攻略対象5の俺が攻略対象1の婚約者になってました

悪役令嬢と俺

「お前ら、結構制服似合ってるじゃん。」
カストロがみんなに目を向ける。

黒を基調としたシンプルな制服は皆んなのスタイルの良さを引き立たせていた。
「ああ、本当に。すっごく似合ってるよ、アース。皆にも見られるのが惜しいくらいだよ。」
ソレイルが俺を抱きしめる。
その時きゃぁっと歓声が上がった。
一際大きな歓声が上がった方に目を向けると、くるくるの黒髪をツインテールにした、勝気な目の少女がいた。

このゲームの悪役令嬢、シーア・オーシャンだ。

「本当に素晴らしいわ。何故だか、あのお二人が仲良くされているのを見ると胸がときめきますの。」
「本当にそうですわ。」
「この感情はなんというのでしょう。まるで神聖なものを見たときのような…。そうですわ！『尊い』ですわ！」
「本当にそうですわ。尊くて愛おしくてたまりませんもの。」

なんか悪役令嬢キャラと違くないか？ゲームではもっとツンッとしていて、ポーカーフェイスだった。今のように締まりのない顔なんてしてなかったはず。

「はぁーーー！！尊い！！」
兎にも角にもレディ達が仲良さそうで良かった…のか？

「アース？何見てるの？あの女の子達が気になるの？」
ギュウっとソレイルが俺を強く抱きしめる。
キャァァァ！！！
歓声も強くなる。

はぁっと俺はため息をついた。
相変わらず大変そうだなとマーズが笑った。


そういえば、まだ主人公にあってないな。主人公はデフォルト名がステラ・スカイ。薄桃色の髪をボブくらいで切っている。活発な少女で、優しく、打たれ強い。目の前のことに真っ直ぐに頑張るタイプで、頑張りすぎると周りのことが見えなくなるのが玉に瑕だ。

たしか、入学式の前に学園に見惚れるがあまり周りが見えなくなって、ソレイルとぶつかる。それがファーストコンタクトだったはずだ。しかし、そんなことは一切起こっていない。

おかしいなと首を傾げていると、キイっと教室の扉が開いた。
現れたのは主人公、ステラだ。

おおっと目を輝かせる俺とは対照的に、ステラは俺を睨んでくる。
あんなに怖い子だったっけ、もっと優しくてほんわかした感じの子だったような…。
俺がソレイルと婚約しているから嫉妬？もう主人公はソレイルのことが好きになったのだろうか。なんだか早すぎる気もするが、入学式の代表者挨拶の時のソレイルは本当にかっこよかったし、好きになるのも仕方ないのかもしれない。

「今日ちょっとぼうっとしすぎじゃない？説明会が終わったらすぐ寮に戻って休もうか。」
「え？あ、大丈夫だよ！俺探検したい！」
「ダメ。今日は早く休もう。明日もオリエンテーションで授業ないし、明日探検しよう。」
「分かったよ。」
「なんだかんだ言って、アースはソレイルに弱いからな～。」
カストロがガハハと笑う。
「じゃあマーズ、俺らはもう少し学校に残ってるか！」
「いや、俺も早く休みたい。」
「ちぇっ！ツレねぇな。」
カストロは冷淡な友人をじとっと見つめた。