君のための最期を

藍色綿菓子

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それは太陽

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 僕が生まれた時、世界には黒しかなかった。腹部がきゅうと寂しくて、ちょうど飛んできた羽虫に飛びついた。味は覚えていない。もぞもぞと動いていた、ような気がする。
 時が経つにつれて、段々と世界に色が付き始めた。そして僕はとても綺麗な物を見つけた。それは大きくて、見ていると目が痛くなる。白のようで、オレンジに見える、光。強い光。それは太陽。

 その日の僕は、水辺に向かっていた。
 じりじりと暑くてたまったものじゃない。今日くらいは飲むだけじゃなく、水の中に飛び込んでもいいとさえ思った。
 僕の予想した光景では、木々を抜けた先に清らかな川がある。しかし、現実には大きく開けた湖があった。
 どうやらまた道を間違えた。でも、水があるならば別に良いか。
 ぺたぺたと近寄って、そっと水に口を付ける。水には僕の姿が映る。揺れる、青い体。透き通っていて、僅かに青く濁っている。
「君は……」
 背後から声が聞こえた。振り返ると、髪の長い女性が僕を見ている。弓を持ち、矢を背負うその姿。僕は知っているのだ、あの矢が僕に飛んでくることを! 僕は慌てて逃げようとした。
「待って、ちょっとそこの青い子! 待ってってば!」
 風の音が聞こえた。突き出た木の根に躓き、僕は地面に倒れる。その衝撃を、僕は矢に貫かれたのだと思い込んだ。
 ふっと気が遠くなって、僕は生まれ故郷の暗闇に舞い戻る。凛と通る声だけが、その中に介入してきた。
「えっ、ど、どうしたの? わぁ、大丈夫? おーい」
 おーい、おーい、おーい……。
 その声がこだまする。

「あ、起きた? おはよう。水分不足だったみたいだね」
 ダメだぞ、スライムなら水分は常に補充しないと! なんて平和そうな声で僕は目が覚めた。
 綺麗な星空を背景に、女の人がいたずらっぽく笑ってる。その手からはびしゃびしゃに水が滴る。もしかして、ずっと僕を濡らしていたのだろうか。
 この人は一体何なんだろう。色白で、随分綺麗な人だ。
「君は野良スライム?」
 目の前の人が僕に何かを言うけど、あいにく僕は人の言語はわからない。
 寝ていた僕は起き上がる。かけられていた布から、這って逃れた。布も濡れていて、少し重い。僕は矢に貫かれてはいなかった。
「もう平気なの? 頑張るね」
 僕は空を見上げた。黒の中に沢山の小さな光がある。一つ大きな丸が見えた。綺麗な月夜だ。
 少し移動して、もう二度と会うことはないだろうと、最後に女の人を見た。彼女は温和そうな笑顔で僕に手を振っていた。
「どうか元気で」
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