4 / 13
第4話 バイクとはとても格好いいと思う件について
しおりを挟む「そぉおおおい!!!」
ズパアアアアンッ!!!!!
大袈裟に振り下ろされた大剣は、これまた大袈裟な効果音と何故か発生した衝撃波でゾンビ達のことごとくを討ち滅ぼした。
「フッ、またつまらぬものを斬ってしまったぜ」
何となく格好つけたけど、いや衝撃波出るとかおかしいだろ。僕は大剣を振り下ろしただけだぞ。それがなんでこうなるんだよ。便利だし格好いいからいいけどさ。
「それにしても中々に倫理観が狂い始めてる気がするなぁ」
目の前には事切れたゾンビ達が道路を埋め尽くしていた。この光景に微塵も動じる事はなく、むしろレベルが上がって嬉しいまである。
ここまで来ると自分の倫理観を疑いたくもなるね。自分で言うのもいささか尺ではあるが、僕はついこの前まで単なる引きこもりの陰キャだ。そんな人間がいくらそれをする能力があるからって、なんの躊躇もなく元人間を殺せるだろうか。既に死んだ存在と言えばそこまでだが、いささか違和感は残る。思い当たるとすれば、
「実は頭の中とか少し弄られていたりして」
僕だけRPGっぽい謎の力を得ている訳だし、この可能性は大いにあり得る。
例えばこの能力がゾンビと戦うために与えられたものだとしら、戦闘への忌避等の感情は邪魔でしかない。
でもまさかなぁ。本当にそうだったら怖いしこの考えはここで止めることにしよう。仮にそうだとしてもやらなければ死あるのみ。そんなことで悩んでいてもしょうがないし、死ぬよりマシだ。
しばらく当てもなく彷徨っていると商店街に出会した。
「本当に誰もいないんだよなぁ」
商店街。僕も引きこもる前は何度も足を運んだ記憶が有る。
眼前に広がる光景は通常であればそれなりに人で溢れているはずだった。それが今やゾンビ以外子供一人すらいやしない。これじゃ一人で廃墟を探索しているようなものだ。まぁ、ここを捨てて避難したかゾンビになったかの二択なのだから、この言い方はあながち間違っていないか。
「おや、あれは……」
しばらく、このシャッター街レベルに過疎した商店街をぶらついていると漆黒の輝きに目が惹かれた。
お、バイクだ。
◆
「おー、中はこうなってんのね」
バイクを見つけた後、気が赴くままにバイク店に突入。某タイムスリップ系ヤンキー漫画の影響で憧れていたのだ。若干ね、若干。
普通であれば隠キャにこの手の店は入れないのだが、世界は滅んでいると変わらない状況なので関係なし。こういう面では案外こういう世界もいいのかもしれない。
中にはこれでもかと光沢を放つピカピカに磨かれたバイク達がずらりと並んでいた。まぶしっ。
この輝きは並大抵の物ではない。素人目から見ても相当な時間をかけて整備しているのが分かるし。店主のバイク愛が伺えますね。
「アぁaアァ……!」
テンション高めに店内をうろちょろしていると奥からお馴染みのゾンビさんが出て来た。
「なん…だと…」
一瞬目の前の光景を疑った。ゾンビなんてものに今更驚くなんて事はないが、目の前にいるやつは例外だ。
だって、すげー巨乳の姉ちゃんなんですもの。恐らくはここの店員で、Tシャツに油汚れに塗れたツナギを身につけた整備士スタイル。
ただ一つ言えることがあるとすればつなぎ巨乳は素晴らしいということだ。何あれ尊いんですけど。生前の姿を拝めなかった事を大変悲しく思う。
「まぁ、その悪いけど介錯代って事で一台貰ってくね」
ツナギ巨乳の損失は人類全体の損失に匹敵するが、既に手遅れなので致し方ない。一思いに斬り伏せた。
なお、おっぱいはゾンビなのにとても柔らかめでした。
◆
「よし! 君に決めた!!」
店頭に置かれている黒光りする大型バイクにビシリと指を差す。人生で一度は言ってみたいセリフでした。
機種名はハーレーだったか。僕でも聞いたことがある有名なバイクだ。細かい種類は良くわからないが漆黒の輝きが決め手でした。免許は当然ないがなんのその。この世界はもはや法を取り締まる警察はおらず、徘徊しているのはゾンビばかりだ。
まぁ、ぶっちゃけ燃料の補給やメンテナンスの手間を考えると、今の僕からしたら走った方がいいのだが、そこはロマンという奴だ。金銭的にも陰キャ的にも普通に暮らしていたら手を出さなかった代物。テンションも珍しく爆上がり的なやつ。
「うっひょー! なんかすっげーかっこいいーー!! 待っていたぜこの瞬間ときをよォ!!」
免許どころかお金もないが、こんな世界ではモーマンタイ。盗んだバイクで走り出したところで何も言われないのだ。
「ふむふむ、これがエンジンでこのアクセルを回せばいいわけね?」
善は急げと言わんばかりに、早速バイクへとまたがりハンドルに手をかける。流石に高価な物だけあって、指先から伝わる重厚感が何とも言えぬ感覚をもたらす。
「視界は良好。前方に障害物なしと」
ここにくる道すがらゾンビを排除したので、無駄な横槍も入らないだろう。こういう時に余計な事はいらない。こういう時はね、誰にも邪魔されず、自由で何というか救われてなきゃダメなんすよ。
余計な御託はもううい。いざ、自由の旅路へと!
僕は期待を込めてアクセルに目一杯の力を込めた!!
普通にこけました。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜
平明神
ファンタジー
ユーゴ・タカトー。
それは、女神の「推し」になった男。
見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。
彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。
彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。
その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!
女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!
さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?
英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───
なんでもありの異世界アベンジャーズ!
女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕!
※不定期更新。最低週1回は投稿出来るように頑張ります。
※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう
お餅ミトコンドリア
ファンタジー
パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。
だが、全くの無名。
彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。
若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。
弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。
独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。
が、ある日。
「お久しぶりです、師匠!」
絶世の美少女が家を訪れた。
彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。
「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」
精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。
「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」
これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。
(※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。
もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです!
何卒宜しくお願いいたします!)
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります
内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品]
冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた!
物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。
職人ギルドから追放された美少女ソフィア。
逃亡中の魔法使いノエル。
騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。
彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。
カクヨムにて完結済み。
( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる