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第2323話 褒められるのは恥ずかしい
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午前中のお仕事を終え、ウルに気になることがないか聞いてみた。そうすると素直に思った事を聞かれて、変な汗をかくことになってしまったことに後悔した。
その内容は、
「まだ午前中なのに、もうお仕事が終わったのですか?」
うん、一番突っ込まれたくなかった質問が、子どもの純粋さと共に解き放たれた。
さて、どう答えたモノか……
そんな風に悩んでいると、ニヤリと笑っていたグリエルが助け舟を出してくれたのだ。
「シュウ様は元々、領主なんてやりたいとは思っていなかったのですよ。ですが、私たちをまとめるためには、シュウ様以外ありえないので、極力街の運営に関しては私たちが中心になって、シュウ様の負担が無い様にしているのです」
グリエルがフォローしてくれた。
「そうですね。シュウ様以外にこの街をまとめられる人はいないですね。それに、領主として一番大事なところは絞めてくださっていますし、私たちが気付かないちょっとした所に気付いてくださるので、これでも問題ないのです。方針だけい目してくだされば、後は私たちがやれますからね」
続いてガリアのフォローがあった。
「それに、ウルさんは少し勘違いをしているかと思いますね。本来領主は先頭に立って書類仕事を片付ける事なんて、ほとんどないのですよ。部下たちに指示して、必要なところは自分で確認する。部下が病気などで動けなくなった場合に、自分でもできるようにしておく。それが本来あるべき姿なんです」
グリエルやガリアは、妻たちには『様』をつけるが、子どもたちには『様』をつけない。敬称をつけるなら『さん』とつけるように、俺が命令しているからだ。
子どもたちが変につけあがらないように、下手に出ることも基本的にはさせていない。
「他の国の領主は、街で一番偉いと勘違いして、やりたい放題であることが多いですから、自分で仕事をせずにとるべき責任を部下に押し付ける、最悪な領主が大量にいるんですよ。そんな領主の下にはいい人材が集まるわけもなく、腐敗や汚職にまみれて住人を不幸にしていることが大半なんです」
グリエルとガリアが、刷り込むように叩き込むように、ウルに話を聞かせている。
「最後に、シュウ様の仕事が少ないということは、領主としてするべきことが少ないということです。それは街の事を考えていないのではなく、街がスムーズに回っている証拠でもあるのですよ。シュウ様のおかげということです」
2人の話が終わり、ウルは少し考え込んで、口を開く。
「話を聞いていると、お父さんでなくても街はスムーズに回っていくと思うのですが……それこそ仕事量を考えれば、グリエルさんやガリアさんの方が領主をしっかりできるのではないですか?」
痛いところを突いてくるが、もっと言ってやれ! 俺じゃなくても、問題なんてないって言ってやるんだ。
「……ウルさん。間違っても、そんなことを言ってはいけません。この街をまとめられるのは、シュウ様しかいないんです。もしシュウ様がいなくなったら、この街は維持は出来ても発展は出来ずに、そのうち廃れていくでしょう。
ウルさんにはピンと来ていないと思いますが、シュウ様の引率力と行動力、魔法、力が無ければ、この街は出来なかったのです。それに恩を感じていない者は、この街にはいないのです。こんなことを言ったと聞かれてしまえば、私でもウルさんをかばいきれないですよ」
「グリエル、脅すようなことは言わないでください。シュウ様のお子様ですから、何かあるということは無いですよ。ですが、物知らずと思われると思ってください。冗談でもこの話をしていいのは、シュウ様だけですから注意する方がいいですよ」
静かだが、有無を言わせない迫力がある2人の説得に、ウルは頷くことしかできなかった。
