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消えない過去と王子
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ソレイルはなかなか寝付けずベッドから出た。こんな時には母上に本を読んで貰えばスッと眠れる。母上の寝室に行こう。
どんなに周りから大人っぽいと誉められたとしても、ソレイルはまだ6歳の子供だった。時々母親が恋しくなってしまう。
ランプ片手にソレイルは部屋を出た。
夜の8時とはいえ王城は暗く、ポツンポツンと灯が灯る。
しんとした王城をソレイルはそろそろと歩く。
その時コソコソと何かを話す声が聞こえた。幽霊だろうか。それとも精霊?
ソレイルは声の聞こえる方へと歩いっていった。
「ソレイル殿下の目って不思議よね。」
侍女2人が立ち話をしていた。
「本当に。あんな目見たことないわ。」
「水色の目は陛下の色でしょうけど、もう片方の緑の目は一体誰から受け継いだのかしら。」
「王妃様の目もすみれ色だものね。他の王族にも緑の目はいなかったわ。」
「ソレイル殿下の目に見つめられると緊張するのよね。なんだか落ち着かないというか。」
「分かるわ!あの目に見つめられると不思議な気持ちになって、目を合わせられないというか。」
ソレイルはその場から走って逃げ出した。まさか侍女たちがそんなことを思っていたなんて。幼いソレイルにとってそれはあまりにも衝撃的なことで、耐え難いことだった。
みんなおれの目を嫌ってるんだ。
それからソレイルは毎晩悪夢を見た。
「ソレイル殿下の目は悪魔の目よ。」
「気味が悪い。」
「あんな人が王太子だなんて!」
いつの間にかソレイルは家族以外の人と関わらなくなっていた。心を閉ざし、目を合わせないようになっていた。
「明日はオーシャン公爵家の当主が娘を連れてくる。ソレイルと同じ年だ。仲良くしなさい。」
「はい。」
彼女もきっと俺の目を嫌うのだろう。ソレイルはそう決めつけて、シーアと関わらないことを決めた。
「つまらない!シーアもう帰る!」
彼女は怒って庭を出ていってしまった。ソレイルは少し落胆している自分に気がついて、驚いた。まだ他人と関わることができると思っている自分がいたとは。そんなことできっこないのに。
ソレイルは声もあげずに泣いた。
洗礼を受けるため、神殿に行くと声をかけられた。
茶髪に緑目の活発そうな男の子だ。何が楽しいのかにこにこと笑っている。
おれに声をかける人がいるなんて、ソレイルは驚いた。
その後も矢継ぎ早に話しかけてくる。素っ気ない態度をとっているにもかかわらずアースは笑みを絶やさない。
パーティーに行きたくないと漏らしてしまったおれにアースは冒険しようと誘ってきた。冒険という聞き慣れぬ楽しそうな響きに思わず承諾してしまった。やっぱり取り消そうかと思ったその時儀式は始まってしまいタイミングを逃してしまった。
パーティー会場でアースの姿を見つける。楽しそうなアースとは裏腹に両親は深刻そうな面持ちだ。
アースと声をかけると、またあの笑顔を向けてくる。おれは心臓が大きく鳴ったのを感じた。
「オッドアイですごく美しいよね!左右で目の色が違うなんてかっこよくて憧れちゃう!」
「かっこいい…?」
「うん!特別感があって好き。」
アースはおれのこの変な目を誉めてくれた。かっこいいと手放しで誉めてくれた。
その時自分の中でストンと何かが落ちた。アースが気に入ってくれてるのなら他人がどう思おうとどうでもいいではないか。
ソレイルはその日ぐっすりと眠ることができた。
それからアースと遊ぶようになった。以前のように活発になったソレイルを見て両親も安心したようだ。
夕食の時には必ずアースの話をする。
「アースと庭を探検したんだけど、知ってる?庭に隠し穴があるの!隣の広場に繋がってるんだけど…
それでアースが…」
母上と父上がにこやかに笑う。
「ソレイルは本当にアース君が好きね。」
「アース君を婿にするのもいいかもしれん…。」
「貴方!気が早すぎますよ。」
「それもそうだな!」
父上がガハハと笑った。
どんなに周りから大人っぽいと誉められたとしても、ソレイルはまだ6歳の子供だった。時々母親が恋しくなってしまう。
ランプ片手にソレイルは部屋を出た。
夜の8時とはいえ王城は暗く、ポツンポツンと灯が灯る。
しんとした王城をソレイルはそろそろと歩く。
その時コソコソと何かを話す声が聞こえた。幽霊だろうか。それとも精霊?
