ダンマス(異端者)

AN@RCHY

文字の大きさ
1,998 / 2,518

第1998話 気が逸る

しおりを挟む
「子どもたちは楽しみにしてたみたいだから、玄関に行って近くで起きるのを待っているよ。帰ってくるのを待っててくれたんだろ? それなのに起こさずに家の中にいたら、みんなにがっかりされそうだからな。起こすのはさすがに無いけど、起きるまで待ってれば機嫌も悪くならんだろ」

 子どもたちが拗ねないように考えた作戦だ。作戦って言うとなんか物々しいけど、ミーシャたちは拗ねると大変だからな。シンラは放っておいても、プラムたちと追いかけっこするか、捕まって抱き枕にされるくらいだから問題ないけどな。

 玄関なので、子どもたちが座っているソファー以外に、座るものが無いんだよな。大人で5人は座れるソファーだが、2人掛けの方をシンラ・プラム・シオンが占拠しており、3人掛けの方をミーシャ・スミレ・ブルムが占拠してるからな。

 スライムクッションだと俺も寝てしまいそうなので、お気に入りのソファーを召喚して置いておこう。そう高いモノではないのだが、座り心地も良くてリクライニングできるソファーなので、俺的にはかなり使いやすいのだ。

 深く座って寝るような体勢になると、すぐに寝てしまいそうになるので、本を読む体勢として気に入っている、椅子に腰は掛けるが両肘を膝付近に乗せ手で本を保持して、ちょうどいい距離に頭を移動させて読む形だ。人の少ない時間帯の電車で、たまに週刊誌をあの体勢で読んでいる人がいたっけな。

 体にはあまり良くないと思うが、この体勢ってなんか本を読んでいるって気がするんだよね。

 俺が戻ってきたのは11時くらいだったかな? もうすぐ12時になるけど、目を覚ますのかね? 1時間も集中して本を読んでいたのか、時間が経つのが早かった。

 様子を見に来たブラウニーたちから、12時30分までに起きなかったら、こちらで起こしてほしいとお願いされた。

 後30分弱……この子たちは起きるのだろうか? スライムたちは、起こす気がないようでまったく動きを見せていない。ケットシーたちは、こちらの話を聞いたためか、起こそうとしていたのを止めて近くでまた丸まって寝始めた。

 10分したころに、シンラがピクリと体を動かす。夢でも見て、脚を踏み外したのかね?

 ピクリと動いてから10秒くらいだろうか? 急にガバッと音がしそうな勢いでシンラが体を起こし、

「ごはん!」

 夢の中で飯でも食べてたのだろうか? 目をぱちぱちさせて首を傾げている。周りをキョロキョロ見渡すと、俺を発見して「おとー」と指を指して、俺の事を呼んだ。

 こいつが俺に通じる言葉を使うのは久々な気がする。娘たちや妻たちとは、単語を繋げたような会話をするのだが、俺の場合はシンラから一方的に意味不明なことを告げられて、こいつが満足して話が終わるんだよな。

 抱き枕になっているシンラが勢いよく起きたので、抱き枕にしていたプラムとシオンが寝ている体勢を崩され、ちょっと不機嫌になりながら目を覚ます。シンラの指を指している方向を見て、俺を発見すると、お前のせいか! みたいに睨まれたのだが……濡れ衣を着せられてしまった。

 シンラたちの声に気付いて、ミーシャたちも目を覚ます。時計を確認すると、何やら慌てだした。ソファーを下りて移動をしようとしたときに、俺と目があい笑顔になって俺の元に駆け寄ってきた。嬉しいのう。下の子たちに、姉たちの10分の1でもいいから、俺に優しくする力を別けてほしい。

 玄関でガヤガヤしている声が聞こえたのか、食事に集まってきた妻たちが玄関に様子を見に来た。

 いつもの光景を見て、微笑ましそうにこちらを見ている。プラムたちの誤解を解いてくれませんかね? 視線でそう訴えると、踵を返して食堂へ向かってしまった。妻たちも、プラムたちの誤解を解くことは難しいようだな。

 嫌っているわけじゃないって言うけど、目の敵にされているのには変わりないのだが……何とかならんかね?

 抱き着いてくるミーシャたちに、食事の準備ができていると声をかけて移動する。ミーシャたちはシンラたちにの所へ行って、食堂に行くことを伝えている。シンラたち3人は、必死になって自分でソファーから下りようとしている。

 下でスライムたちが倒れても問題ないように待機しているため、何か面白い気分になってしまう。

 上の子たちが下の子たちの手を引いて、食堂へ向かうようだ。ミーシャたちは、お姉さんをしているな……シンラたちも歩けるようになったから、これからもこういった光景が見られるのかね?

 想像してみると、プラムとシオンに両手を捕まえられて、歩き難そうにしているシンラの姿を想像してしまった。今と大して変わらないかもしれないな。

 前を歩いているシンラが、何やら身震いをした。キョロキョロとしているが、原因が分からず首を傾げていた。こいつ、すぐに考えるのを諦める気がするけど、大丈夫かね?

 食事を食べ終わると、ミーシャたちが我慢できないと言わんばかりに、俺の体を揺すってくる。俺もお前たちの希望を叶えてやりたいのだが、後ろの小さなお姉さんたちが怒る前に、少しは落ち着きなさい。

 俺の言いたいことが通じて、しっかりと食休みをしてくれるみたいだな。

 シルキーたちから許可が出たので、俺はミーシャたちに手を引っ張られウッドデッキへ出る。シンラたちも何をするのか気になったのか、えっちらおっちら3人でこちらに向かって歩いてくる。シンラは何も捕まっていないが、プラムとシオンはスライムを押し車みたいに使っている。

 ウッドデッキに出るところでシンラがふらつくのだが、何とか体勢を立て直すと、スライムたちから拍手のようなものが聞こえる。

 ミーシャたちは分かれて種をまくのかと思っていたが、プランターにまいてから畑にまくようだ。みんなで協力して種まきをする感じかな。

 相談していた種は、事前に召喚してもらっており、ドリアードのアドバイスを聞きながら、自分たちで種をまいていくようだな。

 3個1セットで、20セットくらいはプランターがあるので、20種類の野菜を育ててみるんだとさ。どんな結果になるか楽しみだな。

 ドリアードたちの話では、半数……10種類ほどが上手く育つけど、育った10種類も本来の半分程しか収穫できないのでは? との事だった。

 何でそんなに種類が育たないのかと思ったら、時期の合わない野菜なども育てるみたいで、ドリアードたちは上手く育たないだろうと予想しているみたいだ。後は、張り切りすぎているので、水をあげすぎないか心配している感じだな。

 適度に与えるのが一番ということだな。その塩梅が難しいんだけどな!
しおりを挟む
感想 316

あなたにおすすめの小説

現実世界にダンジョンが出現したのでフライングして最強に!

おとうふ
ファンタジー
2026年、突如として世界中にダンジョンが出現した。 ダンジョン内は無尽蔵にモンスターが湧き出し、それを倒すことでレベルが上がり、ステータスが上昇するという不思議空間だった。 過去の些細な事件のトラウマを克服できないまま、不登校の引きこもりになっていた中学2年生の橘冬夜は、好奇心から自宅近くに出現したダンジョンに真っ先に足を踏み入れた。 ダンジョンとは何なのか。なぜ出現したのか。その先に何があるのか。 世界が大混乱に陥る中、何もわからないままに、冬夜はこっそりとダンジョン探索にのめり込んでいく。 やがて来る厄災の日、そんな冬夜の好奇心が多くの人の命を救うことになるのだが、それはまだ誰も知らぬことだった。 至らぬところも多いと思いますが、よろしくお願いします!

人の才能が見えるようになりました。~いい才能は幸運な俺が育てる~

犬型大
ファンタジー
突如として変わった世界。 塔やゲートが現れて強いものが偉くてお金も稼げる世の中になった。 弱いことは才能がないことであるとみなされて、弱いことは役立たずであるとののしられる。 けれども違ったのだ。 この世の中、強い奴ほど才能がなかった。 これからの時代は本当に才能があるやつが強くなる。 見抜いて、育てる。 育てて、恩を売って、いい暮らしをする。 誰もが知らない才能を見抜け。 そしてこの世界を生き残れ。 なろう、カクヨムその他サイトでも掲載。 更新不定期

ハズレスキル【地図化(マッピング)】で追放された俺、実は未踏破ダンジョンの隠し通路やギミックを全て見通せる世界で唯一の『攻略神』でした

夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティの荷物持ちだったユキナガは、戦闘に役立たない【地図化】スキルを理由に「無能」と罵られ、追放された。 しかし、孤独の中で己のスキルと向き合った彼は、その真価に覚醒する。彼の脳内に広がるのは、モンスター、トラップ、隠し通路に至るまで、ダンジョンの全てを完璧に映し出す三次元マップだった。これは最強の『攻略神』の眼だ――。 彼はその圧倒的な情報力を武器に、同じく不遇なスキルを持つ仲間たちの才能を見出し、不可能と言われたダンジョンを次々と制覇していく。知略と分析で全てを先読みし、完璧な指示で仲間を導く『指揮官』の成り上がり譚。 一方、彼を失った勇者パーティは迷走を始める……。爽快なダンジョン攻略とカタルシス溢れる英雄譚が、今、始まる!

