英霊召喚 ~ハズレと呼ばれた召喚魔法で、過去の大賢者を召喚して史上最強~

向原 行人

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第2章 おちこぼれコースの召喚士

第26話 魔法大会開催

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 寮で何度かジェーンのお風呂を覗こうとしてはアオイに怒られ、時々エリーの家に無理矢理招かれたり、入手した材料によるエリーのホムンクルス製造を手伝ったりしているうちに、魔法大会の当日を迎える事になった。
 張り切る俺とエリーだが、その一方で教室の女の子たちには全く緊張感の無い、いつも通りの緩い空気が漂っている。

「はい。では、今日は魔法大会です。この基礎魔法コースからは、ヘンリー君とエリーちゃんが代表選手として出場してくれるので、皆さんしっかり応援してあげてくださいね」

 残念ながら、イザベル先生が教室に入って来て、ホームルームが始まってもその食う気は変わらない。

「あ、そっか。魔法大会って今日だったんだ。やった、丸一日授業が潰れるー」
「どうせ、総合コースが優勝するんでしょ? 毎年そうだしさー」
「そうだね。まぁでも、たまには一日のんびり過ごすのも良いんじゃない?」

 うわぁ。元から出場意志が無かったとはいえ、本当に興味が無さそうだな。

「……あれ? エリー。魔法大会って三人で一チームじゃなかったっけ? ヘンリー君と二人で出場するの?」
「ん? ダーシーちゃんには言わなかったっけ? 三人目はエリーとハー君の子供なんだー」

 エリーが当然のように応えた言葉で、教室内の空気が一瞬凍り付き、そして一気にざわつく。

「ちょ、エリー。まさか三人目って、エリーのお腹の中に居るって事なの!? 何やってんの!? だったら安静にしてなきゃダメじゃない!」
「ちょっと待った! エリー、誤解を招くような事を言うなっ! あと、ダーシーもエリーの言葉を真に受けちゃダメだ。全然違う話だから」
「えぇー。だって、本当の事だもんー」

 ざわ……

「二人が付き合っているのは知っていたけど……まさか、そこまで……」
「でも、よく考えたら初日から二人の関係は……」
「二人ともまだ学生なのに、どうする気なのかしら……」

 ざわ……

 ダメだ。このままでは収集が付かない。

「みんな、よく見ろっ! コーリングッ!」

 大きな声で召喚魔法っぽい言葉を叫び、直後にこっそり小声でジェーンの透明化を解除する。
 すると、明らかにエリーよりも年上の少女――ジェーンが姿を現した。

「エリーが作ってくれた媒体を元にして、俺が召喚魔法で呼び出した、聖女ジェーンだ」
「……主様をお守りするために馳せ参じました。ジェーン=ダークと申します。皆様、以後お見知りおきを」

 良くやった! 良くぞ俺に話を合わせてくれた! 流石は英雄だ。空気が読めるっ!
 心の中でジェーンを褒めまくっていると、

「あー、そういう事かー」
「なーんだ。二人がいつもイチャイチャしているから、完全に誤解しちゃったよ」
「でも、実際の所はどうなんだろうね。いつも一緒に居るもんねー」

 若干、変な声が聞こえては来るものの、エリーの発言による誤解は解けたらしい。

「あらあら、ヘンリー君は凄いのね。先生、人を召喚する所なんて、初めて見たわ」
「え、えーっと、エリーが手伝ってくれたおかげなんです」
「そうだよー。エリー、頑張ったんだー」

 うむ。エリーがホムンクルスを提供してくれなければ、ジェーンが肉体を得る事はなかったし、エリーはホムンクルス製造を頑張ってくれた。
 嘘は吐いていない。

「では、早速魔法大会の会場へ行きましょう。二人……とジェーンさんは、頑張ってね。観覧席から、皆で応援しているから」
「はーい」
「あと、皆さん。今日は主賓席に、我が国の第三王女であるフローレンス=ハミルトン様が来られる予定です。多少お喋りするのは構いませんが、我が校の品位を問われるような言動は慎むように」

