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「おい、これを貸そう。兄がこういった類の話が好きでな。家に異世界にまつわる本が沢山あるんだ。よかったら読んでくれ」
朝、授業の準備をしているとエディスが机にどさっと何冊かの本を置いた。
「え!わざわざ持ってきてくれたんですか!?
本当にありがとうございます。大切に読みますね。本当に嬉しいです」
(エディスも優しいところがあるじゃないか…)
俺は冷徹だと思っていたエディスを見直す。
「…いや、実は兄の影響でこういう話が好きなんだ。宇宙とか、異世界とか…。話せる仲間が欲しかったから、ただそれだけだ。」
エディスは照れ隠しのように顔を背ける。
▷これを読んだら感想を伝えますね!
あんまりキャラじゃないですね。
面倒くさいから読まないかもです。
また選択肢が現れた。
「これを読んだら感想を伝えますね!沢山話したいです!」
心からの言葉だった。エディスが帰るための力になってくれるかもしれない。そんな希望に胸を打たれた。
すると突然、ピコンと音がなった。
“好感度10UP!!”
(好感度が上がった…?共通の趣味ができたからか…?攻略するならエディスが楽かもしれない。これからはエディスに狙いを定めていこう)
早く帰れるかもしれない。それは俺にとって何よりもの吉報だった。
「ちょっとあんた。確かにルシファー様に近づくなとは言ったけど、次はエディス様?飛んだ尻軽ね」
悪役令嬢の取り巻きが睨みつけながら声を荒げた。
放課後になると毎日悪役令嬢が絡んでくるという仕様にでもなっているのだろうか。
彼女たちも卑しい俺なんかに話しかけてこなくていいのに。
「2人を手玉に取ろうっていうんでしょ」
「エディス様も貴方が近付いていい人ではないわ。
気にしちゃいけないわ、パール。エディス様はこんな人に騙されるわけないもの」
「お気遣いありがとうございます、ステファニー様。私、エディス様のことが心配で心配で…」
瞳を潤ませる取り巻き。
俺は大きくため息をついた。
「えっと、バールさん?で合ってます?」
「パールよ!!」
「パールさんはエディス様とお付き合いされてるんですか?」
「そ、そういうわけじゃないけど…。私とエディス様は小さい頃から交流があるの!あんたのような下賎な奴にはわからない深い縁があるのよ!」
「それって結局他人じゃないですか。友達くらいエディス様が自由に決めればいいんじゃないですか?エディス様も嫌なら嫌っていうだろうし」
「な、生意気な…!」
取り巻きが手を大きく振りかぶった。俺は叩かれる覚悟を決めた。ここで下手に抵抗するともっと面倒になる。1発くらい食らったほうがマシだ。
その時ガチャッと教室のドアが開き、ルシファーが入ってきた。
ステファニーは目ざとく気づき、よろけたフリをする。
「きゃぁっ!あらら、よろけてしまってリリスさんにぶつかってしまいそうになったわ。パールさん大丈夫かしら?咄嗟に私を受け止めようと手をあげてくださったようだけど」
説明口調のわざとらしい言い振りに呆れそうになるが、ここで怒鳴りつけたって俺が不利になるだけだ。
「皆んな残って何してるんだい?」
「まあ!ルシファー様!リリスさんに色々と学校のことを教えてあげていただけでしてよ。リリスさんは入学したばかりで不慣れでしょうから、私達が助けてあげないと」
(白々しいやつだ)
「…そう。リリスに話があるからちょっと失礼するよ」
「それでは私達はこれで」
悪役令嬢たちは優雅な笑みを浮かべて去っていく。
俺は小さくため息をついた。
「彼女にはあまり関わらない方がいい、と言ってもあっちから関わってきてはどうしようもないよね」
ルシファーが困ったような笑みを浮かべる。
「平気です。あれくらい何ともないです。」
「困ったことがあったら本当に頼ってね。君の力になりたいんだ」
▷ありがとうございます!良かったら友達になってくれませんか?
どうしてそこまで気にかけてくれるんですか?
あんたに関わると碌なことがない。
「どうしてそこまで気にかけてくれるんですか?」
「実はずっと昔、君みたいな聖魔法使いに助けられたことがあるんだ。小さい頃に毒を飲んで生死を彷徨ったのを助けてくれた。恩返しをしたいと思っていたのに、ふらっと消えてしまったからね。その分までリリスに優しくしたいと思うのかもしれない…」
ルシファーにそんな暗い過去があったなんて。
俺は驚きで目を見張った。
何と声をかければいいのかわからなかった。
「聖魔法使いは国の、民の宝だ。私が優しくする分、国に還元してもらうよ?」
ルシファーはイタズラな笑みを浮かべた。
「はい!もちろんです!お役に立てるように頑張ります」
心の中で帰りたい気持ちとルシファーの力になりたい気持ちがせめぎ合った。
朝、授業の準備をしているとエディスが机にどさっと何冊かの本を置いた。
「え!わざわざ持ってきてくれたんですか!?
本当にありがとうございます。大切に読みますね。本当に嬉しいです」
(エディスも優しいところがあるじゃないか…)
俺は冷徹だと思っていたエディスを見直す。
「…いや、実は兄の影響でこういう話が好きなんだ。宇宙とか、異世界とか…。話せる仲間が欲しかったから、ただそれだけだ。」
エディスは照れ隠しのように顔を背ける。
▷これを読んだら感想を伝えますね!
あんまりキャラじゃないですね。
面倒くさいから読まないかもです。
また選択肢が現れた。
「これを読んだら感想を伝えますね!沢山話したいです!」
心からの言葉だった。エディスが帰るための力になってくれるかもしれない。そんな希望に胸を打たれた。
すると突然、ピコンと音がなった。
“好感度10UP!!”
(好感度が上がった…?共通の趣味ができたからか…?攻略するならエディスが楽かもしれない。これからはエディスに狙いを定めていこう)
早く帰れるかもしれない。それは俺にとって何よりもの吉報だった。
「ちょっとあんた。確かにルシファー様に近づくなとは言ったけど、次はエディス様?飛んだ尻軽ね」
悪役令嬢の取り巻きが睨みつけながら声を荒げた。
放課後になると毎日悪役令嬢が絡んでくるという仕様にでもなっているのだろうか。
彼女たちも卑しい俺なんかに話しかけてこなくていいのに。
「2人を手玉に取ろうっていうんでしょ」
「エディス様も貴方が近付いていい人ではないわ。
気にしちゃいけないわ、パール。エディス様はこんな人に騙されるわけないもの」
「お気遣いありがとうございます、ステファニー様。私、エディス様のことが心配で心配で…」
瞳を潤ませる取り巻き。
俺は大きくため息をついた。
「えっと、バールさん?で合ってます?」
「パールよ!!」
「パールさんはエディス様とお付き合いされてるんですか?」
「そ、そういうわけじゃないけど…。私とエディス様は小さい頃から交流があるの!あんたのような下賎な奴にはわからない深い縁があるのよ!」
「それって結局他人じゃないですか。友達くらいエディス様が自由に決めればいいんじゃないですか?エディス様も嫌なら嫌っていうだろうし」
「な、生意気な…!」
取り巻きが手を大きく振りかぶった。俺は叩かれる覚悟を決めた。ここで下手に抵抗するともっと面倒になる。1発くらい食らったほうがマシだ。
その時ガチャッと教室のドアが開き、ルシファーが入ってきた。
ステファニーは目ざとく気づき、よろけたフリをする。
「きゃぁっ!あらら、よろけてしまってリリスさんにぶつかってしまいそうになったわ。パールさん大丈夫かしら?咄嗟に私を受け止めようと手をあげてくださったようだけど」
説明口調のわざとらしい言い振りに呆れそうになるが、ここで怒鳴りつけたって俺が不利になるだけだ。
「皆んな残って何してるんだい?」
「まあ!ルシファー様!リリスさんに色々と学校のことを教えてあげていただけでしてよ。リリスさんは入学したばかりで不慣れでしょうから、私達が助けてあげないと」
(白々しいやつだ)
「…そう。リリスに話があるからちょっと失礼するよ」
「それでは私達はこれで」
悪役令嬢たちは優雅な笑みを浮かべて去っていく。
俺は小さくため息をついた。
「彼女にはあまり関わらない方がいい、と言ってもあっちから関わってきてはどうしようもないよね」
ルシファーが困ったような笑みを浮かべる。
「平気です。あれくらい何ともないです。」
「困ったことがあったら本当に頼ってね。君の力になりたいんだ」
▷ありがとうございます!良かったら友達になってくれませんか?
どうしてそこまで気にかけてくれるんですか?
あんたに関わると碌なことがない。
「どうしてそこまで気にかけてくれるんですか?」
「実はずっと昔、君みたいな聖魔法使いに助けられたことがあるんだ。小さい頃に毒を飲んで生死を彷徨ったのを助けてくれた。恩返しをしたいと思っていたのに、ふらっと消えてしまったからね。その分までリリスに優しくしたいと思うのかもしれない…」
ルシファーにそんな暗い過去があったなんて。
俺は驚きで目を見張った。
何と声をかければいいのかわからなかった。
「聖魔法使いは国の、民の宝だ。私が優しくする分、国に還元してもらうよ?」
ルシファーはイタズラな笑みを浮かべた。
「はい!もちろんです!お役に立てるように頑張ります」
心の中で帰りたい気持ちとルシファーの力になりたい気持ちがせめぎ合った。
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