少しビビっているウルを落ち着かせながら、子どもに大人気ない事を言うな! と、視線で訴えると、このタイミングで親バカを発揮するのは、止めた方がいいですよ……といわんばかりの呆れた視線が帰ってきた。
そんなつもりはないが教育上、ウルの発言は良くないと後で言われたので、そこまで徹底して俺の事を持ち上げる必要は無いと思う、なんて口にしてしまい、2時間以上も説教をくらうはめになってしまったのは、苦い思い出になった。
さて、仕事が終わったので、落ち着いたウルを連れて家に帰ることにした。もちろん、スカーレットの許可を得てから連れ帰っている。勉強のために俺に付いてきているので、問題はないと思っていたが、確認のために一応聞いている。
帰り道のウルは、落ち込んだ様子は見られず、饒舌に俺の事を話すためむずがゆい思いをするはめになった。
家に帰ってからも、テンション高く母親たちに俺の仕事ぶりを話すため、そっとその場を離れた。
その様子を見ていた妻たちは、苦笑いをして俺にウルの意識がいかないように、聞き役に徹してくれたのはありがたい事だけど、ウルよ……恥ずかしくなるから止めてくれ。
ウルの相手は妻たちに任せて、俺は訓練をするために着替えてから、いつもの訓練場へ向かった。
訓練場では、綾乃とバザールが何かを準備していた。
「あ~、やっと来たわね。調整が終わってたのになかなかシュウが来なかったから、色々と強化しておいたからちょっと訓練に使ってみて」
ババーン! という効果音が付きそうな感じで紹介されたのは、人造ゴーレムだった……こいつを使って訓練でもしろってことか?
「この子たちは攻撃しないように設定しているわよ。肉体活性や魔法を使わないシュウじゃ追いつけないゴーレムたちと、真正面から訓練しろなんて、私でもさすがに言わないわよ。実際に攻撃を受けるのはこの子だけで、他の子たちは視覚共有でシュウの動きを見る係ね」
初めての試みだから、視覚共有が上手くいくかは分からないけど、攻撃を受けるこの子だけでも普通の人からしたら、十分に理不尽な動きをするから気にせずに打ち込んで! と言い笑顔で言ってきた。
少しだけ体をほぐしてから大薙刀を持って、素振りを始める。
体が温まってきたので意識を切り替え、人造ゴーレムを倒す気で可能な限り全力を出そう。
その内容は、
「まだ午前中なのに、もうお仕事が終わったのですか?」
うん、一番突っ込まれたくなかった質問が、子どもの純粋さと共に解き放たれた。
さて、どう答えたモノか……
そんな風に悩んでいると、ニヤリと笑っていたグリエルが助け舟を出してくれたのだ。
「シュウ様は元々、領主なんてやりたいとは思っていなかったのですよ。ですが、私たちをまとめるためには、シュウ様以外ありえないので、極力街の運営に関しては私たちが中心になって、シュウ様の負担が無い様にしているのです」
グリエルがフォローしてくれた。
「そうですね。シュウ様以外にこの街をまとめられる人はいないですね。それに、領主として一番大事なところは絞めてくださっていますし、私たちが気付かないちょっとした所に気付いてくださるので、これでも問題ないのです。方針だけい目してくだされば、後は私たちがやれますからね」
続いてガリアのフォローがあった。
「それに、ウルさんは少し勘違いをしているかと思いますね。本来領主は先頭に立って書類仕事を片付ける事なんて、ほとんどないのですよ。部下たちに指示して、必要なところは自分で確認する。部下が病気などで動けなくなった場合に、自分でもできるようにしておく。それが本来あるべき姿なんです」
グリエルやガリアは、妻たちには『様』をつけるが、子どもたちには『様』をつけない。敬称をつけるなら『さん』とつけるように、俺が命令しているからだ。
子どもたちが変につけあがらないように、下手に出ることも基本的にはさせていない。
「他の国の領主は、街で一番偉いと勘違いして、やりたい放題であることが多いですから、自分で仕事をせずにとるべき責任を部下に押し付ける、最悪な領主が大量にいるんですよ。そんな領主の下にはいい人材が集まるわけもなく、腐敗や汚職にまみれて住人を不幸にしていることが大半なんです」
グリエルとガリアが、刷り込むように叩き込むように、ウルに話を聞かせている。
「最後に、シュウ様の仕事が少ないということは、領主としてするべきことが少ないということです。それは街の事を考えていないのではなく、街がスムーズに回っている証拠でもあるのですよ。シュウ様のおかげということです」
2人の話が終わり、ウルは少し考え込んで、口を開く。
「話を聞いていると、お父さんでなくても街はスムーズに回っていくと思うのですが……それこそ仕事量を考えれば、グリエルさんやガリアさんの方が領主をしっかりできるのではないですか?」
痛いところを突いてくるが、もっと言ってやれ! 俺じゃなくても、問題なんてないって言ってやるんだ。
「……ウルさん。間違っても、そんなことを言ってはいけません。この街をまとめられるのは、シュウ様しかいないんです。もしシュウ様がいなくなったら、この街は維持は出来ても発展は出来ずに、そのうち廃れていくでしょう。
ウルさんにはピンと来ていないと思いますが、シュウ様の引率力と行動力、魔法、力が無ければ、この街は出来なかったのです。それに恩を感じていない者は、この街にはいないのです。こんなことを言ったと聞かれてしまえば、私でもウルさんをかばいきれないですよ」
「グリエル、脅すようなことは言わないでください。シュウ様のお子様ですから、何かあるということは無いですよ。ですが、物知らずと思われると思ってください。冗談でもこの話をしていいのは、シュウ様だけですから注意する方がいいですよ」
静かだが、有無を言わせない迫力がある2人の説得に、ウルは頷くことしかできなかった。
少しビビっているウルを落ち着かせながら、子どもに大人気ない事を言うな! と、視線で訴えると、このタイミングで親バカを発揮するのは、止めた方がいいですよ……といわんばかりの呆れた視線が帰ってきた。
そんなつもりはないが教育上、ウルの発言は良くないと後で言われたので、そこまで徹底して俺の事を持ち上げる必要は無いと思う、なんて口にしてしまい、2時間以上も説教をくらうはめになってしまったのは、苦い思い出になった。
さて、仕事が終わったので、落ち着いたウルを連れて家に帰ることにした。もちろん、スカーレットの許可を得てから連れ帰っている。勉強のために俺に付いてきているので、問題はないと思っていたが、確認のために一応聞いている。
帰り道のウルは、落ち込んだ様子は見られず、饒舌に俺の事を話すためむずがゆい思いをするはめになった。
家に帰ってからも、テンション高く母親たちに俺の仕事ぶりを話すため、そっとその場を離れた。
その様子を見ていた妻たちは、苦笑いをして俺にウルの意識がいかないように、聞き役に徹してくれたのはありがたい事だけど、ウルよ……恥ずかしくなるから止めてくれ。
ウルの相手は妻たちに任せて、俺は訓練をするために着替えてから、いつもの訓練場へ向かった。
訓練場では、綾乃とバザールが何かを準備していた。
「あ~、やっと来たわね。調整が終わってたのになかなかシュウが来なかったから、色々と強化しておいたからちょっと訓練に使ってみて」
ババーン! という効果音が付きそうな感じで紹介されたのは、人造ゴーレムだった……こいつを使って訓練でもしろってことか?
「この子たちは攻撃しないように設定しているわよ。肉体活性や魔法を使わないシュウじゃ追いつけないゴーレムたちと、真正面から訓練しろなんて、私でもさすがに言わないわよ。実際に攻撃を受けるのはこの子だけで、他の子たちは視覚共有でシュウの動きを見る係ね」
初めての試みだから、視覚共有が上手くいくかは分からないけど、攻撃を受けるこの子だけでも普通の人からしたら、十分に理不尽な動きをするから気にせずに打ち込んで! と言い笑顔で言ってきた。
少しだけ体をほぐしてから大薙刀を持って、素振りを始める。
体が温まってきたので意識を切り替え、人造ゴーレムを倒す気で可能な限り全力を出そう。
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