5 / 13
第5話 生存者に遭遇したけど嫌な予感しかしない件について
しおりを挟む放浪生活一〇日目。
レベルは順調に上がり、ゾンビに苦戦することも特になかった。まぁ、元々ステータスやら大剣やらの性能が凄すぎてろくに苦戦した記憶ないけど。ていうか、レベルが上がり過ぎて軽く人類を辞めてるまである。この前とか油断してゾンビに噛まれたけど、歯形すらつかなかったもの。ぱねぇ。
「くんくん、やっぱり仄かに漂うスパイシー……」
思えばここ数日衣服を洗濯した記憶がない。
衣服から迸るフレーバーが漂っていた気もするが、いつの間にか何も感じなくなってしまった。鼻に刺激が無くて喜んでいたが、冷静に考えたら鼻が馬鹿になっているだけだった。
「うへぇ……」
前方から漂う強烈な腐臭に思わず顔をしかめた。
僕のホームレスばりに漂うフレグランス(鼻がバカになっているから多分だけど)も何のその。
匂いの震源地に向かうと蟻のように群がるゾンビ達がそこにいた。
「もしかして生存者でもいるのか……?」
よくよく見るとゾンビたちは一つのビルに群がっている。彼らの生きた人間を襲う習性を考えればそう考えた方が自然だ。
『ルルルルルルルル』
「わ、大剣ちゃん」
どうするかと腕を組み悩んでいると、僕の意思をガン無視決め込んで勝手に大剣ちゃんが虚空から現れた。世界が変わってからのこの奇妙な相棒である大剣ちゃんは、早くも殺る気マンマン。物騒な事この上ない奴ですこと。
「ま、とりあえず経験値になるし殲滅しますかねっ」
確かい大剣ちゃんが言う? ように目の前の奴らをどうこうしない限り話しは進まない。
群がるゾンビ達を見据えてコキコキと首を鳴らす。こういう動作するとなんか歴戦の戦士っぽいよねっ。え、そんな事ない? そんなー。
◆
「アぁaアァアアアアア……!!!!!」
血気盛んにも僕めがけて群がる亡者達。美少女だったらまだしもこんな奴らに群がられたところで一ミリも嬉しくない。
全くもって嬉しくないのでさっさとご退場願おう。
大剣を強く握り、腰を大きく捻らせる。
「秘技ブーメランスネイク!!」
オタサーの姫に群がるオタクばりの勢いで迫り来るゾンビ群。しかしオタク達の運命と同様に、彼らは指一本ですら僕に触れることは叶わない。
思いっきり振りかぶり、ぶん投げた大剣がブオンブオンと大気を掻き鳴らす。その勢いたるやヤリチンチャラ男のナンパ速度も真っ青なもので一回転する毎に、十数を越えるゾンビ達の上半身と下半身がおさらばしている。
大剣は弧を描くように回転していき、遂には建物をグルリと周り僕の元へと。パシッと格好つけて掴み取る。凄い、レベルアップにより向上した僕の身体能力まじハンパない。普通こんな事出来ないはずなんだけどね。
時間にして数十秒。たったそれだけだ。たったそれだけで、あれだけいたゾンビ達はほぼ全滅してしまった。
「僕、凄くね? これはもうなろう系主人公ですわ。ヒロインいないけど」
中々にチート能力だと思うんだけど、まさかのヒロインどころか女性にすら会わないんですけど。チートとハーレムはセットなんじゃないんですか。僕も早く美少女達に『あれ? 僕なんかやっちゃいました?』とかドヤ顔でかましたいよぉ。
「アぁaアァ……!」
そんな事を願ったところで僕に寄ってくるのはゾンビぐらいってか。
ていうか、数体がまだ生き残っていたか。流石にあの大雑把な攻撃じゃ撃ち漏らしが出るのも仕方ないか。
「普通のキック!」
ゾンビの数体程度であればわざわざ大剣を使うまでもない。何の変哲もない蹴りで丁寧に沈めていく。うわ、単なる蹴りでゾンビが真っ二つになる。
「さてと、このゾンビの集まり具合だと生存者がいそうだね」
戦闘は終わった。辺りのゾンビは粗方片付けたし、これでしばらくは安心だろう。
ゾンビ達は明らかに建物を囲う様に群がっていた。奴らは映画よろしく生きた人間を執拗に襲うみたいだから、ほぼ生存者がいるだろう。
本音を言えば人見知りの隠キャなので、会いたいと言うわけでもないが状況が状況だ。そろそろネットだけではなく生の人間から情報収集をしたいところだ。
「ごめん下さーい」
ビルの大扉をノックするが反応は無い。何となく人の気配はあるからいないという事はないだろう。ということは、こちらを警戒してどうするべきか悩んでいると言ったとこか。
「一応確認したから中に入りまーす」
自分で言っていて頭のおかしい理論だとは思うが、埒が明かないし致し方ない。ベキバキゴキといろんな物が引きちぎられる音がするが気にしない。力任せにスライド式ドアをこじ開けた。
「おう!? なんかすげぇ音したな!?」
「だ。誰か入ってきたぞ……?」
「お、おい、誰か見に行けよ」
「ゾンビじゃないねーよね……?」
中に入ると複数人の声が耳に届いた。
声の数からして四、五人程度の男女グループだろうか。おそらく年代は近く、そして明らかに陽キャグループ。ウェイ特有の声の軽さとチャラさが言葉の端々に感じられる。つまりは僕の敵だ。
「やっぱり生存者じゃね?」
「あれ? 外のゾンビがなんか消えてね?」
「まじで? あーしらついてんじゃん」
どうしようか悩んで立ち止まっていると奥の方から、やはり男三人女子一人の陽キャグループがゾロゾロと出てきた。どーしよ、もう帰りたくなってきた。陽キャ達って学校とかでも勝手に僕の机使ったりとかしてくるから嫌いなんだよね。
「あれ? もしかして同じクラスの北原じゃね?」
そのまま背中を向けてBダッシュを決め込もうかと考えていた矢先、衝撃の事実が判明。
まさかの(見覚えないけど)顔見知りだったとかマジで勘弁して欲しい。いやほんとマジで。
