料理の上手さを見込まれてモフモフ聖獣に育てられた俺は、剣も魔法も使えず、一人ではドラゴンくらいしか倒せないのに、聖女や剣聖たちから溺愛される

向原 行人

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挿話6 真面目に生きる事にした悪漢コンビのアニキ分

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「……は!?」
「……アニキ。俺の目がおかしくなったみたいで……アイツらがドラゴンを倒したように見えるんだが」
「いや、俺にもそう見える。一体どうなっているんだ!?」

 俺が呼び寄せてしまったドラゴンは、空を飛んで口から炎のブレスをはき、並の魔法を完璧に防ぐ竜の鱗に身体が包まれている、最強の魔物だ。
 冒険者ギルドへ連絡し、S級冒険者パーティを派遣してもらうか、騎士団に出てきてもらうしかないハズなんだが……それを見習い冒険者がたった三人で倒しただと!?
 そんなバカな事がある訳が……い、いや、待てよ? そう言えば聞いた事があったな。

「アニキ! に、逃げよう! 俺たちはとんでもない奴らを相手にしていたんだ! ドラゴンを倒すような奴らに勝てっこないよ!」
「まぁ待て。落ち着け。いくら金持ちで、マジックアイテムを沢山持っていようと、たった三人でドラゴンに勝てると思うか?」
「いや……それは、無理だと思うけど」
「だろ? だが、一つ思い当たる節がある。メタモル・ラビットって聞いた事はないか?」
「……?」

 まったく、こいつは……常日頃からアンテナを張って、いろんな情報を収集しろと言っているのに。

「メタモル・ラビットってのはな、簡単に言うと、変身魔法を使うウサギなんだ。弱い魔物が生きていく為に、強い魔物のフリをするんだ」
「なるほど。でも、それとドラゴンに何の関係が?」
「だからアイツらが倒したのが、そのウサギだっていう話だよ。見た目はドラゴンでも、中身は弱い。だが、倒すとその姿のままの魔物の素材を得られる、超ラッキーな魔物なんだよ。アイツら、ドラゴンの鱗を沢山拾っていただろ? おそらく、あの鱗一枚でも凄い金額で売れるぜ」
「じゃあ俺たちも、その弱いウサギを倒せば大金持ちになれるのか!?」
「そういう事だ。考えても見ろ。もしもこの辺にドラゴンが棲息していたら、今頃もっと大騒ぎになっているだろ」

 そう……そうなんだよ。
 そもそも、俺の草笛スキルは魔物を集める事が出来るが、こんなスキルでドラゴンなんかが来る訳がないんだ。
 メタモル・ラビットは遭遇したら超ラッキーな激レアの魔物で、戦ってみるまで分からないのが難点だが、ここは冒険者ギルドの敷地だからな。
 初心者用に、メタモル・ラビットを繁殖させていたりするのかもしれない。

「よし! どうやらここで草笛スキルを使うと、メタモル・ラビットを呼ぶ事が出来るらしい。こいつで俺たちも大金持ちだ!」
「だけどよ、アニキ。もしもだ。もしも、アイツらが倒したのが本物のドラゴンだったら?」
「そんな訳あるか。だいたい、使えばドラゴンにすら勝てるマジックアイテムなんかがあったら、今頃騎士団が全員それを使っているだろ。それより、やるぜ」

 アイツらは遠くまで吹き飛ばしたドラゴン――もといメタモル・ラビットの傍で旨そうに飯を食っているから、それなりに離れている。
 次に現れたメタモル・ラビットは、奴らに横取りされず、俺たちがいただくぜっ!
 早速、草笛スキルを使い、今度は逃げずにその場で待っていると、

「おぉっ! ご、ゴールデン・ビートルだっ!」
「す、すげぇっ! 全身が金で出来ている魔物だっ!」
「いいか、よく聞け。アレを捕まえて売れば、家が建てられる程の金になる。だが、大型犬くらいの大きさしかないが、パワーはあるから……じゃなかった。メタモル・ラビットか。よし、倒すぞ!」

 ドラゴンよりもレアなゴールデン・ビートルが現れるなんて、やっぱりここはメタモル・ラビットが出まくる場所なんだ!
 本物だったら、物凄く重い身体で体当たりされ、ひとたまりもないが、あれは偽物のメタモル・ラビットだと分かっている。

「さぁ来いっ! ……うごぁぁぁっ!」
「あ、アニキッ!? くそっ! アース・ウォール……なっ!? 土の壁を突き破って……ぐへぇぇぇっ!」

 マジかよ。この強さは、本物……どうして俺たちの時だけ本物が来るんだよっ!

「あ! アニキ……ゴールデン・ビートルがアイツらの所へ……」
「へっ! 旨そうに飯を食っているからだ。俺たちみたいに吹き飛ばされれば良いんだよ。見てろ……は?」
「あ、アニキ。あの男が、殴ったら遠くへ吹き飛んで……マジで!?」

 嘘だろ!? あの強さは本物のゴールデン・ビートルで……も、もしかして、やっぱりあのドラゴンも本物だったのか!?

「アニキ……逃げよう」
「そうだな。金輪際、アイツらに関わらないようにしよう」

 ここで見習い冒険者から僅かな金品を巻き上げて生活していたが……奴らから敵視される前に、もう足を洗おう。
 この怪我が治ったら、真面目に生きるんだ……。
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