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「ちょっと貴方、よろしくって?」
放課後、突然誰かに呼び止められた。
振り向くと、ハイビスカスのようなピンク色の髪を縦ロールにした吊り目の美少女がいた。
(もしかしてこれって噂の悪役令嬢…?)
「貴方、随分とルシファー様と仲良くされていたみたいだけどどういうつもり?」
「え?」
「貴方のような汚らしい平民が喋っていい人ではないって言ってるのよ!」
取り巻きのような女子が横から口を挟む。
「ルシファー様は尊きお方。貴方とは住んでいる世界が違うの。少し優しくされたからっていい気にならないでちょうだい!」
そう言うと悪役令嬢たちは去っていってしまった。
(何なんだあいつら…)
俺がピンク頭のさっていた方角をぼうっと眺めているとダニエルが声をかけてきた。
「ステファニー侯爵令嬢のことは気にしちゃダメだよ。あの家は血に固執してるんだ。貴族が一番偉くて、賢いと思い込んでいる。僕のような身分の低い人たちのことを見下しているんだ」
「あの人はやっぱりルシファー様の婚約者だったりするのか?」
「違う違う!王太子殿下には婚約者はいないよ。それにステファニー侯爵令嬢の家は悪い噂もあるしね。王家もあまり縁を結びたいとは考えないだろうね」
「ふーん」
「そういえば聖魔法の使い手で王配になった人は多いらしいよ。だからご令嬢も意識してるんじゃないのかな」
「俺は皆んなと友達になりたいだけなのに…」
「ステファニー侯爵令嬢が睨みを利かせている限り、穏やかな学校生活は送れないかもね」
俺は大きくため息をついた。
テニスクラブに行くダニエルと別れて学校の図書館に向かう。
観音開きの重厚な扉を開くと、壁一面に本が収納されていた。
「すごい…」
二階建ての構造になっており、天井近くまで本で埋まっている。
(ここなら、異世界に関する本もありそうだな)
ゲームクリアして戻るのが安牌だとは思うが、早く帰れるに越したことはない。もし今すぐにでも日本に帰れる方法があるならば帰りたい。
「『なぜ私は存在するのか』『この世界はどうやって生まれたのか』『パラドックスの世界』…あった!『異世界転移術』!」
目的の本が見つかり、開こうとするが開かない。
「ん…?あれ?」
「それは許可をとらないと閲覧できない本だ。魔法がかけられて開けないようにしてある」
ぶっきらぼうな声が聞こえて振り向くと、エディスが立っていた。
「司書に言えば読めるぞ」
「教えてくださってありがとうございます」
「『異世界転移術』…?異世界に興味があるのか?」
「はい、実は。」
「お前は異世界を信じるのか?」
「はい。信じています」
「たまに異世界に転移するだとか、憑依するだとか、そう言う話が話題になるが、僕は異世界なんてないと思っている」
俺は思わず眉を顰める。
異世界がないと言うのならばここはどこなのだ。俺はどこから来たというのだ。
「並行世界があるのではなく、気付かぬうちにこの広い宇宙の別の星に行ってしまっただけなのだと思う」
「ああ、なるほど」
「だから異世界ではなく、他の惑星に転移しただけだ。宇宙は広がり続けていると、兄は言っていた。だから全く違う世界があっても、似た世界があってもおかしくない。だから僕は宇宙人を信じているが並行世界は信じていない。」
「なるほど。でも僕は並行世界の存在を信じます。本の世界に入り込んでしまったりすることもあると思います。」
「それはその人がなにか魔術をかけられて幻想を見ているだけなのではないだろうか。本の中に入ったという長い夢を見ている。ただそれだけだ。」
「じゃあこれも夢なのでしょうか?」
「ん?」
「いつ醒めるのでしょうか。いつ、現実に戻れるのでしょうか。いつ家族に会えるのでしょうか。いつ…」
そこで俺はハッとした。
ついつい熱くなってしまった。
「ごめんなさい。今のは忘れてください!」
俺は逃げるようにその場を立ち去った。
放課後、突然誰かに呼び止められた。
振り向くと、ハイビスカスのようなピンク色の髪を縦ロールにした吊り目の美少女がいた。
(もしかしてこれって噂の悪役令嬢…?)