神様は僕の事嫌いなのかなと思うレベル。まぁ僕も神さまとか嫌いだけどねバーカ!
とにかくこの状況、ろくでもない予感しかしない件について。
◆
北原ムンク
Lv10
職業:不死殺し
HP 290
MP 21
SP 42
筋力 23
耐久 19
俊敏 22
魔力 10
運 14(-999)
skill –
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ただのFランク探索者さん、うっかりSランク魔物をぶっとばす 規格外ダンジョンに住んでいるので、無自覚に最強でした
むらくも航
ファンタジー
旧題:ただのFランク探索者さん、うっかりSランク魔物をぶっとばして大バズりしてしまう~今まで住んでいた自宅は、最強種が住む規格外ダンジョンでした~
Fランク探索者の『彦根ホシ』は、幼馴染のダンジョン配信に助っ人として参加する。
配信は順調に進むが、二人はトラップによって誰も討伐したことのないSランク魔物がいる階層へ飛ばされてしまう。
誰もが生還を諦めたその時、Fランク探索者のはずのホシが立ち上がり、撮れ高を気にしながら余裕でSランク魔物をボコボコにしてしまう。
そんなホシは、ぼそっと一言。
「うちのペット達の方が手応えあるかな」
それからホシが配信を始めると、彼の自宅に映る最強の魔物たち・超希少アイテムに世間はひっくり返り、バズりにバズっていく──。
クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる
アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。
でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。
でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。
その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。
そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。
1×∞(ワンバイエイト) 経験値1でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました!
マツヤマユタカ
ファンタジー
23年5月22日にアルファポリス様より、拙著が出版されました!そのため改題しました。
今後ともよろしくお願いいたします!
トラックに轢かれ、気づくと異世界の自然豊かな場所に一人いた少年、カズマ・ナカミチ。彼は事情がわからないまま、仕方なくそこでサバイバル生活を開始する。だが、未経験だった釣りや狩りは妙に上手くいった。その秘密は、レベル上げに必要な経験値にあった。実はカズマは、あらゆるスキルが経験値1でレベルアップするのだ。おかげで、何をやっても簡単にこなせて――。異世界爆速成長系ファンタジー、堂々開幕!
タイトルの『1×∞』は『ワンバイエイト』と読みます。
男性向けHOTランキング1位!ファンタジー1位を獲得しました!【22/7/22】
そして『第15回ファンタジー小説大賞』において、奨励賞を受賞いたしました!【22/10/31】
アルファポリス様より出版されました!現在第四巻まで発売中です!
コミカライズされました!公式漫画タブから見られます!【24/8/28】
マツヤマユタカ名義でTwitterやってます。
見てください。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
MP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る
マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・
何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。
異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。
ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。
断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。
勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。
ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。
勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。
プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。
しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。
それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。
そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。
これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる