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第一章 恋愛編
第13話 救急搬送
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「真由……。」
ここは、救急車の中だ。拓弥君は目を閉じたままであるが、どうやら私を探しているようだ。
「ここにいるよ。」
私は彼の手をそっと握りしめた。
「真由……。ごめんね……。ごめんね。」
彼は、うわ言のように謝罪を繰り返す。
彼はいつも、優しい心を持ち、相手に思いやりを示すことができる人だ。
そのため、今回の一件で、彼が気にかけることがあったのかもしれない。
一日二人で過ごした時間は、深く、様々なことが目まぐるしく起こったと思う。
彼の言葉に心打たれて涙が溢れだす。
それでも、私にできることは傍にいて手を握ってあげることくらいしか無かった。
「謝ることなんて何もないよ…。」
今回、私は彼にたくさん助けてもらったと感じている。
最初の地盤沈下の時は、彼が私を守ってくれたおかげで、私は無事でいられているのだと思う。
食料や水の確保、暗闇や寒さへの対処、そして傷ついた足を気遣ってのおんぶでの移動。
彼の手助けのお蔭で、様々な困難を乗り越えられたのだ。
もし私一人だったら、地下からの脱出すら叶わず、死んでしまっていたかもしれない。
感謝の気持ちこそあるが、謝られるべきことなど何もないのだ。
救急車は、大通りを疾走し、神口川病院に向かっていた。
幸い、道路が空いており、信号の待ち時間もないため、救急車の移動は、大変スムーズだった。
但し、道路の至る所に地割れのようなひび割れが生じており、路面の状態はあまり良くなかった。
振動に驚く場面は何度かあったが、救急隊員は、道を選びながら慎重な運転を心掛けて下さっていた。
通り過ぎる風景を見つめながら、目の前に広がる光景が、自然災害の無情さを改めて突きつける。
道沿いには、瓦礫に押し潰された車両が放置され、老朽化が進んだ建物が崩壊して、道路にせり出して通行止めになっている箇所もあった。
また、水道管が破裂したらしく、水が止むことなく流れ出していたり、停電が解消されずに暗闇が残る地域もあった。
東京という最先端の都市においても、こんなにも壊滅的な被害が発生するという現実に、ただただ驚嘆せざるを得ない。
やがて、神口川病院に到着する。
そこで、医師や看護師が私たちを迎えてくれた。
救急隊員が拓弥君を担架に乗せて院内に運び込んだ。
私には、車椅子が用意され、それに乗って院内に運ばれることになった。
「佐野さんは、頭から下腹部までCT撮っておいて。福田さんは、左足関節のレントゲンね。」
医師からのテキパキした指示が響き渡り、看護師が検査室への移動をサポートする。
拓弥君はCT室、私はレントゲン室へ移動となった。
「はい、写真撮るので動かないでくださいね。」
《ピッ!》
私が、撮影を終えて戻った時、診察室では慌ただしい雰囲気に包まれていた。
「直ちに緊急オペが必要だ。脳外の佐々木先生にすぐに連絡!オペ室にも準備するように言っておいて!」
「ああ、君は佐野さんの彼女さんだったかな…。彼ですがね、CTで頭の中に血が溜まっているのを見つけました。地震で地盤沈下に巻き込まれた際に、頭に強い衝撃を受けたのでしょう。頭の中に血が溜まっている状態です。急性硬膜下血腫というのが病名ですね。血がどんどん溜まってくると、脳に圧力がかかるので大変危険です。放っておくと脳の機能に影響を及ぼしたり、或いは後遺症が残ったり、場合によっては命の危険にも晒されます。」
「彼は、拓弥君は助かるのですか!?どうか助けてください。」
「もちろんです。うちの脳外科医は、腕がいいと評判ですからきっと治してくれることでしょう。」
「お願いします!」
「そうそう。福田さん。あなたのレントゲンの結果が出ていますよ。自覚あるでしょう?骨折です。足首の近くの腓骨と言われる骨ですね。折れた後も無茶な動きしませんでした?折れた骨が変にズレてしまってるんですね。その影響で靭帯も相当にダメージがありそうですね。」
「骨折しているかもって言う感覚はあったのですが、彼の状態が見る見るうちに悪くなっていったので、地下鉄のホームから足を引きずりながら慌てて救助を頼みに行ったんです。」
「そうだったんですね。あなたの頑張りで、彼は命を取り留めることになったかも知れませんね。さて、福田さんについては、すぐに整形外科医を手配しますね。ズレた骨を本来あるべき位置に戻して固定します。完治するまではお時間が掛かるかも知れませんよ。」
脳外科の医師が到着した。
これから手術を行うため、拓弥君は慎重にベッドに乗せられ、手術室へと運ばれた。
私は彼のそばにいたかったが、自分自身の骨折を治療してくれる整形外科の医師がやってきたため、私も処置室に連れて行かれ、治療を受けることになった。
私にとって初めての経験だったが、医師は画像を見ながら、手で押さえつけたり、引っ張ったりしながら骨折した骨を元の位置に移動させていた。
その様子を見るだけで、恐怖に包まれるが、麻酔の効果もあり、治療を担当してくださる先生が必死に対応してくださっているため、なるべく大人しくしていた。
「お疲れ様。終わりましたよ。骨は元の位置に戻りました。後は、このギブスによって動きを抑制し、自然に骨が結合するのを待ちましょう。」
「ありがとうございました。あの、彼の手術の終了を手術室の待合室で待ちたいのですが…。」
「別に構いませんよ。行ってあげてください。」
