王子様から逃げられない!

一寸光陰

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日記を読み終えた後、不思議な安心感があった。
薄々気づいていた。
自分がもう死んでしまっていたことには。
しかし、認められなかっただけなのだ。
認めたくないから、逃げ道を探していた。しかし、それは完全にたたれた。
逃げ道を失い、この世界を受け入れるしかなくなった今、抵抗を止めるしかなくなった今、憑き物が落ちたような感じがしたのだった。
ようやくなんの躊躇いもなくルシファーを愛せる。
かすかな希望は恭弥に深い抵抗感を与えていたのだった。



「リリス、どうだった?」

ルシファーが不安そうな声で聞く。

「良いことが知れたよ。これからは前向きに生きないとなってね」

それでもルシファーは心配そうだった。
こんなにも吹っ切れたのが逆に恐ろしいんだろう。

「悩みがあったらすぐ相談するんだよ」

ルシファーはおでこに優しくキスを落とした。

リリスはただただ微笑んだ。



夜、部屋で1人、月を見ていると故郷を思い出した。この世界の月は地球の月とよく似ている。同じような光景を家族も見ているのかも知れない。
そう思うと嬉しいような寂しいような気持ちになった。

「もう少しよく見たいな…」

リリスは中庭に出て月を眺めることにした。

中庭に出ると、池にも月が映っていた。

(そういえば、昔見た子供アニメで水面に映る月に飛び込むと別世界に行けるって言うのがあったな…。本当なのかな)

水面に映る月をじっと眺める。

(…そんなわけないか)

そう思った瞬間、後ろからガバリと抱きつかれた。

「わっ!びっくりした、ルシファーか」

「まさか飛び込もうとしてるんじゃないよね?そんなに嫌ならここから出て行ってもいい。私も廃位してついて行くから。
だから。
だからどうか、私のそばにいてくれ」

ルシファーの顔は見えない。しかし、声が震えているのが分かった。

「飛び込まないよ、ルシファー」

リリスはルシファーの方に向き返った。

「俺はルシファーのそばにいる。この世界で生きて行くって決めたんだ。ここが俺の故郷だよ」

「本当に?」

「ああ。ルシファーを愛してる。離れることなんてできないよ」

リリスは気付かぬうちに涙を流していたようだ。
ルシファーが優しく拭う。

2人は長い間見つめあった。
この世界には2人しかいないように。


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