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第5章 新たな試練

第115話 パジャマでおじゃま

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『お、おい人間。この女を、我から……くっ、何という撫で技術っ!』

 猫をモフモフするジェーンが、俺と意志疎通を図っているボス猫にまで及び、早くも猫が落ちかけている。
 ジェーン……猫大好きなんだな。
 見た目がちょっとイカついボス猫でさえ、手玉に取るのか。

「ジェーン。その大きな白い猫が、もっと撫でて欲しいって言っているぞ」
『おい、待て! 誰もそんな事を……あぁぁぁっ! 喉は反則だっ!』

 「この猫ちゃんは喉が好きなですねー」と、教えた訳でもないのに、的確に個々の猫の弱点を責めていく。
 お腹が膨れた所に、ジェーンの心地良い撫で撫でで責められ、眠りかけている猫まで現れる始末だ。……夜行性のはずなのに。
 しかしボス猫に寝られてしまっては困るので、ジェーンに違う猫を勧めてあげると、静かに近寄り、身体を撫で始めた。

(さて、そろそろ本題に入ろうか)
『……あ、あぁ。取引の話だったな』
(そうだ。俺たちは今、獣人の村に行きたいんだ。動物の耳や尻尾を持った人間の話を聞いた事が無いか?)
『あぁ、それなら最近良く聞くな。そういう人間の女を見かけると』
(言っておくが、それはここに居るアタランテの事じゃないか? このアタランテ以外の獣人の事を知りたいんだ)
『……むぅ。なるほど。その者以外か』

 やはりアタランテの情報が真っ先に出てくるよなぁ。
 最近、街で情報収集をしてもらっているし。
 これはアタランテ本人に来てもらって正解だったかもしれないな。互いに口頭説明だけの空中戦じゃ、誤情報に振り回されないかねないし。

(獣人の村を見つけてくれたら、さっきの魚を十倍出そう)
『十倍か。いいだろう。爺……爺はどこだ?』

 ボス猫が誰かを呼ぶと、灰色の老猫がトボトボと近寄って来た。
 二匹の猫が会話をしているが、老猫には意志疎通魔法を使用していないので、ボス猫の発言しか分からない。
 俺の推測も入っているが、話の内容としては、どうやらアタランテを召喚する以前に、この老猫が獣人を見た事があると言っていた事を、ボス猫が思い出したようだ。
 ただ、ボス猫が実際にアタランテを見るまでは、全く信じていなかったみたいだけど。

『待たせたな。一先ず、探してみよう』
(分かった。一週間程あれば探せるか?)
『いや、三日で何とかしよう』
(そうか。では、三日後にまたここで)
『うむ。約束の品を忘れるなよ』

 ボス猫と取引を交わし、意志疎通魔法を終了させてアタランテの元へ。

「貴方。話は終わったのかい?」
「あぁ。一応アテはあるみたいで、三日後にもう一度ここへ来る事になったよ」
「そうかい。じゃあ、獣人の村については、一先ず情報提供待ちって所かい?」
「そうだな……って、その話も含めて明日にしようか。ユーリヤが起きているとまずい。最悪、寮が壊されかねない」

 まぁ何かあればマーガレットから連絡があるだろうし、今の所は大丈夫だと思っているが。

「ジェーン。そろそろ帰るよ」
「……皆、またねー」

 猫たちに向かってジェーンが手を振り……って、多くの猫がウトウトしているし、そうでない猫はジェーンの足にスリスリと顔をすりつけている。
 ジェーンの凄い撫でテクニックにより、めちゃくちゃ好かれているな。
 ジェーンの新たな一面を知ると共に、ワープドアで寮の廊下へ戻る。
 ちなみに、直接部屋へ移動しなかったのは、ジェーンが猫の毛だらけだったので、二人掛かりでジェーンの身体から猫の毛を払うためだ。
 本当はお風呂へ入って貰いたい程に毛まみれなのだが、ユーリヤを起こしてしまうかもしれないからね。

「あ、あの、主様。先程から、お尻や太ももばかり触られておりませんか?」
「いや、背後はジェーン自身で見えないだろ? いっぱい毛が付いていて、中々取れないんだよ」
「そ、そうですか。失礼いたしました。では、お願いいたします」

 ジェーンがしゃがんで撫でている時に、他の猫がすり寄って来ていたのだろう。
 いや、本当に毛だらけで、手でお尻を撫で……こほん。払っても払っても、中々取れないんだよね。

「……」

 毛が取れないという事実があるからか、アタランテもアオイも何も突っ込んでこないけど……無言のプレッシャーが半端じゃ無いんですけど。

「そうだ。いっその事、ジェーンはこのズボンを脱いじゃえば? ……って、そもそもどうしてズボン? ジェーンって、こんな服を持っていたっけ?」
「あ、主様。その、これは私の寝間着です」
「あー、パジャマかー……って、今までパジャマで街中を走って居たの!?」
「は、はい。主様が起きてから、すぐに出発されましたので」
「そ、それはゴメン」

 なるほど。どうりで触り心地の良い生地なはずだ。
 ジェーンのお尻の柔らかさを余り遮らないので、服の上から触って居てもムニムニ感が凄いもんね。
 それと、ジェーンはいつも仮眠というか、俺たちの枕元に居るけれど、一応パジャマに着替えていたのか。

「貴方。私も同じ状態なのだけど」
「え? アタランテも!? 流石に外へ出た服でベッドに入るのは衛生的に良くないよね。というわけで、今日は二人ともパジャマを脱いで寝ちゃおう!」
「まぁ私は構わないけど」

 アタランテが俺の意見を採用してくれて、ジェーンも困った様子を見せつつも了承してくれた。
 今夜は一睡もせずに凄そうと心に決めて部屋に入ると、

「にーに。にーにぃ……」
「お兄さん! こんな夜中にどこへ行っていたのさっ! メッセージ魔法を何度も送ったのにっ!」

 目を覚ましたユーリヤが静かに泣きながら抱きついてきた。
 そして、俺の胸の上でユーリヤが寝る事になったのだが、少しでも身体を動かすと幼女らしからぬ物凄い力で抱きつかれ……結果、一睡も出来ないままに朝を迎える。
 ……アタランテにもジェーンにも、指一本触れる事が出来なかったよ。
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