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第2章 辺境の地で快適に暮らす土の聖女
第59話 和風パスタに驚く女性
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「おぉ! このパスタは今まで食べた事の無い味だな。キノコと、刻まれた葉っぱも旨い!」
「それは大葉っていうの。良い香りでしょ。和風……私の故郷の味付けにしたパスタなの」
ベーコンとキノコを炒めて醤油とバターで味付けしたら、パスタを混ぜて、仕上げに刻んだ大葉を乗せた、和風パスタなんだけど、セマルグルさんもヴォーロスも、美味しそうに食べてくれた。
一方で、セマルグルさんが席に着かせた女性は、パスタの匂いを嗅ぎながら、物凄く困惑している。
「これは……パスタにソイソースを混ぜたのか?」
「えぇ。醤油……じゃなくて、ソイソースとバターの組み合わせは最強ですよね」
「ソイソースとバターとパスタ!? な、何なのだ、その意味不明な組み合わせは!」
女性の質問に答えているけど、その女性は未だにパスタを口へ運ぼうとはしない。
醤油とバターの組み合わせがダメかな? バター醤油は美味しいのに。
まぁでも、和風パスタっていうのが、受け入れられない……というのなら、わかるかも。
例えば私だって、酢飯にフルーツが乗せられて、フルーツ寿司って言われたら、えっ!? ってなるだろうし。
そう思っていたら、セマルグルさんが口を開く。
「ふむ。この者は食わず嫌いか。とりあえず、冷めてしまう前に食べた方がお主の為だぞ」
「ひぃっ! た、食べますっ! 食べますぅぅぅっ!」
そう言って、女性が慌ててフォークを手に取ったけど、落ち着いて普通に食べて欲しいかな。
念の為、コップに飲み物を注いでいると、
「……っ!? な、何だ、このパスタはっ!? 美味しい……ソイソースとバターが反発し合わず、しかもパスタに合うなんて知らなかった!」
目を丸くして、勢いよく食べ始めた。
作った私としては嬉しいけど……あぁぁっ! ほら、やっぱり!
「……ぐっ!? み……水……」
「これを飲んで」
「……ふぅ。ありがとう。随分と替わった味と色の水だが、これは?」
「え? 何ってお茶だけど?」
「お茶? いやいや、お茶がこんな緑色な訳がないだろう。普通のお茶は赤茶色だが」
あー、そっか。
異世界のお茶は紅茶しかないのかな?
「これは緑茶っていうお茶よ。あと、ソイソースとバターは合うでしょ? ベーコンやキノコにも合うのよね」
「あぁ、こんな味のパスタは初めて食べたよ……えっと、貴女が噂の聖女様なの?」
「正確に言うと、私は元聖女なんだけど……おそらく、その聖女ね」
「なるほど。私はダークエルフの長の娘、エレンだ。頼む! 貴女のこの料理の腕で、どうかマヨネーズに勝るソースを作ってくれ! このソイソースを使って」
「どういう事?」
エレンさんに話を聞いてみると、ダークエルフの村では、代々大豆を使った調味料を作っているのだとか。
どうやらソイソースとミソに、豆腐を作っているみたい。
ミソと豆腐……凄い! もうそれだけで、お味噌汁が作れちゃうわよね?
それだけで十分凄いと思ったんだけど、でも何故かダークエルフの村がマヨネーズを敵視しているみたい。
「ほほぅ。我の大好物であるマヨネーズが嫌いと申すのか」
「え!? ち、違うんですっ! 嫌いとかじゃなくて、私もマヨネーズは美味しいと思っていますよっ! ほら、このサラダだってマヨネーズと一緒に食べ……えっ!? ど、どうしてっ!? このレタスは美味し過ぎるっ! これもマヨネーズの力なのかっ!?」
「あー、セシリアが生み出したレタスだからじゃないかなー? セシリアが作った野菜はもの凄く美味しいんだよねー。一度食べたら、これまでの野菜は食べられなくなるよー?」
セマルグルさんに迫られ、サラダを食べたエレンさんがまたもや驚き、ヴォーロスが補足する。
まぁ私が生み出すのは日本の、品種改良された野菜だからねー。
「聖女様っ! ソースを……ソースを作るんだっ!」
「……お主。セシリアが何も言わぬから見逃してやっておるが……先程から少々物言いが図々しくないか? どうやら身を持ってわからせる必要が……」
「違うっ! これには訳が……ちょ、待っ……お助けぇぇぇっ!」
せ、セマルグルさんっ!? 服を咥えて空高くへ飛ぶのはやめてあげてっ!
メチャクチャ怖そうだからっ!
「それは大葉っていうの。良い香りでしょ。和風……私の故郷の味付けにしたパスタなの」
ベーコンとキノコを炒めて醤油とバターで味付けしたら、パスタを混ぜて、仕上げに刻んだ大葉を乗せた、和風パスタなんだけど、セマルグルさんもヴォーロスも、美味しそうに食べてくれた。
一方で、セマルグルさんが席に着かせた女性は、パスタの匂いを嗅ぎながら、物凄く困惑している。
「これは……パスタにソイソースを混ぜたのか?」
「えぇ。醤油……じゃなくて、ソイソースとバターの組み合わせは最強ですよね」
「ソイソースとバターとパスタ!? な、何なのだ、その意味不明な組み合わせは!」
女性の質問に答えているけど、その女性は未だにパスタを口へ運ぼうとはしない。
醤油とバターの組み合わせがダメかな? バター醤油は美味しいのに。
まぁでも、和風パスタっていうのが、受け入れられない……というのなら、わかるかも。
例えば私だって、酢飯にフルーツが乗せられて、フルーツ寿司って言われたら、えっ!? ってなるだろうし。
そう思っていたら、セマルグルさんが口を開く。
「ふむ。この者は食わず嫌いか。とりあえず、冷めてしまう前に食べた方がお主の為だぞ」
「ひぃっ! た、食べますっ! 食べますぅぅぅっ!」
そう言って、女性が慌ててフォークを手に取ったけど、落ち着いて普通に食べて欲しいかな。
念の為、コップに飲み物を注いでいると、
「……っ!? な、何だ、このパスタはっ!? 美味しい……ソイソースとバターが反発し合わず、しかもパスタに合うなんて知らなかった!」
目を丸くして、勢いよく食べ始めた。
作った私としては嬉しいけど……あぁぁっ! ほら、やっぱり!
「……ぐっ!? み……水……」
「これを飲んで」
「……ふぅ。ありがとう。随分と替わった味と色の水だが、これは?」
「え? 何ってお茶だけど?」
「お茶? いやいや、お茶がこんな緑色な訳がないだろう。普通のお茶は赤茶色だが」
あー、そっか。
異世界のお茶は紅茶しかないのかな?
「これは緑茶っていうお茶よ。あと、ソイソースとバターは合うでしょ? ベーコンやキノコにも合うのよね」
「あぁ、こんな味のパスタは初めて食べたよ……えっと、貴女が噂の聖女様なの?」
「正確に言うと、私は元聖女なんだけど……おそらく、その聖女ね」
「なるほど。私はダークエルフの長の娘、エレンだ。頼む! 貴女のこの料理の腕で、どうかマヨネーズに勝るソースを作ってくれ! このソイソースを使って」
「どういう事?」
エレンさんに話を聞いてみると、ダークエルフの村では、代々大豆を使った調味料を作っているのだとか。
どうやらソイソースとミソに、豆腐を作っているみたい。
ミソと豆腐……凄い! もうそれだけで、お味噌汁が作れちゃうわよね?
それだけで十分凄いと思ったんだけど、でも何故かダークエルフの村がマヨネーズを敵視しているみたい。
「ほほぅ。我の大好物であるマヨネーズが嫌いと申すのか」
「え!? ち、違うんですっ! 嫌いとかじゃなくて、私もマヨネーズは美味しいと思っていますよっ! ほら、このサラダだってマヨネーズと一緒に食べ……えっ!? ど、どうしてっ!? このレタスは美味し過ぎるっ! これもマヨネーズの力なのかっ!?」
「あー、セシリアが生み出したレタスだからじゃないかなー? セシリアが作った野菜はもの凄く美味しいんだよねー。一度食べたら、これまでの野菜は食べられなくなるよー?」
セマルグルさんに迫られ、サラダを食べたエレンさんがまたもや驚き、ヴォーロスが補足する。
まぁ私が生み出すのは日本の、品種改良された野菜だからねー。
「聖女様っ! ソースを……ソースを作るんだっ!」
「……お主。セシリアが何も言わぬから見逃してやっておるが……先程から少々物言いが図々しくないか? どうやら身を持ってわからせる必要が……」
「違うっ! これには訳が……ちょ、待っ……お助けぇぇぇっ!」
せ、セマルグルさんっ!? 服を咥えて空高くへ飛ぶのはやめてあげてっ!
メチャクチャ怖そうだからっ!
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