ダンマス(異端者)

AN@RCHY

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第2423話 余裕が出てくると余計なことを考え始める

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 あっけなく終わってしまった初戦……次があるのかは分からないが、双方に1名の死者もなく初戦が終わった。

「対人に関していえば、最強の魔法薬なんじゃねえか? クダスンデス改って聞くだけで、なんかお腹が痛くなりそうだわ」

 毒ではないので、耐性というモノが全く存在しない。回復薬のように強制的に怪我を治すように、クダスンデスは強制的に腹を下すようになる、悪魔的な薬ということだ。

 全体的に摂取量は多くないはずだけど、しっかりと効果が出ているあたり、本当に恐ろしい薬だ。

 個室に入れられた指揮官クラスのやつらは、運がいいと思っているのだろうが、実際の所……お前たちの方が、よほどツライ経験をすることになるんだけどな。

 一般兵を大量に詰め込んだマイワールドは……阿鼻叫喚だな。前にクダスンデス改を使った時も、同じこと思ってた気がするわ。忘れていた記憶をほじくり返したことで、げんなりすることになってしまった。

「シュウ、指揮官たちの方の荷物は全部取り上げたけど、他の方は人数が多くて取り上げるのが面倒なんだけど……」

「妻たちの情報では、麻薬とか危険な物を持っている奴もいるけど、俺たちが一番警戒している無幻爆弾は、指揮官クラスしか持っていないから、全員から取り上げる必要は無いかな。確認ミスで自爆しても、俺たちに影響はないから別にいいよ。経験値が少しもったいないくらいだからな」

 尋問する時も生身ではなくドッペルを使うので、自爆されても問題は無い様にしている。一般兵がどれだけ情報を持っているか知らないけど、自爆されたらされたで諦めも付く。

 それに指揮官クラスは自爆できないように、拘束と猿轡もしているので死なれることはない。

「確かに死ぬことはないでござるが、これは違う意味で問題があるでござるよ」

 拘束された状態で垂れ流しになっているので、正直に言って色々とヤバい。慌ててアメーバ状のスライムを召喚して、汚物をきれいにさせるくらいには見た目がヤバかった。

 レベルの低いスライムでは、高レベルの人間を消化できないので、ちょうどいい掃除人になってくれている。匂いも感じない奴らだし、排泄物でもごはん感覚で食べてくれるから本当に助かる。水をぶちまけても、こちらに飛んでくるかもしれないから……ドッペルだったとしても嫌だ。

「さて、勇者の仲間と無幻爆弾を持っていた2人に、その周囲にいた指揮官クラスっぽいやつら、合わせて20人もいるから、何かしらの情報を引き出すことができればいいんだけどな」

「そうでござるな。勇者とダンジョンマスター以外、本来の目的を知らないってことはあるでござる。勇者が主導なのか、ダンジョンマスターが主導なのかで、話は変わってくると思うでござるが、一緒に行動しているということは、方向性が一緒という可能性もあるでござるかね」

「それだけじゃないでしょ。どちらかが一方的に従わせている可能性もゼロじゃないと思うわ。お互いが接近しているのであれば、相性的に勇者の方が立場が上そうだけどね。脅されて従っている可能性も高いわよ」

 綾乃の言い分にも一理あると思うが、俺はダンジョンマスターが勇者に従っている可能性は低いと見ている。

 ダンジョンマスターって奴隷の首輪を外すことができるんだよな。正確には、持っているアイテムとして還元してしまえばいい。この世界の考え方では、奴隷は所有物だ。だから奴隷の首輪も含めて主人の物という考え方だ。

 だけど、この世界のシステムだと奴隷の首輪を装備している状態ということで、奴隷の首輪は奴隷自身の物であり、従わせるための道具でしかないということだろう。だから、奴隷自身の持ち物となり、ダンジョンマスターなら還元することができてしまう。

 普通なら思いつかない発想だが、奴隷の首輪をつけられたのなら、何でも試すだろう。そのうちに発見される隠し道だと思う。ダンジョンを作る能力を持っているから、逃げることも可能だろう。

 牢屋のような所に閉じ込められたとしても、ダンジョンマスターが干渉できるエリアなら、歩かなくても逃げることは可能なので、ダンジョンマスターが勇者を従わせているか、方向性が一緒なんだと思う。

 向き合って、せーので戦えば圧倒的に勇者が有利ではあるけど、何事にも例外はあるからな。言ってしまえば、ダンジョンマスターはDPさえあれば、何でも準備することができるので頭を働かせられるなら、やり様はいくらでもある。

 勇者は全体的に見て、SSやSSSランク冒険者みたいな理不尽な強さは無いから、対策さえ考えておけば、何とかなることも多い。勇者の中でもしっかりと技量をあげている奴が、俺たちにとって一番やり辛い相手だな。

「さて、尋問でも拷問でも何でもいいんだけど、俺たちだけでやるのは厳しくないか? 痛めつけることは出来ても、情報を喋らせるように誘導できる自信はないんだが……」

「良く言うわね。技術が無くても、力こそパワーみたいな脳筋的な発想で、ゴリ押して情報を喋らせているくせに。あんたのやっている方法は、痛い痛くないとか関係なく、すぐに心が折れるわよ」

 俺の拷問と言っていいのか分からないが、俺が得意とする方法は、とにかく相手を壊して治すを繰り返す、異世界式拷問術とでも名付けておくか。

 とにかく、情報を吐くまでそれの繰り返し。人の道を外れた人間にしかやったことはないけど、成功率はおよそ50パーセント。

 拷問して情報を吐かせられるのが2人に1人……これが多いのか少ないのか分からない。まぁ話さなかった半分は、死んでしまったため情報を吐けなかったというのが正しい認識ではある。

 体にも心にも負担がかかる方法なので、耐えきれずに死を選んでしまったというのが、俺たちの見解だ。

「情報を抜かれないように訓練している奴らでも、半分は死んじゃうんだから、凶悪だと思うわよ」

 そう考えると、確かにヤバいんだよな。

 だから、拷問せずに薬で情報を抜き出したりするようにしたんだよな。他にもいくつかの方法を用いて、色々な方向から情報を抜き取ってるんだけどね。

「急造の軍みたいでござるから、情報を吐かせるなら拷問が一番手っ取り早いと思うでござるが、某もあまり得意ではないでござる」

「しょうがない。レイリーたちにもドッペルを使ってもらって、情報を引き出してもらうか。安全が確保できている状態なら、文句は言われないだろう」

 レイリーに状況を報告し、協力を取り付けた。

 戦争で鍛えるつもりだったが、梯子を外された形になったので気合が入っている感じだったな。

 個室のやつらは、ドッペルを使って情報を抜き出すが、一般兵の方は隊長クラスの人間に経験を積ませるために、拷問の訓練をさせるつもりらしい。
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