが、心臓に刀を突きさし止めを刺す。

 こちらの様子を見ていた第三の人間は、力量差を感じたのかこの場から遠ざかっているな……ちょうど進行方向だし、確認しておくか。
しおりを挟む
感想 316

あなたにおすすめの小説

現実世界にダンジョンが出現したのでフライングして最強に!

おとうふ
ファンタジー
2026年、突如として世界中にダンジョンが出現した。 ダンジョン内は無尽蔵にモンスターが湧き出し、それを倒すことでレベルが上がり、ステータスが上昇するという不思議空間だった。 過去の些細な事件のトラウマを克服できないまま、不登校の引きこもりになっていた中学2年生の橘冬夜は、好奇心から自宅近くに出現したダンジョンに真っ先に足を踏み入れた。 ダンジョンとは何なのか。なぜ出現したのか。その先に何があるのか。 世界が大混乱に陥る中、何もわからないままに、冬夜はこっそりとダンジョン探索にのめり込んでいく。 やがて来る厄災の日、そんな冬夜の好奇心が多くの人の命を救うことになるのだが、それはまだ誰も知らぬことだった。 至らぬところも多いと思いますが、よろしくお願いします!

人の才能が見えるようになりました。~いい才能は幸運な俺が育てる~

犬型大
ファンタジー
突如として変わった世界。 塔やゲートが現れて強いものが偉くてお金も稼げる世の中になった。 弱いことは才能がないことであるとみなされて、弱いことは役立たずであるとののしられる。 けれども違ったのだ。 この世の中、強い奴ほど才能がなかった。 これからの時代は本当に才能があるやつが強くなる。 見抜いて、育てる。 育てて、恩を売って、いい暮らしをする。 誰もが知らない才能を見抜け。 そしてこの世界を生き残れ。 なろう、カクヨムその他サイトでも掲載。 更新不定期

ハズレスキル【地図化(マッピング)】で追放された俺、実は未踏破ダンジョンの隠し通路やギミックを全て見通せる世界で唯一の『攻略神』でした

夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティの荷物持ちだったユキナガは、戦闘に役立たない【地図化】スキルを理由に「無能」と罵られ、追放された。 しかし、孤独の中で己のスキルと向き合った彼は、その真価に覚醒する。彼の脳内に広がるのは、モンスター、トラップ、隠し通路に至るまで、ダンジョンの全てを完璧に映し出す三次元マップだった。これは最強の『攻略神』の眼だ――。 彼はその圧倒的な情報力を武器に、同じく不遇なスキルを持つ仲間たちの才能を見出し、不可能と言われたダンジョンを次々と制覇していく。知略と分析で全てを先読みし、完璧な指示で仲間を導く『指揮官』の成り上がり譚。 一方、彼を失った勇者パーティは迷走を始める……。爽快なダンジョン攻略とカタルシス溢れる英雄譚が、今、始まる!

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

【もうダメだ!】貧乏大学生、絶望から一気に成り上がる〜もし、無属性でFランクの俺が異文明の魔道兵器を担いでダンジョンに潜ったら〜

KEINO
ファンタジー
貧乏大学生の探索者はダンジョンに潜り、全てを覆す。 ~あらすじ~ 世界に突如出現した異次元空間「ダンジョン」。 そこから産出される魔石は人類に無限のエネルギーをもたらし、アーティファクトは魔法の力を授けた。 しかし、その恩恵は平等ではなかった。 富と力はダンジョン利権を牛耳る企業と、「属性適性」という特別な才能を持つ「選ばれし者」たちに独占され、世界は新たな格差社会へと変貌していた。 そんな歪んだ現代日本で、及川翔は「無属性」という最底辺の烙印を押された青年だった。 彼には魔法の才能も、富も、未来への希望もない。 あるのは、両親を失った二年前のダンジョン氾濫で、原因不明の昏睡状態に陥った最愛の妹、美咲を救うという、ただ一つの願いだけだった。 妹を治すため、彼は最先端の「魔力生体学」を学ぶが、学費と治療費という冷酷な現実が彼の行く手を阻む。 希望と絶望の狭間で、翔に残された道はただ一つ――危険なダンジョンに潜り、泥臭く魔石を稼ぐこと。 英雄とも呼べるようなSランク探索者が脚光を浴びる華やかな世界とは裏腹に、翔は今日も一人、薄暗いダンジョンの奥へと足を踏み入れる。 これは、神に選ばれなかった「持たざる者」が、絶望的な現実にもがきながら、たった一つの希望を掴むために抗い、やがて世界の真実と向き合う、戦いの物語。 彼の「無属性」の力が、世界を揺るがす光となることを、彼はまだ知らない。 テンプレのダンジョン物を書いてみたくなり、手を出しました。 SF味が増してくるのは結構先の予定です。 スローペースですが、しっかりと世界観を楽しんでもらえる作品になってると思います。 良かったら読んでください!

どうしてこうなった道中記-サブスキルで面倒ごとだらけ-

すずめさん
ファンタジー
ある日、友達に誘われ始めたMMORPG…[アルバスクロニクルオンライン] 何の変哲も無くゲームを始めたつもりがしかし!?… たった一つのスキルのせい?…で起きる波乱万丈な冒険物語。 ※本作品はPCで編集・改行がされて居る為、スマホ・タブレットにおける 縦読みでの読書は読み難い点が出て来ると思います…それでも良いと言う方は…… ゆっくりしていってね!!! ※ 現在書き直し慣行中!!!

ダンジョン作成から始まる最強クラン

山椒
ファンタジー
ダンジョンが出現して数十年が経ち、ダンジョンがあることが日常となっていた。 そんな世界で五年前に起きた大規模魔物侵攻により心に傷を受けた青年がいた。 極力誰とも関わりを持たずにいた彼の住んでいる部屋に寝ている間にダンジョンが出現し、彼はそこに落ちた。 そのダンジョンは他に確認されていない自作するダンジョンであった。 ダンジョンとモンスターにトラウマを抱えつつもダンジョン作成を始めていく。 ただそのダンジョンは特別性であった。 ダンジョンが彼を、彼の大事な人を強くするダンジョンであった。

ダンジョン学園サブカル同好会の日常

くずもち
ファンタジー
ダンジョンを攻略する人材を育成する学校、竜桜学園に入学した主人公綿貫 鐘太郎(ワタヌキ カネタロウ)はサブカル同好会に所属し、気の合う仲間達とまったりと平和な日常を過ごしていた。しかしそんな心地のいい時間は長くは続かなかった。 まったく貢献度のない同好会が部室を持っているのはどうなのか?と生徒会から同好会解散を打診されたのだ。 しかしそれは困るワタヌキ達は部室と同好会を守るため、ある条件を持ちかけた。 一週間以内に学園のため、学園に貢献できる成果を提出することになったワタヌキは秘策として同好会のメンバーに彼の秘密を打ちあけることにした。

処理中です...