元侯爵令嬢の異世界薬膳料理~転生先はみんな食事に興味が無い世界だったので、美味しいご飯で人の身も心も癒します~

向原 行人

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第25話 地下牢の謎

 リアムさんと街の衛兵が四人の賊を捕らえたものの、私がリンゴを投げて離れさせた一人はそのまま逃げてしまった。
 とはいえ、目的などを聞き出すには四人いれば十分だと言って、兵士さんが賊を何処かへ連れて行く。
 兵士さんたちの詰所の入り口に、私たちだけ残されてしまったと思ったら、突然リアムさんが頭を下げる。

「アリスさん、すみません。五人目がいたというのは、予想出来ていませんでした」
「いえ、みんな無事だったので大丈夫ですよ。それより、リアムさんが用意していた対策って何だったんですか?」
「あー、あれは……その、ちょっとここでは言い難くて」

 何だろう。他の人に……というか、リアムさんのお母さんに聞かせられないような代物なのだろうか。
 実は所持しているだけでも捕まってしまう、危ない禁制品とか?

「タマちゃん。少し行った所に、フルーツを売っているお店があるんだけど、一緒に食べる?」
「うん、食べるー!」

 そんな事を考えていると、お母さんがタマちゃんを連れて詰所を出て行き、私とリアムさんだけが残される。
 うーんと、お母さんはアレが何か知っていて、タマちゃんに聞かせられないものって事なの?
 見たら食べたくなってしまう、凄く美味しい香りがするお菓子とか?
 だけど、私の結論が出るよりも先に、リアムさんが耳打ちしてきた。

「アリスさん。先程、俺が使ったのは……これです」

 そう言って、リアムさんが白い何かを取り出す。
 紐のような物が沢山伸びる、白い玉……って、これモップだ! モップの先端を丸めただけだ!
 だけど、どうして賊たちがモップに集まって行ったのだろか。

「……アリスさん。あの賊の狙いは、聖獣様です」
「えぇっ!? タマちゃんをっ! あ……このモップって、タマちゃんに似せたんだ!」
「その通りです。奴らにこれを一瞬だけ見せ、すぐに懐へしまったんです」

 なるほど。今のをチラッとだけ見たら、知っている人なら、間違いなくタマちゃんだと思うはずだ。

「けど、どうしてタマちゃんが狙われているの?」
「理由まではわかりません。ですが、先日俺と聖獣様とでアース・プラントを探しに出かけた時にも襲われたんです」
「えっ!? あれって、結構前だよね!?」
「はい。黙っていてすみません。心配をおかけしたくなかったので」

 そう言えば、あの後くらいからリアムさんの表情が険しくなっていた気がする。
 もしかして、リアムさんはあの頃からずっと警戒していたの!?
 だから、安心出来る屋敷の中以外では、機嫌が悪いように見えたのだろうか。

「けど、どうしてタマちゃんを……」
「わかりません。後で俺も尋問に参加しますので、何かわかれば伝えますね」

 尋問……領主の馬車を狙ったのだから、相応の罰はあるのだろう。
 だけど、その領主だと分かった上での事なので、余程の理由があるはずだ。

「あのね。五人目の人が、侯爵との取引が……って言っていたの」
「侯爵という事は……まさかフェイン侯爵ですか!? いやでも、少し離れていますが、侯爵は他にもいるので……」

 リアムさんが慌ててフォローしてくれるけど、位置的にも父が関与していると考えた方が自然だろう。
 一度家に帰り、父から話を聞いてみようかと考えていると、先程リアムさんの所へ向かってくれた衛兵さんの一人が大慌てでやって来た。

「リアム様っ! 大変ですっ! ……地下牢に入れていた賊が、全員亡くなりましたっ!」
「なっ……どういう事だ!?」
「わかりません。牢には小さな窓しかなく、誰かが侵入出来るような隙間はありませんし、出入口はここだけです」

 今、兵士さんが飛び出してきた扉の前には、私とリアムさんがずっといた。
 私たちに気付かずに中へ入って出て行くなど、不可能だ!

「あ……待って! タマちゃんとリアムさんのお母様は無事なのっ!?」
「くっ! まさか、中心から外れているとはいえ、街中で襲撃なんて……」

 飛び出したリアムさんに私も続き……

「あれー? アリスもお腹が空いたのー?」
「リアムもアリス様も、いかがですか? 美味しいグレープがありますよ」

 目の前の露店で、タマちゃんとお母さんが楽しそうにフルーツを摘んでいた。
 えっと……タマちゃんは食べ物に囲まれて幸せそうね。
 とりあえず二人が無事で良かったけど、地下で一体何があったのだろうか。
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