チルアカ

藍色綿菓子

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アルバート

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 洋服がたくさん詰まったクローゼットから、比較的目立たない紺のワンピースを取り出して着た。私にあてがわれた部屋はやけに広い。前に誰か女性が住んでいたのか、アクセサリーや洋服が残されている。自由に使えと言われたから、好きにしている。不思議とサイズはぴったりだ。
 書庫の埃を浴びた服で夕食の席に行くのはしのびない。いつも夕食前に着替えている。着方のわからない服も多い。ドレスみたいに華美なものも多い。
 長い廊下を歩いて食堂に入ると、アルバートが既にいる。赤い液体をグラスで飲んでいた。
「いらっしゃい」
「こんばんは」
 彼の向かいの席に着く。怪しい食べ物がテーブルに乗っていないか確認する。好物の肉厚な花弁のサラダを見付けた。やった。
 アルバートが口にしているのは酒らしい。彼は青白い皮膚をしているが、血の色は赤いのか、頬に赤みが増している。とろんと垂れた目が危うい雰囲気を醸し出していた。
「今日は大事な話をしようと思うんだ」
「なんですか?」
「その……あの……後で……いや今、噂で……違う違う」
 アルバートは手に持ったグラスを一気に呷った。すぐに現れた使用人が彼のグラスに赤い酒を注ぐ。私はのんびりと花弁を咀嚼した。こんなに平常時と違うアルバートを見るのは始めてだ。
「あの……私の気持ちは、わかってくれていることかと思う。君の気持ちを聞かせてほしい……」
「この唐揚げ美味しいですよ、ほら」
「えっえっ、ありがとう……?」
 唐揚げ、と言ったが本当に唐揚げなのかは不明だ。料理名も違うかもしれない。見た目唐揚げだったのだ。いかにも粉を付けて揚げたような感じ。
「ごまかさないでくれ……」
 彼は困ったように首をかしげて苦笑する。さらりと長髪が揺れた。今日も美しく飾られて綺麗だ。いつもより綺麗かもしれない。どことなく、あれなんかおしゃれしてる? といった感じがする。角も飾りがついていた。
「さてなんのことやら」
 恥ずかしくて視線を合わせることができない。
「後で、私の気持ちを話すから。君の言葉も聞かせてくれるよな」
 就寝前のお茶会のことだろう。ああ、どうしよう。どうしよう? なんて答えればいい? 身分が違うとでも言おうか……この人はそんなこと気にしないだろう。
 奇妙な沈黙を守り続けて、食事の時間は終わった。酒で酔ったらしいアルバートは服の首元を緩めて手で仰いでいる。酔いが覚めてから来てください、と言うと、ああ、とだけ返ってきた。
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