ダンマス(異端者)

AN@RCHY

文字の大きさ
2,421 / 2,518

第2422話 あれ? 想像してたのと違う

しおりを挟む
「バザール、綾乃が起きてきたら地上に出ないように、言っておいてくれ。散布するのはまだ後だけど、地獄になるから出来れば映像も見ない方がいいって言っておいて」

 一度は封印した悪魔の魔法薬……クダスンデス改が入っている収納の腕輪を取り出す。

 理由は分かっていないが、人種や精霊種には有効なのだが、魔物には効果の無い魔法薬だ。

 効果を発揮しても動けないことはないが、腹痛によってまともに動くことは出来ないし、体の水分が搾り取られるようにして排泄されるため、吸収率のいい飲み物が無ければ、脱水症状で瞬く間に動けなくなる禁断の魔法薬だ。

 正直、こいつの存在を忘れていたんだけど、さっき思い出して今回使ってもいいんじゃないかと思い、実行に移すことにした。

 俺だけの力では飲ますことは無理だが、シリウス君に頼めば霧と一緒に敵陣に散布してくれるので、全員に摂取させることが可能だ。

『シュウ、それ使うなら勇者の仲間たちは苦しんでいる間に、スケルトンか人造ゴーレムで殺すの? それとも捕まえて情報を引き出すの?』

 ……倒すことばかり考えていて、向こうかできた場合の対処を考えていなかった。最悪な方ばっかり考えていると、良い方に転んだ時の対策が疎かになるって奴か!?

「どうするのがいいと思う?」

『私に聞かれても困るけど……敵の情報を知りたいなら捕まえて、拷問をする方がいいんじゃないかな? 情報が無くてもかまわないなら、リスクを取らずに殺しちゃっていいんじゃないかな? 私たちは、終結するまでローテーションで監視に回るから、したいようにすればいいんじゃないかな? あっ、でも危ない事はダメだからね』

 カエデはそういって無線を切った。

 さてどうするべきか……

 考える前に準備をしておかないとな。

 俺は防毒マスクをつけて、少し息苦しさを感じながら壁の近くまで歩いていく。敵の撒いた毒がどのような物か分かっていないので、間違って吸い込まないようにするためにマスクをつけたけど、ドッペルを使えばよかったと後悔している。

 俺が乗り込んで操っても、体は魔物なのでクダスンデス改の効果は無いんだった。

 ダゴンは毒の影響を受けないように下がらせたので使えないけど、骨ゲーターはアンデッドで毒の影響がないから、今も優雅に堀の中を泳いでいる。骨ゲーターに収納の腕輪をつけ、合図があったら堀の向こう側に登って、中に入っているクダスンデス改の瓶を全部放出して割るように指示を出しておく。

 バザールにも指示を出してもらうので、クダスンデス改の散布は間違いなく行われるだろう。

 っと、シリウス君にも、骨ゲーターが瓶を割ったら中の液体を霧状にして、敵軍の陣地に集中して撒いてもらえるようにお願いする。

 俺が作業している間に、敵軍の本体が今日の野営地場所へ到着した。

 もう濃霧を展開してもらっているが、望遠カメラで様子を確認することができている。

「普通に野営の準備を始めたわね。霧を何とかしようと、火魔法や水魔法で頑張ってるみたいだけど、相手がシリウス君だから、すべて無駄に終わってるわね。さすが水を司る最強の魔獣よね」

「動いている時の方が呼吸が早いでござるから、そろそろ散布してもいいのではござらんか?」

「ちょっと待って、持ってきたドッペルに意識を移すから……よし、オーケー」

 俺たちの本体は、ゲートの先で侵入できない場所に置いてきた。もしもの時のためと、クダスンデス改の影響を受けないためにドッペルを使うことにした。バザールは元々効果は無いのだが、無幻爆弾の脅威があるので本体では前に出ない。

 準備が完了したので、骨ゲーターに瓶を割ってもらい、シリウス君に拡散をお願いする。

 俺たちのドッペルは、さっきまで使っていた部屋にある。なんやかんやで、ここが一番使いやすいんだよな、いろんな機材を召喚して使いやすいようにしてたからな。

 シリウス君がクダスンデス改を散布し始めて5分ほどしたころ、敵軍の野営地に混乱が起き始める。

 急に腹痛が襲ってきて、便意がマックスになる。戦闘中に糞尿を漏らすことはあるようだが、さすがに野営地で休んでいる時に糞尿を漏らすのは、精神的にきついよな。別に何も言われてなくても、言われているように感じる被害妄想特有の症状が起きるだろう。

 焦ったように動き回っていた人影が動かなくなり、ほとんどの敵兵がお尻に手を当てている。意地でも漏らさないように、手でも蓋をしているのだろうか?