「貴方、随分とルシファー様と仲良くされていたみたいだけどどういうつもり?」
「え?」
「貴方のような汚らしい平民が喋っていい人ではないって言ってるのよ!」
取り巻きのような女子が横から口を挟む。
「ルシファー様は尊きお方。貴方とは住んでいる世界が違うの。少し優しくされたからっていい気にならないでちょうだい!」
そう言うと悪役令嬢たちは去っていってしまった。
(何なんだあいつら…)
俺がピンク頭のさっていた方角をぼうっと眺めているとダニエルが声をかけてきた。
「ステファニー侯爵令嬢のことは気にしちゃダメだよ。あの家は血に固執してるんだ。貴族が一番偉くて、賢いと思い込んでいる。僕のような身分の低い人たちのことを見下しているんだ」
「あの人はやっぱりルシファー様の婚約者だったりするのか?」
「違う違う!王太子殿下には婚約者はいないよ。それにステファニー侯爵令嬢の家は悪い噂もあるしね。王家もあまり縁を結びたいとは考えないだろうね」
「ふーん」
「そういえば聖魔法の使い手で王配になった人は多いらしいよ。だからご令嬢も意識してるんじゃないのかな」
「俺は皆んなと友達になりたいだけなのに…」
「ステファニー侯爵令嬢が睨みを利かせている限り、穏やかな学校生活は送れないかもね」
俺は大きくため息をついた。
テニスクラブに行くダニエルと別れて学校の図書館に向かう。
観音開きの重厚な扉を開くと、壁一面に本が収納されていた。
「すごい…」
二階建ての構造になっており、天井近くまで本で埋まっている。
(ここなら、異世界に関する本もありそうだな)
ゲームクリアして戻るのが安牌だとは思うが、早く帰れるに越したことはない。もし今すぐにでも日本に帰れる方法があるならば帰りたい。
「『なぜ私は存在するのか』『この世界はどうやって生まれたのか』『パラドックスの世界』…あった!『異世界転移術』!」
目的の本が見つかり、開こうとするが開かない。
「ん…?あれ?」
「それは許可をとらないと閲覧できない本だ。魔法がかけられて開けないようにしてある」
ぶっきらぼうな声が聞こえて振り向くと、エディスが立っていた。
「司書に言えば読めるぞ」
「教えてくださってありがとうございます」
「『異世界転移術』…?異世界に興味があるのか?」
「はい、実は。」
「お前は異世界を信じるのか?」
「はい。信じています」
「たまに異世界に転移するだとか、憑依するだとか、そう言う話が話題になるが、僕は異世界なんてないと思っている」
俺は思わず眉を顰める。
異世界がないと言うのならばここはどこなのだ。俺はどこから来たというのだ。
「並行世界があるのではなく、気付かぬうちにこの広い宇宙の別の星に行ってしまっただけなのだと思う」
「ああ、なるほど」
「だから異世界ではなく、他の惑星に転移しただけだ。宇宙は広がり続けていると、兄は言っていた。だから全く違う世界があっても、似た世界があってもおかしくない。だから僕は宇宙人を信じているが並行世界は信じていない。」
「なるほど。でも僕は並行世界の存在を信じます。本の世界に入り込んでしまったりすることもあると思います。」
「それはその人がなにか魔術をかけられて幻想を見ているだけなのではないだろうか。本の中に入ったという長い夢を見ている。ただそれだけだ。」
「じゃあこれも夢なのでしょうか?」
「ん?」
「いつ醒めるのでしょうか。いつ、現実に戻れるのでしょうか。いつ家族に会えるのでしょうか。いつ…」
そこで俺はハッとした。
ついつい熱くなってしまった。
「ごめんなさい。今のは忘れてください!」
俺は逃げるようにその場を立ち去った。
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