ゾンビ☆ファンタジー ~僕だけレベルアップするとかジャンル違うんですけど

みょっつ三世

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第10話 そうだ幼馴染を探しに行こう、と思った件について

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「ここが幼馴染がいるかもしれない町か」

 喧しくエンジン音を掻き鳴らす漆黒のバイクから降りる。

 これが神降町か。近年急激に発展した町だ。やたらガラス張りのビルが立ち並ぶ光景には圧巻され、同時にその尋常ではない開発具合もよく分かる。僕の記憶が正しければ数年前までは田んぼと畑しかないクソ田舎と言っても過言ではなかったはずだ。まぁそんな立派なビルもガラスははひび割れだらけで、黒煙を吐き出しているが。そんな世紀末デストロイな有様なのでとても見れたものじゃないんですけどね。

 身も蓋も無い言い方をすればここは滅茶苦茶発展した町で、その町並みがゾンビが溢れて破壊されたせいで余計に世紀末感が溢れ出ている場所ということだ。そして幼馴染の陽乃が通う学園がある町でもある。

「わっぷ! ……なんだこりゃ?」

 遠目に破壊されつくしたビル群を眺めながら文明の脆弱さ具合にワビサビを感じていると、急に視界が暗くなった。風に流されてか顔に紐のような何かがぶつかったみたいだ。
 顔に貼り付いた何かを取り外すと、そいつは深紅の細い紐だった。これは女性用の髪留めだろうか。どこかで見たことあるかのような……。

 『ムーンク君! おはよう!!! ほらほらこんな美少女がいるんだからそんな冴えない顔しないの!』

 一瞬脳裏にアイツがよぎる。うざいぐらいに明るくて、邪険にしても鬱陶しいぐらいに絡んで来たアイツ。そして脳裏に浮かんだ光景の端には赤い紐がちらついていた。

 これは幼馴染みのリボン!?

 じゃあ、このリボンが来た方向は例の学園なのか。まさか……この先にアイツがいるかもしれない?

「陽乃っ!!!!!」

 気がつけば、僕はバイクもほっぽり出して駆け出していた。


 ◆


「アぁあA&#アアアアア……!」

 リボンを追った先に出くわしたのは、美少女でもなんでもなくお約束ゾンビさんだった。全然嬉しくない。分かっちゃいた。分かっちゃいたけど期待させられた手前、何だか釈然としない。挿絵だけで実装されないガチャ並みに腹ただしいんですけど。しかも、

「うわっ、滅茶苦茶うじゃうじゃいるやんけ」

 この前のビルとかの比ではない。学園へと続く道は見たこともないような数のゾンビたちで埋め尽くされていた。
 あの名前も知らないギャルが言っていた事は間違っていなかったようだ。確かに僕の住んでいる街と比べても桁違いに多い。

「ま、僕からしたらこんなのどうという事もないんだけどね」

 むしろ逆。効率の良いレベリング地帯だ!

 実は最近ゾンビを倒しても中々レベルが上がらなくなって来ていたのだ。ずっと最弱スライムばかり倒しても大した経験値は入らないということだろう。しかしだ、この数を一網打尽に出来るなら話は別だ。

 少数のゾンビは倒しやすい良いゾンビだ! 大多数のゾンビ達は教育された良いゾンビだ!!!
 楽しい楽しいレベル上げの時間だ! ヒャッハーーーーーー!!!!!


 ◆


『レベルアップしました』

 最後のゾンビを大剣で斬り伏せると、またいつもの機械的通知が脳内再生された。これでレベルもとうとう一五。身体能力もすんごいことになっている。
 更に大剣ちゃんも大変ご機嫌なようで、いつもよりも増して喧しい。

『グルルルルルルルル!!!!!!!』  

 ていうかあれ、なんかちょっと大きくなってね?

 やだこの武器怖い。唸る上に大きくなるとかもう呪われた装備じゃん。まぁ強力にも程がある武器なので使い続けるという選択肢しかないんだけどさ。
 とりあえず大剣ちゃんには一度インベントリに戻って頂いた。

 「ここが有名なあの神降学園か」

 眼前にそびえ立つ白亜の建造物を見上げる。

 神降学園はここら辺では有名な学園、というか全国的にも知らない人が少ないぐらいのネームバリューがある。この学園は全国から由緒正しい名家や資産家の跡継ぎ、得意な才能を持つもの等の様々な人間が集まるのだ。

 そこら辺の事情もありぱっと見だけでそれなりに金をかけている学校というのが嫌でも分かった。しかも、屋上にあるあれって、もしかして太陽光発電か。更にその隣には屋上菜園らしきものが見受けられる。ここには自給自足出来るような設備があるってことか?

「よっと」

 学園敷地はバリケードに囲われていたが、軽くジャンプしてヒーロー着地。

 近くから見る校舎は凄惨の一言で尽きた。当然、ここでもゾンビは猛威を奮った様で窓ガラスは割れ放題だし、そこら中に血痕が撒き散らされていた。外ほどゾンビはいないが、数体はフラフラと徘徊している。

「ここにもう生存者はいないのかもな……」

 自分でも落ち込んでいると分かるぐらい声に力が入らない。この状況では、やはり幼馴染はもう既に死んでいる可能性の方が高いのだろう。分かっていたことではあるが、こう目の当たりにすると落胆は隠せなかった。

 一応、中も見てみるか。生存者は居なくとも、何か手がかりがあるかもしれない。死体という落ちもありえるが。考え始めるとろくな思考が湧いてこない。とにかく今は先に進もう。

「ごめんくださーい」

 反応はない。ぼっちの寂しい男の声が木霊するだけだった。

 校舎内も当然にバリケードだらけだった。ということは、いるとしたら上の方か。この状況で学校に残っているのであれば階層毎にバリケードを設けて、救助が来るまで籠城し時間を稼ぐ事を選ぶはずだ。
 案の定、最上階まで上がると人の気配を感じられた。

「わ!? 誰か来た!?」
「外から見た感じだと男の人みたいね」
「つーか、一人か? 外にわんさかいるゾンビを一体どうやって倒したんだ?」
「どんな人ですかね……怖くない人だといいんですけど」

 声だけで判断すると女性だけしかいない?

 それってコミュ障の隠キャボッチにはかなりキツいんですけど大丈夫かな。やばい、もう帰りたくなってきた。
 だが、ここで足踏みしていても仕方ない。意を決して彼女らがいる教室に飛び込むと、信じられない光景が目に飛び込んだ。

 「あらあらやっぱり男の子だったみたいね」
 「どうしたんだ?、こいつ急に固まって?」
 「わぁぁぁぁ! 新しい人が来たね!!!」
 「……」

 僕を見た彼女らは三者三様というか四者四様の反応を示したがそれどころではない。やはり女性しかいなかったことや、想像以上に美少女揃いだったことも今はどうでも良かった。

 「はは……生きてたよ……」

 驚くべきことにそこにはアイツが、幼馴染の陽乃がいた。かれこれ一年は会話はおろか、会ってすらいなかったはずなのに一目で分かった。
 色々な感情がごちゃ混ぜになって訳が分からない。僕は気がつけば無意識に駆け出していた。






 北原ムンク
 Lv15
 職業:不死殺し

 HP  400
 MP   24
 SP    62

 筋力  33
 耐久 22
 俊敏 34
 魔力 15
 運  18(-999)

 skill –

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