 先生から王女様が来る事を改めて告げられた後、皆でぞろぞろと移動する。
 行き先は、仕官学校の戦闘科と魔法科の共有施設である、闘技場だ。
 そこは、教室と同じくらいの広さがある円形の舞台を中心に、観覧席が同心円状に広がっていくように配置されており、階段状になっているため、どこの席からでも舞台を見る事が出来る。
 その観客席の一番上に赤い絨毯が敷かれ、鎧に身を固めた騎士らしき男や、大きな杖を持った魔法使いのような女性が数人立って居る。
 十中八九、王女様の護衛だろうが、今はその守るべき王女が不在のままで、生徒たちが入場し、予め決められた席へと座って行く。

「ヘンリー君、エリーちゃん。二人はジェーンさんと一緒に、下の選手控室へ」
「わかりました」

 控室へ移動すると、先日言っていた通り二年生選抜チームのメンバーと思われる、ソフィアとオリバー、そして前回は見なかった男子生徒が居た。
 それはそれで構わないのだが、一つだけどうしても気になる事が有る。

「ソフィア……お前、まさかその格好で魔法大会に出るのか?」
「あ、アンタ、未だそんな事を言っているの? 当然じゃない。魔法大会本番なのよ? 精霊魔法の効果を上げる服装で出場するのは当然じゃない」
「凄いな。その格好で王女様の前に立つなんて、変た……じゃなくて、勇気に称賛するよ」
「今、変態って言いかけなかった!? まぁいいわ。とにかく約束を覚えている? ウチらが勝つか、アンタたちよりも上の順位だったら、例の借りを無かった事にしてもらうから」
「それはこっちの台詞だな。例の貸しを学校でも実行してもらうからな」

 パンツを見せたくないソフィアと、パンツを見たい俺の視線がぶつかり、激しい火花を散らしている……ような気がする。
 正直、既にパンツどころではない事件があったのだが、気の強いソフィアに自ら制服のスカートを捲り上げさせ、「ウチのパンツを見てください」と懇願させるというのは、また違った趣が有る。

『変態王さん。趣旨が大きくズレまくってますよ』
(……変態王なんて奴は知らないな)

 アオイの言葉をスルーしていると、俺とソフィアが会話をしていたのに気付いたオリバーが近寄って来たが、

「第三王女フローレンス=ハミルトン様のご入場です。全員、起立」

 魔法で拡散された誰かの声が場内に響き、皆が一斉に赤絨毯の方を向く。
 正直、オリバーは王女を無視してでも俺に突っかかってきそうなイメージがあったのだが、流石にそこはちゃんと従うらしい。
 それに釣られて俺も視線を王女様に向けると、淡いピンク色のドレスに身を包んだ、いかにもお姫様ですという清楚なオーラが溢れだす綺麗なお姉さんが遠目に見える。
 オリバーはソフィアみたいなのが好みだと思っていたのだが、雰囲気が全く異なる王女様に、無言のままずっと熱い視線を送っていた。

『あの、流石に相手が王女様なので、恋愛感情を向けている訳ではないと思うのですが』

 アオイの指摘に尤もだと思いつつ、戦闘科の武道会と同じ流れ――学長による開催の挨拶、来賓である王女様の簡単な挨拶があり、魔法大会の対戦表が発表された。

「それでは、先ずは第一試合。総合コースA組対基礎魔法コースの試合を始めます。両チームのメンバーは、速やかに中央のフィールドへ上がってください」

 先程同様にアナウンスが響くと、見知らぬ女子生徒たちが近寄って来て、

「ふふっ。基礎魔法コースの皆さん。いきなり優勝候補である私たちと当たるなんて不運ですわね。ところで今回は棄権なさらないのかしら? 怪我をされる前に、白旗を上げた方が身の為ですのよ?」
「……その格好、アンタたち三人とも精霊使いなのか」
「えぇ、もちろんですの。ですが、神聖魔法も使えますの。聞いた話では、そちらは召喚士と錬金術士、それから……こちらは誰ですの? まぁ良いですの。いずれにせよ、ハズレクラスである貴方たちには、精霊魔法の本来の効果を引き出せないでしょうし。戦闘開始から何秒耐えられるか楽しみですの」

 一方的に言いたい事を言って、そのまま控室を出て行ってしまった。

『ヘンリーさん。試合中のアクシデントに見せかけて、女の子のトラウマになるような事はやめてあげましょうね』
(いやいや、流石に俺も大観衆の前だし、俺一人でパンツを眺めるくらいだって)
『女の子にとっては、それも十分にトラウマとなる出来事ですからね!?』

 どういう訳か、まだ何も思っていない内に、思考を先回りしてアオイに釘を刺されてしまった。
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