大自然を司る聖女、王宮を見捨て辺境で楽しく生きていく!

向原 行人

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第2章 辺境の地で快適に暮らす土の聖女

第60話 地面が大好きなエレンさん

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 セマルグルさんがエレンさんを咥えて空高く飛び立ち……数分経ってから戻って来た。
 草むらの上に倒れ込んだエレンさんが、「地面……地面だ。地面大好き」と言って顔を埋めているんだけど、大丈夫だろうか。

「セマルグルさん。何があったの?」
「いや……少し、物言いを正せと諭したのだが、喋ったのがマズかったのだろうな。あの女を落としてしまってな」
「えぇっ!?」
「いや、ちゃんと空中でキャッチしたぞ? だから、問題ない。うむ……問題ないのだ」

 えーっと、とりあえずフォローはしておいた方が良いわよね?

「エレンさん。大丈夫?」

 私が声を掛けると、エレンさんがビクッと身体を震わせ、凄い勢いで起き上がり、両膝を揃えて座り……こ、これは正座!?

「せ、聖女セシリア様! こ、これまでの私の言動を、どうか……どうかお許しをっ!」
「あ、あの……私は別に怒ってないからね?」
「ひぃっ! 空は……空は勘弁してくださいぃぃぃっ!」

 ど、どうしよう。正座のまま頭を地面に押し付けて……えっと、これはいわゆる土下座!?
 そんな事しなくて良いからね?

「あ、そうだ。ちょっと待ってね」

 エレンさんを落ち着かせるため、お湯を沸かして、ショウガとリンゴをすりおろした物を入れたら、砂糖を少し。
 それをコップに注いで、エレンさんへ。

「はい、どうぞ。身体が温まるし、リラックス出来るわよ」
「……? ……あ、温かいです」
「ゆっくり飲んで……えーっと、エレンさん。落ち着いた?」

 エレンさんが私とセマルグルさんを交互に見ながら、激しく頷くけど……本当に大丈夫かな?

「ところで、何か私に依頼があったのでは? ソースがどうとか」
「あ、はい。えーっとですね。実は……」

 落ち着いたエレンさんが、豆を使った調味料や食材を作っていて、マヨネーズみたいに流行らせたいという話をしてくれた。
 しかも調味料は、醤油だけでなく、お味噌まで作っているのだとか。

「ソイソースとミソは、エレンさんたちが作っているんですねっ! 凄いっ! 作ってくれてありがとうっ!」
「え? ソイソースはまだしも、ミソも知っているのか? いえ、知っているのですか?」
「えぇ。もしかして、豆腐や豆乳もあるのかしら? あ、私が言っている豆腐っていうのは……」

 エレンさんに豆腐や豆乳について説明すると、そのままトーフという名前で存在する事や、ソイミルクという豆乳があるという事を教えてくれる。

「……よく、トーフの事をご存じですね。かなり知名度が低いのに」
「そうなの? お味噌汁……ミソスープに、トーフを入れた料理なんて、毎日でも食べられるわよ?」
「あー、わかります。優しい味で、美味しいですよね」
「えぇ。ワカメや油揚げを入れても良いわよね。そういえば、ミソは赤ミソ? それとも白ミソ?」
「え? ミソは茶色ですけど」
「そうなんだけど……実物を見た方が早いわね! エレンさんが作っているというミソは、何処に行けば手に入りますか?」
「あ、それならここに。使ってもらおうと持ってきています」

 そう言って、エレンさんが大きな葉っぱに包まれたミソを取り出し……これは合わせ味噌っぽいかな?
 早速お味噌汁を作る事に。
 具は大根とネギだけのシンプルな物にして……あぁぁぁ、久しぶりのお味噌汁っ! 懐かしいっ!

「……材料が違うのですかね。我々が作るミソスープより、遥かに旨い」
「まぁセシリアが作ったからな。大抵の物は、セシリアが作るととんでもなく旨くなるのだ」
「そうだよねー。セシリアのご飯は、本当に美味しいもんねー」

 エレンさんだけでなく、セマルグルさんやヴォーロスもお味噌汁で、ホッとしたところで、

「エレンさん。おミソ……何か考えてみますね」
「おぉっ! ありがとうございますっ! 是非、お願いしますっ! ……とりあえず、ちょっと横になって良いですか? 色々あり過ぎて、疲労が……」

 エレンさんがぐったりしてしまったので、再び家で休んでもらう事になった。
 よく考えたら、遠いところから歩いて来たのだったわね。
 暫く、ゆっくり休んでもらう事にした。
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