 この魔法薬の厄介な所は、トイレで排泄してもお腹の痛みが全く治まらないことだ。そのためトイレをいちどしてしまうと、その場から動けなくなってしまうのだ。

 野営地から離れた場所で座り込んでいる影が複数見える。いや、濃霧のためか野営地の中でも座り込んでいる影があるな。聞きたくない音がそこらじゅうで……これ以上言うのは止めよう。

「で、結局、捕縛するの? それとも皆殺し?」

「一般兵は正直死んでもかまわないって思ってる。指揮官クラスや勇者の仲間は可能なら捕まえたいけど、無幻爆弾の件もあるから、爆発の半径以上は離して隔離しないと、道連れ自爆があるかもしれないよな……この際、1人に1こずつマイワールドを作って隔離するか。DPならあるんだし、その方が管理しやすそうだ」

 マイワールドの良いところは、マイワールド全体がダンジョンという認識になるので、ダンジョンマスターの能力で映像を見ることが可能なんだよな。

「安全策を考えるならそれでいいけど、収納のアイテムを取り上げるなら、自爆を気にする必要はないんじゃないかしら?」

「多分大丈夫だけど、念のためだよ。神たちが関わっているから、勇者と繋がりのある人間たちに、爆弾が送り込まれないとも限らないだろ? チビ神は物を送ってくるようなことはしないけど、出来ないと考えるのは早計だからな」

 戦闘が無くなった今、俺が一番警戒しているのは、神たちの介入なんだよな。あいつらってルールを作っているけど、簡単に無視するからな。関係者を使って何をされるか分からん。

「シュウ殿、主力メンバーは隔離するのは良いでござるが、残りはそのまま殺すでござるか? ダンジョンマスターの能力を使えば、足元を掘り下げて登れなくできるでござるから、そのまま放置でもいいんじゃないでござるか?

 魔法薬1本分飲んだわけではござらんから、放置しても死なないでござるだろうし、後で経験値が欲しい人に殺させてもいいんじゃないでござるか?」

 さすがアンデッドというべきか、強い人間=経験値に見えてしまっているようだな。バザールが提案してから俺もあいつらの事が経験値にしか見えないけどな。

「ちょっと手間かもしれないけど、主力は1人ずつ、他はまとめて1つのマイワールドへ放りこもうか。バザールはスケルトン、綾乃は人造ゴーレムを使って、指定するゲートに押し込んでくれ」

 かなり危険の高かったはずの戦争が、まだ危険は残っているが始まって見れば一方的な大勝利で終わった。
しおりを挟む
感想 316

あなたにおすすめの小説

俺は善人にはなれない

気衒い
ファンタジー
とある過去を持つ青年が異世界へ。しかし、神様が転生させてくれた訳でも誰かが王城に召喚した訳でもない。気が付いたら、森の中にいたという状況だった。その後、青年は優秀なステータスと珍しい固有スキルを武器に異世界を渡り歩いていく。そして、道中で沢山の者と出会い、様々な経験をした青年の周りにはいつしか多くの仲間達が集っていた。これはそんな青年が異世界で誰も成し得なかった偉業を達成する物語。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

ダンジョンで有名モデルを助けたら公式配信に映っていたようでバズってしまいました。

夜兎ましろ
ファンタジー
 高校を卒業したばかりの少年――夜見ユウは今まで鍛えてきた自分がダンジョンでも通用するのかを知るために、はじめてのダンジョンへと向かう。もし、上手くいけば冒険者にもなれるかもしれないと考えたからだ。  ダンジョンに足を踏み入れたユウはとある女性が魔物に襲われそうになっているところに遭遇し、魔法などを使って女性を助けたのだが、偶然にもその瞬間がダンジョンの公式配信に映ってしまっており、ユウはバズってしまうことになる。  バズってしまったならしょうがないと思い、ユウは配信活動をはじめることにするのだが、何故か助けた女性と共に配信を始めることになるのだった。

人の才能が見えるようになりました。~いい才能は幸運な俺が育てる~

犬型大
ファンタジー
突如として変わった世界。 塔やゲートが現れて強いものが偉くてお金も稼げる世の中になった。 弱いことは才能がないことであるとみなされて、弱いことは役立たずであるとののしられる。 けれども違ったのだ。 この世の中、強い奴ほど才能がなかった。 これからの時代は本当に才能があるやつが強くなる。 見抜いて、育てる。 育てて、恩を売って、いい暮らしをする。 誰もが知らない才能を見抜け。 そしてこの世界を生き残れ。 なろう、カクヨムその他サイトでも掲載。 更新不定期

最上級のパーティで最底辺の扱いを受けていたDランク錬金術師は新パーティで成り上がるようです(完)

みかん畑
ファンタジー
最上級のパーティで『荷物持ち』と嘲笑されていた僕は、パーティからクビを宣告されて抜けることにした。 在籍中は僕が色々肩代わりしてたけど、僕を荷物持ち扱いするくらい優秀な仲間たちなので、抜けても問題はないと思ってます。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~

ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。 食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。 最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。 それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。 ※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。 カクヨムで先行投稿中!

処理中です...