私は、看護師さんの案内を受けて手術室の待合室に行って拓弥君の手術の成功を祈り続けた…。
ここは、救急車の中だ。拓弥君は目を閉じたままであるが、どうやら私を探しているようだ。
「ここにいるよ。」
私は彼の手をそっと握りしめた。
「真由……。ごめんね……。ごめんね。」
彼は、うわ言のように謝罪を繰り返す。
彼はいつも、優しい心を持ち、相手に思いやりを示すことができる人だ。
そのため、今回の一件で、彼が気にかけることがあったのかもしれない。
一日二人で過ごした時間は、深く、様々なことが目まぐるしく起こったと思う。
彼の言葉に心打たれて涙が溢れだす。
それでも、私にできることは傍にいて手を握ってあげることくらいしか無かった。
「謝ることなんて何もないよ…。」
今回、私は彼にたくさん助けてもらったと感じている。
最初の地盤沈下の時は、彼が私を守ってくれたおかげで、私は無事でいられているのだと思う。
食料や水の確保、暗闇や寒さへの対処、そして傷ついた足を気遣ってのおんぶでの移動。
彼の手助けのお蔭で、様々な困難を乗り越えられたのだ。
もし私一人だったら、地下からの脱出すら叶わず、死んでしまっていたかもしれない。
感謝の気持ちこそあるが、謝られるべきことなど何もないのだ。
救急車は、大通りを疾走し、神口川病院に向かっていた。
幸い、道路が空いており、信号の待ち時間もないため、救急車の移動は、大変スムーズだった。
但し、道路の至る所に地割れのようなひび割れが生じており、路面の状態はあまり良くなかった。
振動に驚く場面は何度かあったが、救急隊員は、道を選びながら慎重な運転を心掛けて下さっていた。
通り過ぎる風景を見つめながら、目の前に広がる光景が、自然災害の無情さを改めて突きつける。
道沿いには、瓦礫に押し潰された車両が放置され、老朽化が進んだ建物が崩壊して、道路にせり出して通行止めになっている箇所もあった。
また、水道管が破裂したらしく、水が止むことなく流れ出していたり、停電が解消されずに暗闇が残る地域もあった。
東京という最先端の都市においても、こんなにも壊滅的な被害が発生するという現実に、ただただ驚嘆せざるを得ない。
やがて、神口川病院に到着する。
そこで、医師や看護師が私たちを迎えてくれた。
救急隊員が拓弥君を担架に乗せて院内に運び込んだ。
私には、車椅子が用意され、それに乗って院内に運ばれることになった。
「佐野さんは、頭から下腹部までCT撮っておいて。福田さんは、左足関節のレントゲンね。」
医師からのテキパキした指示が響き渡り、看護師が検査室への移動をサポートする。
拓弥君はCT室、私はレントゲン室へ移動となった。
「はい、写真撮るので動かないでくださいね。」
《ピッ!》
私が、撮影を終えて戻った時、診察室では慌ただしい雰囲気に包まれていた。
「直ちに緊急オペが必要だ。脳外の佐々木先生にすぐに連絡!オペ室にも準備するように言っておいて!」
「ああ、君は佐野さんの彼女さんだったかな…。彼ですがね、CTで頭の中に血が溜まっているのを見つけました。地震で地盤沈下に巻き込まれた際に、頭に強い衝撃を受けたのでしょう。頭の中に血が溜まっている状態です。急性硬膜下血腫というのが病名ですね。血がどんどん溜まってくると、脳に圧力がかかるので大変危険です。放っておくと脳の機能に影響を及ぼしたり、或いは後遺症が残ったり、場合によっては命の危険にも晒されます。」
「彼は、拓弥君は助かるのですか!?どうか助けてください。」
「もちろんです。うちの脳外科医は、腕がいいと評判ですからきっと治してくれることでしょう。」
「お願いします!」
「そうそう。福田さん。あなたのレントゲンの結果が出ていますよ。自覚あるでしょう?骨折です。足首の近くの腓骨と言われる骨ですね。折れた後も無茶な動きしませんでした?折れた骨が変にズレてしまってるんですね。その影響で靭帯も相当にダメージがありそうですね。」
「骨折しているかもって言う感覚はあったのですが、彼の状態が見る見るうちに悪くなっていったので、地下鉄のホームから足を引きずりながら慌てて救助を頼みに行ったんです。」
「そうだったんですね。あなたの頑張りで、彼は命を取り留めることになったかも知れませんね。さて、福田さんについては、すぐに整形外科医を手配しますね。ズレた骨を本来あるべき位置に戻して固定します。完治するまではお時間が掛かるかも知れませんよ。」
脳外科の医師が到着した。
これから手術を行うため、拓弥君は慎重にベッドに乗せられ、手術室へと運ばれた。
私は彼のそばにいたかったが、自分自身の骨折を治療してくれる整形外科の医師がやってきたため、私も処置室に連れて行かれ、治療を受けることになった。
私にとって初めての経験だったが、医師は画像を見ながら、手で押さえつけたり、引っ張ったりしながら骨折した骨を元の位置に移動させていた。
その様子を見るだけで、恐怖に包まれるが、麻酔の効果もあり、治療を担当してくださる先生が必死に対応してくださっているため、なるべく大人しくしていた。
「お疲れ様。終わりましたよ。骨は元の位置に戻りました。後は、このギブスによって動きを抑制し、自然に骨が結合するのを待ちましょう。」
「ありがとうございました。あの、彼の手術の終了を手術室の待合室で待ちたいのですが…。」
「別に構いませんよ。行ってあげてください。」
私は、看護師さんの案内を受けて手術室の待合室に行って拓弥君の手術の成功を祈り続けた…。
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