ソレイルは声の聞こえる方へと歩いっていった。
「ソレイル殿下の目って不思議よね。」
侍女2人が立ち話をしていた。
「本当に。あんな目見たことないわ。」
「水色の目は陛下の色でしょうけど、もう片方の緑の目は一体誰から受け継いだのかしら。」
「王妃様の目もすみれ色だものね。他の王族にも緑の目はいなかったわ。」
「ソレイル殿下の目に見つめられると緊張するのよね。なんだか落ち着かないというか。」
「分かるわ!あの目に見つめられると不思議な気持ちになって、目を合わせられないというか。」
ソレイルはその場から走って逃げ出した。まさか侍女たちがそんなことを思っていたなんて。幼いソレイルにとってそれはあまりにも衝撃的なことで、耐え難いことだった。
みんなおれの目を嫌ってるんだ。
それからソレイルは毎晩悪夢を見た。
「ソレイル殿下の目は悪魔の目よ。」
「気味が悪い。」
「あんな人が王太子だなんて!」
いつの間にかソレイルは家族以外の人と関わらなくなっていた。心を閉ざし、目を合わせないようになっていた。
「明日はオーシャン公爵家の当主が娘を連れてくる。ソレイルと同じ年だ。仲良くしなさい。」
「はい。」
彼女もきっと俺の目を嫌うのだろう。ソレイルはそう決めつけて、シーアと関わらないことを決めた。
「つまらない!シーアもう帰る!」
彼女は怒って庭を出ていってしまった。ソレイルは少し落胆している自分に気がついて、驚いた。まだ他人と関わることができると思っている自分がいたとは。そんなことできっこないのに。
ソレイルは声もあげずに泣いた。
洗礼を受けるため、神殿に行くと声をかけられた。
茶髪に緑目の活発そうな男の子だ。何が楽しいのかにこにこと笑っている。
おれに声をかける人がいるなんて、ソレイルは驚いた。
その後も矢継ぎ早に話しかけてくる。素っ気ない態度をとっているにもかかわらずアースは笑みを絶やさない。
パーティーに行きたくないと漏らしてしまったおれにアースは冒険しようと誘ってきた。冒険という聞き慣れぬ楽しそうな響きに思わず承諾してしまった。やっぱり取り消そうかと思ったその時儀式は始まってしまいタイミングを逃してしまった。
パーティー会場でアースの姿を見つける。楽しそうなアースとは裏腹に両親は深刻そうな面持ちだ。
アースと声をかけると、またあの笑顔を向けてくる。おれは心臓が大きく鳴ったのを感じた。
「オッドアイですごく美しいよね!左右で目の色が違うなんてかっこよくて憧れちゃう!」
「かっこいい…?」
「うん!特別感があって好き。」
アースはおれのこの変な目を誉めてくれた。かっこいいと手放しで誉めてくれた。
その時自分の中でストンと何かが落ちた。アースが気に入ってくれてるのなら他人がどう思おうとどうでもいいではないか。
ソレイルはその日ぐっすりと眠ることができた。
それからアースと遊ぶようになった。以前のように活発になったソレイルを見て両親も安心したようだ。
夕食の時には必ずアースの話をする。
「アースと庭を探検したんだけど、知ってる?庭に隠し穴があるの!隣の広場に繋がってるんだけど…
それでアースが…」
母上と父上がにこやかに笑う。
「ソレイルは本当にアース君が好きね。」
「アース君を婿にするのもいいかもしれん…。」
「貴方!気が早すぎますよ。」
「それもそうだな!」
父上がガハハと笑った。
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