元侯爵令嬢の異世界薬膳料理~転生先はみんな食事に興味が無い世界だったので、美味しいご飯で人の身も心も癒します~

向原 行人

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第26話 薬草の研究

「母さん! 急いで屋敷へ戻ろう! アリスさんも!」
「そうね。タマちゃん、おいでっ!」

 タマちゃんを狙っている人たちがいて、その人たちが捕まった途端に、一斉に亡くなるなんて絶対におかしい。
 用心しておくに越した事はないだろう。
 という訳で、事情は後で説明する事にして、周囲を警戒しながら領主の屋敷へ戻ってきた。

「俺は兵士の詰所で話を聞いてきます。アリスさんと聖獣様は、絶対にこの屋敷から出ないでください」
「えっと、タマちゃんはわかるけど、私も?」
「念の為です」

 そう言って、リアムさんが屋敷を飛び出して行った。
 でも父が関わっている可能性もあるし、リアムさんの言う通り、今は屋敷の中で待っているべきかも。
 リアムさんの指示に従い、タマちゃんと屋敷の宛てがわれた部屋でジッと待つ。
 ……と思っていたけど、地下牢の事は気になるものの、リアムさんが帰って来る気配もないので、タマちゃんと共にキッチンへ。
 この時間を活用して、前から気になっていた、薬草を使った料理を研究しようと思う。

「薬草ご飯? それなら、この前リアムと一緒に見つけた薬草を取っておいてもらってるよー!」
「あ、お預かりした植物ですか? 少々お待ちください」

 キャシーさんが、タマちゃんから預かっていたという数種類の薬草を持ってきてくれた。
 私としては、医食同源を実践する為にも、栄養バランスの良い食事にしたいので、是非とも活用したい。
 特に、冒険者さんたちは汗をかく事が多いはずだし、流れ出ていってしまうミネラルやビタミンが取れる食材を使いたいと思う。

「んーとねー、アリスが言うような薬草は、これかなー。汗をかいた後に体調を悪くさせ難くするんだー」
「へぇー。ゴボウ……もとい、土の枝に似ているけど、長さや色が違うのね」
「土の枝は皮を剥くと白いけど、こっちは黄色いんだよー。それと、食べると身体がポカポカするから、炎の根って呼ばれているんだよー」

 へぇー、炎の根かぁ。
 一体どんな味なんだろう?
 そう思って、小さなかけらを味見しようとした所で、タマちゃんから待ったがかかる。

「あ、待って! それは生で食べられない事もないけど、刺激が強いから、乾燥させた方が良いよー」
「そうなんだ。じゃあ……さっき教えて貰った事を、早速やってみようかな」

 果樹園で使っていた燻製箱みたいなものは無いけど、キャシーさんに小さな木箱を貰い、逆さまにして空気を逃す穴を空ける。
 あとは、果樹園で教えて貰った通りにするんだけど……この洗って皮を剥いた炎の根は、薄くスライスしてもしっかりしているので、熱風を強くしても大丈夫な気がする。
 果樹園では、緩かな風だと聞いていたけど、ちょっと強めの風にしてしまおう。
 あと、火力も強めにして温度を高め……ついでに箱の中で熱風を回転させて、竜巻みたいな感じにする。
 とはいえ、あまり強くし過ぎると箱がもたないので、土魔法で箱を防御!
 あとは強力な熱竜巻で炎の根を乾燥させるっ!

「これで、どうかしらっ!」
「あ、あの、お嬢様。薬草を乾燥させる為に、三種類の魔法を多重起動するのはやり過ぎな気がします」
「あ、確かに同時に発動させたんですけど、これは初級魔法なんで大した事がないんですよー」
「えっと、宮廷魔道士でも、二重起動すら難しいときいた事があるのですが。あと、魔力の消費が激しいとか……」

 何故かキャシーさんが困惑しているけど、特に問題は無いんだけどなー。
 そんな事を考えつつ、魔法を止め、箱を開けてみると、籠の上に乾いた炎の根があった。
 ドライフルーツみたいに濃縮される……まではいっていないけど、乾燥はしているかな。
 まずは炎の根の匂いを嗅いでみて……ん? これ、知っている香りな気がする。
 何だっけ? 洗って皮も剥いたのに土の香りがして、黄色くて……アレかな?
 食べたらポカポカするっていう話だし、カレーとかに使われるターメリックなのかも!

「アリスー。何か思いついたのー?」
「思いついたと言えば思いついたんだけど、ちょっと足りない物が多過ぎて、どうしようかなって思って」
「そうなんだー。一応伝えておくと、この炎の根を食べると、病気に罹りにくくなるのと、お肌が綺麗になる効能があるよー!」

 やっぱりターメリックだ。
 免疫力が高められ、肌が綺麗になるのと、この見た目と香り……間違いない!
 とはいえ、どうやって使おうかなと考えていると……キャシーさんがターメリックを齧りだしたっ!?

「え? キャシー……さん?」
「美肌……これを食べれば、スベスベでツヤツヤのお肌に……」
「あ、あの、こういうのって、一気に食べると身体に良くなくて……キャシーさーんっ! 話を聞いてーっ!」

 異世界でも、女性は肌を気にしているのね。
 じゃあ、食事にも気を遣おうよ……。
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