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魔法と俺

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「次の出番はマーズじゃない?」
「本当だ。」
「頑張って!」

グラウンドにコースが用意される。そこにはいくつかの障害物。トンネルや噴水のようなものが置かれる。

箒に乗って速さを競うスウィープは、6人1組で挑戦するリレーのようなものだ。マーズはアンカーらしい。


「優勝できたのはチームのおかげです。」
マーズは優勝インタビューに笑顔で答える。

マーズたちは1位を独走していたものの、マーズの前の女の子が箒から転落してしまい、5位まで落ちてしまった。マーズの番が回ってきた時、もう優勝は不可能かと思われた。しかし、マーズは高い技術と精神力でチームを優勝に導いた。
マーズは努力家だもんな。マーズが朝からグラウンドで練習しているのをよく見かけた。

「おめでとう!」
帰ってきたマーズに声をかける。
「これくらい余裕だよ。
みんな優秀な成績を収めてるんだ。アースも期待してるぞ。」
うっ。緊張でお腹が痛いと言うのにさらにプレッシャーをかけてきた。もし失敗したらお前のせいだからな。


魔法舞踊はステージで1人ずつ披露する。課題曲に合わせて魔法を繰り出し、その美しさや技術を競う。
確かステラも魔法舞踊に出るんだよな。
ゲームの中でヒロインは優勝していたし、優勝は厳しいかもしれない。いや、弱気になってはダメだ。シーアと共に特訓した日々を思い出し、喝を入れる。

「続いては、アース・フレイム選手の登場です。」
アースは拳を握りしめて、ステージに立った。


緩やかな音楽がなる。その優雅な調べに合わせて、沢山の花を開花させていく。
「おお。開花の魔法だ。あれは高等魔法だぞ。」

「cold」
昔から得意だったこの魔法。呟いた途端、花々は凍り、砕け散った。花びらと氷の結晶がヒラヒラと舞う。
観覧者たちはその美しさに息を呑んだ。

音楽が変調する。優雅な調べから情熱的な音楽へ。
それに合わせてアースの魔法も豪快になる。

アースは音楽に合わせて火柱と水柱を交互に出す。
「すごい…。あんなにテンポよく反する2つの魔法を出せるなんて…。」

最後に水柱と風の魔法を組み合わせ、巨大な渦を作る。そこに開花の魔法も組み合わさり、美しい花柱が立った。

「blazing column」
アースが叫ぶと大きな花柱は一気に炎に覆われて跡形もなく消えた。

ワーと歓声が上がる。観客たちは皆立ち上がって溢れんばかりの拍手を送る。
アースは達成感を胸に深く一礼した。


「優勝は…アース・フレイム選手!」
「ありがとうございます。」
アースはメダルと花束を受け取る。
3位にステラ、そして2位はシーアだった。
「おめでとうございますわ。やはりアース様には敵いませんわね。」
シーアが手を差し出す。俺はその手を握りしめた。
「シーア嬢も素晴らしい魔法でした。あの優美な魔法はシーア嬢そのものでしたよ。」

「ちょっと!!」
ステラが急に叫ぶ。
「おかしくない!?優勝は私でしょ!?何であんたが優勝してんのよ。悪役令嬢だってもっと出来が悪かったはずよ!私より魔法ができるなんて許せない!!」
「貴女どういうことですの?」
シーアが眉を顰める。
「これはアース様と私の努力の結果ですわ。貴女にとやかく言われる筋合いはございません。」
「…悪役令嬢のくせに生意気ね…。」
「何か仰りました?」
「何でもない!!絶対に何か裏があるはずよ!今に見ておきなさい!必ず不正を暴いてやるんだから!」
ステラは逃げるように走り去っていた。
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