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

【もうダメだ!】貧乏大学生、絶望から一気に成り上がる〜もし、無属性でFランクの俺が異文明の魔道兵器を担いでダンジョンに潜ったら〜

KEINO
ファンタジー
貧乏大学生の探索者はダンジョンに潜り、全てを覆す。 ~あらすじ~ 世界に突如出現した異次元空間「ダンジョン」。 そこから産出される魔石は人類に無限のエネルギーをもたらし、アーティファクトは魔法の力を授けた。 しかし、その恩恵は平等ではなかった。 富と力はダンジョン利権を牛耳る企業と、「属性適性」という特別な才能を持つ「選ばれし者」たちに独占され、世界は新たな格差社会へと変貌していた。 そんな歪んだ現代日本で、及川翔は「無属性」という最底辺の烙印を押された青年だった。 彼には魔法の才能も、富も、未来への希望もない。 あるのは、両親を失った二年前のダンジョン氾濫で、原因不明の昏睡状態に陥った最愛の妹、美咲を救うという、ただ一つの願いだけだった。 妹を治すため、彼は最先端の「魔力生体学」を学ぶが、学費と治療費という冷酷な現実が彼の行く手を阻む。 希望と絶望の狭間で、翔に残された道はただ一つ――危険なダンジョンに潜り、泥臭く魔石を稼ぐこと。 英雄とも呼べるようなSランク探索者が脚光を浴びる華やかな世界とは裏腹に、翔は今日も一人、薄暗いダンジョンの奥へと足を踏み入れる。 これは、神に選ばれなかった「持たざる者」が、絶望的な現実にもがきながら、たった一つの希望を掴むために抗い、やがて世界の真実と向き合う、戦いの物語。 彼の「無属性」の力が、世界を揺るがす光となることを、彼はまだ知らない。 テンプレのダンジョン物を書いてみたくなり、手を出しました。 SF味が増してくるのは結構先の予定です。 スローペースですが、しっかりと世界観を楽しんでもらえる作品になってると思います。 良かったら読んでください!

どうしてこうなった道中記-サブスキルで面倒ごとだらけ-

すずめさん
ファンタジー
ある日、友達に誘われ始めたMMORPG…[アルバスクロニクルオンライン] 何の変哲も無くゲームを始めたつもりがしかし!?… たった一つのスキルのせい?…で起きる波乱万丈な冒険物語。 ※本作品はPCで編集・改行がされて居る為、スマホ・タブレットにおける 縦読みでの読書は読み難い点が出て来ると思います…それでも良いと言う方は…… ゆっくりしていってね!!! ※ 現在書き直し慣行中!!!

ダンジョン作成から始まる最強クラン

山椒
ファンタジー
ダンジョンが出現して数十年が経ち、ダンジョンがあることが日常となっていた。 そんな世界で五年前に起きた大規模魔物侵攻により心に傷を受けた青年がいた。 極力誰とも関わりを持たずにいた彼の住んでいる部屋に寝ている間にダンジョンが出現し、彼はそこに落ちた。 そのダンジョンは他に確認されていない自作するダンジョンであった。 ダンジョンとモンスターにトラウマを抱えつつもダンジョン作成を始めていく。 ただそのダンジョンは特別性であった。 ダンジョンが彼を、彼の大事な人を強くするダンジョンであった。

ダンジョン学園サブカル同好会の日常

くずもち
ファンタジー
ダンジョンを攻略する人材を育成する学校、竜桜学園に入学した主人公綿貫 鐘太郎(ワタヌキ カネタロウ)はサブカル同好会に所属し、気の合う仲間達とまったりと平和な日常を過ごしていた。しかしそんな心地のいい時間は長くは続かなかった。 まったく貢献度のない同好会が部室を持っているのはどうなのか?と生徒会から同好会解散を打診されたのだ。 しかしそれは困るワタヌキ達は部室と同好会を守るため、ある条件を持ちかけた。 一週間以内に学園のため、学園に貢献できる成果を提出することになったワタヌキは秘策として同好会のメンバーに彼の秘密を打ちあけることにした。

処理中です...