元侯爵令嬢の異世界薬膳料理~転生先はみんな食事に興味が無い世界だったので、美味しいご飯で人の身も心も癒します~

向原 行人

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第24話 リアムさんの秘策

 賊が現れたという話を聞いたものの、顔を上げるなと言われて状況が確認出来ないので、リアムさんに聞いてみる。

「リアムさん。どういう状況なんですか?」
「左右を囲まれています。このまま真っすぐ街へ逃げ込む事が出来れば、冒険者が大勢いるので大丈夫でしょう。ですが……」
「ですが?」
「相手は四騎です。重い馬車では振り切れません」

 そんな……せっかくリアムさんのお母さんが私の為にいろいろしてくれたのに、こんな事になるなんて。
 どうすれば良いのだろう。
 だけど考えても答えが出ずに、どうしたものかと思っていると、リアムさんが言葉を続ける。

「さて……では、奴らを倒してくるので、二人はこのまま馬車の中に居てください」
「えっ!? リアムさん!?」
「大丈夫です。アリスさんには話していませんでしたが、こうなる可能性も考えて、対策はしているので」
「対策!?」
「はい。四人とも俺に向かって来るので、その間に街へ向かってください。」

 そう言って、リアムさんが馬車のドアを開けて飛び降りる。
 出来るだけ顔を出さずに様子を伺っていると、リアムさんが白い何かの塊を手にしながら何か叫ぶと……馬車の周りの人たちが馬を方向転換させ、皆リアムさんに向かって行く。
 その直後に、怒声や金属がぶつかり合うような音が聞こえてきた。
 おそらく、あの拳大の何かが、事前に用意していた対策なのだろう。
 そのおかげか、リアムさんが言っていた通りの状況になっているけど……相手は四人もいるのに、大丈夫なのだろうか。

「アリス様。リアムは幼い頃から剣の修業に励んでいたので、大丈夫ですよ」
「そ、そうですよね。フェイン家でも騎士隊長に抜擢されておりましたし」
「えぇ。その通りです。ですから、私たちは町へ戻り次第、警備兵に伝え、リアムの応援に向かってもらいましょう」

 リアムさんのお母さんとそんな話をしていたのだけど……突然馬車の揺れが激しくなった。

「きゃあっ!」
「お母様! 大丈夫ですか!?」
「ありがとうございます。ですが、一体何が……えっ!?」

 リアムさんのお母さんの声を聞き、その視線の先に目を向けると……すぐ近くに、馬に乗った見知らぬ男性がいた。
 賊は四人だけじゃなかったんだ!
 どうやら、五人目がいたみたいだけど、相手は一人だけ!
 私の初級魔法で何とか出来ないだろうか。

「アリスー! さっきもらったリンゴはどうかなー? リンゴはお馬さんの大好物だよー」
「な、なるほど。馬の好物で気を引いて足止めは良いんだけど、そんなに上手く投げられ……ううん。やるしかないんだ!」
「アリスー、頑張ってー!」

 大ピンチなんだけど、タマちゃんのいつも通りの声で、少し落ち着く。
 食べ物を投げたりするのは嫌だけど、粗末にしている訳では無くて、馬に食べさせてあげるんだ!
 そう自分に言い聞かせて馬車の窓を開けると、ジリジリと距離を詰めてくる馬に向かってリンゴのドライフルーツを投げ……届かないっ!
 せっかく作ってくれたドライフルーツなのに、ごめんなさい!
 もぎたてのリンゴを火魔法と風魔法で乾燥させてくれているのに……あ、そうだ! これならどうっ!?

「アリスー? 何をしているのー?」
「少しだけ待っててね。今度こそ成功させるからっ! ……≪リトル・ブリーズ≫」

 先程の果樹園で実演してもらった、箱の中で微弱な風を起こしていた風魔法を使い、手にしたリンゴのドライフルーツの濃縮された香りを馬の鼻に届ける。
 馬がピクピクと鼻を動かし、走りながら涎を垂らす。

「よし、食いついたっ! えーいっ!」

 あの馬はリンゴが食べたくて仕方がないはずなので、風魔法を制御して後方へ思いっきり飛ばす!
 私の手では全然飛ばなかったけど、風魔法で飛ばし、かつ馬への香りを届けたままなので……賊が乗っていた馬が唐突に方向転換する。

「お、おいっ! 何処へ行くんだっ! お前は、あの馬車に近付くんだよっ! 侯爵との取引が……おい、こらっ!」
「やった! タマちゃん、ありがとう! 成功したよ!」
「流石、アリスー! 良かったー! ま、まぁいざとなれば、ボクがアリスを守っていたんだけどねー」

 タマちゃんと胸を撫でおろしつつ、他に近寄って来る者がいないか警戒し……無事に町の中へ戻る事が出来た。
 すぐさま、リアムさんのお母さんが衛兵に指示を出し、三人が馬に乗って駆けて行く。
 きっとリアムさんも大丈夫だと思いつつ、先程の賊が言った、気になる言葉について考える。
 侯爵との取引……この辺りだと、侯爵といえばフェイン家のはずだ。
 まさか、お父様がさっきの人たちを雇ったの!?
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