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第3章 第三王女直属特別隊

第34話 誰も居ない学校で子作り

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 フローレンス様へ定期的に経過を報告すると告げ、王城を出ると門のすぐ傍でエリーとジェーンが座り込んで居た。

「あ! ハー君! おかえりーっ!」
「主様! お疲れ様でしたっ!」
「二人とも、待っていてくれたのか!? 悪いな、遅くなって」

 いつから待って居てくれたのかは分からないが、式典とフローレンス様との話があったので、結構な時間を待っていたのではないだろうか。
 ちなみに、二人とも式典について行くと言い張っていたのだが、流石に門番に止められ……まさか、止められた時からずっとここに居た訳じゃないよね!?

「……あの二人の女の子、あんな男を待っていたのかよ」
「……というか、あっちの胸の大きい娘は、主様って呼んでいなかったか? どういう関係なんだ?」
「……待て。お前達は途中で交代したから知らないかもしれないが、あのお方はフローレンス様の命の恩人だ。下手な事を言ったら、首が飛ぶぞ」

 あの、門番のオジサンたち。バッチリ聞こえていたけど、それくらいで首が飛ぶようなブラックな国じゃない……よね?
 これから俺が仕える職場の事なので、ちょっと気にしていると、エリーが腕に抱きついてきた。

「ねぇねぇ、勲章ってどんなのー?」
「あぁ、ちょっとここでは……俺の部屋かエリーの家はどう?」
「え!? エリーもハー君のお部屋に行って良いの!?」
「あ、そっか。エリーは俺の部屋に来た事なかったっけ」
「そうだよー。エリーは一度も連れて行ってもらえてないんだもん。ジェーンちゃんはいつもハー君のお部屋に居るんでしょ? ずるいよー」
「でも、時々はエリーの家でお泊まりしただろ?」
「そうだけどー、それとこれとは別問題だよー」

 エリーが小さな口を尖らせるので、それを宥めながら、どこか適当に人気の無い所へと歩きだす。
 流石に人前で瞬間移動の魔法を使う訳にはいかないからな。

「……フローレンス様の命の恩人は、あの美少女二人と……くっ!」
「……おい、この話は絶対にフローレンス様に、いや誰にも喋るなよ。消される……喋ったら、絶対に消されるぞ」
「……いいなぁ。マジで羨ましい」

 遠くから兵士たちの声が聞こえてきたが、何かいろいろと勘違いしていないだろうか。
 確かにジェーンは同じ部屋で生活しているが、一緒にお風呂へ入る事はアオイが許さないし、エリーの家に至っては、毎回お母さんが変に介入してくるせいで大変な事になる。
 この前は何を間違えたのか、夕食にお酒を出されてしまい、エリーが匂いを嗅いだだけで……いや、思い出すのもやめておこう。
 一先ず、周囲に人の気配が無くなったので、ワープ・ドアの魔法で俺の部屋へと移動した。

「……という訳で、俺は王宮に仕官する事になったんだ」
「ハー君、すごーい! じゃあ、もう卒業後の進路が決まったんだねー。おめでとー!」
「まぁな。で、これから魔族の動向調査をする旅に出る事になってな。少しこの街を離れるんだ」
「えっ!? やだ! エリーも行く!」
「ちょっと待った。離れるって言っても、本当に少しだ。一週間とかその程度だから」
「やだやだ! エリーはハー君と一緒に居るの!」
「いや、これは王女様からの任務だし、危ない場所へ行くんだ。それにエリーは錬金術士になるんだろ? お母さんを一人にして良いのか?」

 エリーが大粒の涙を浮かべながら抱きついて来たが、たった一週間で大袈裟過ぎないか? これはフローレンス様にも同じ事が言えるが。
 俺なんて寮暮らしだし、年に二回くらいしか家に帰らないんだけど。

「あー、それでだ。エリーとジェーンにはやって欲しい事があるんだ」
「なぁに? 親子水入らずで思い出作り?」
「親子って……というか、何度も言うけど、一週間で帰って来るからな? で、二人にはこの街の見回りを頼みたいんだ」
「……見回り? ハー君、どういう事?」
「この前、学校に魔族が現れただろ? 他に何か変わった事が無いかを調べて、万が一何か魔族に関する事があれば、俺に連絡して欲しいんだ。魔術士ギルドへ行けば、即座に連絡が取れるのは知っているだろ?」
「メッセージ魔法の魔法代行サービスの事だよね?」
「あぁ。俺は瞬間移動の魔法でエリーの家に一瞬で帰れる。何かあれば、教えて欲しい」

 とはいえ、おそらく街には何も無いとは思う。
 オリバーは魔法学校に潜入していたが、ターゲットはフローレンス様のはず。あんな事があったし、元より担当されている公務が少ないから、何かあるとすれば直接城が狙われるはずだ。
 だからエリーに危険は及ばないはずだが、念のためにジェーンに護衛を頼みたい。

「という訳で、ジェーン。一週間、エリーの護衛を頼む」
「主様。私は……」
「召喚した俺を優先だって言うんだろ? だから、これは俺からジェーンへの任務だ。一週間、エリーを守ってくれ」
「……分かりました。私、ジェーン=ダークは主様の命に従い、奥方様をお守りしてみせます」

 ジェーンに改めてエリーの事を頼み、早速出発しようとしたのだが、

「待って。ジェーンちゃんもエリーの傍に居るんだったら……ハー君! エリーと子供を作ってよー」
「……こ、子供!? エリー? 何を言い出すんだ!?」
「だってハー君が一人になっちゃうもん。エリーの事を忘れないためにも、もう一人子供を作って、その子を連れて行ってよー」

 ……あ、子供ってホムンクルスの事か。焦った。めちゃくちゃ焦った。
 俺はそういう事をしたい願望はあるけど、女の子が自分から「子供を作って」なんて事を言う訳ないよな。

『……ぷっ』

 何だろう。今、アオイに笑われた気がするんだが。これだから童貞は……的なニュアンスで。
 気のせい、気のせいだよな!?

「……まぁ、いいや。えっと、ホムンクルスの材料は前に集めた分がまだ残っていたよな?」
「うんっ! じゃあ、早速新しいホムちゃんを作るね」
「待った。ここは狭いから、学校の魔法訓練室へ行こう」

 再びワープ・ドアの魔法を使い、休校となっている学校へ。
 普段は大勢の生徒が授業を受けているが、今は誰も居ない。今なら何をしても怒られないな。

『あの、教室で変な事をするイメージを思い浮かべるのはやめてくれませんか? 私に全部伝わってくるんですけど』
(男が萌えるシチュエーションなんだけどなぁ)
『ヘンリーさん。薄い本の読み過ぎではないですか?』

 ……時々アオイが言う薄い本って、何の事だろう。
 ちょっと聞いてみたいけれど、魔法訓練室に着いてしまったので、先にやるべき事をやろうか。

「クリエイト・ホムンクルス」
「グロウ・ホムンクルス」

 エリーが作ったホムンクルスの核を、俺の魔法で成長させる。
 エリーが言う所の、二人の魔力が混ざった子供(ホムンクルス)の完成だ。
 それから魔法陣を描き、肝心の召喚魔法を使用する。

「サモン!」

 今回は特に何も思い描かずに魔法を使い、

「お? おぉっ!? ここはどこだい?」
「えっと、君の名前は?」
「私? 私は、アタランテ。貴方が私を呼び出したのかい?」

 ジェーンとは対照的に、少し軽いノリのゴーストが現れた。
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