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第一章 恋愛編
第23話 退院のお祝い(中編)
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◇ 江西区 林場公園 ◇
今日は、拓弥君の退院祝いのため、バーベキューをすることになった。
会場は、都会の騒がしさを脱し、東京に在りながら自然と一体となれる、林場公園の一角に利用場所がある。
ここには、鉄板や網の用具の貸し出しや、美味しいお肉や魚介類の販売、手ぶらでのバーベキューが可能な、訪れる人々を魅了する場所なのだそうだ。
新田さんと共にバスに揺られて移動した。
新田さんはいつものようにエネルギッシュで、楽しい話題で盛り上がりながら待ち合わせ場所に到着した。
約束の時間の10分前、拓弥君と恵美さんが現れた。
拓弥君は退院こそ果たせたが、まだ足を引きずるような様子が見受けられ、恵美さんは彼に寄り添い、サポートする様子を見せていた。
拓弥君も恵美さんも、センスの良いファッションに身を包み、美しくも美しすぎる程の美男美女カップルであった。
「おーい!拓弥君!」
私の声に拓弥君が反応してこちらにやって来た。
恵美さんが拓弥君の腕をガッチリとホールドしているのが気になったが、人のことなのでなるべく気にしないようにした。
「新田さん。こちらが大学時代の同級生の佐野拓弥君。そちらが彼女の恵美さんです。」
「よろしくお願いします。」
拓弥君も恵美さんも、新田さんに礼儀正しく挨拶を返した。
「こちらは、新田さん。職場の同僚でお付き合いさせて頂いてます。」
「呼んでくれてありがとうございます。今日は宜しくお願いします。」
挨拶が終わった後、四人は林場公園のバーベキュー会場へと移動した。
予め時間予約してあったので、直ぐに店のスタッフに案内され、バーベキューの準備を始めた。
やっぱりここは、新田さんの独壇場となる。
火起こしから鉄板や網のセットなどテキパキと動いている。
「あの、何か手伝いましょうか?」
拓弥君は、新田さんを気遣って声を掛ける。
「いや、大丈夫ですよ!佐野君は、病み上がりだし、今日の主役でしょ?ゆっくりしててよ!」
「あ、ありがとうございます。」
「真由ちゃん!」
「はい、新田さん。」
「野菜を食べやすい大きさに切っておいて貰えるかな?」
「はい!任せてください。」
私は、新田さんに指示を貰いながら、野菜を次々にカットしていく…。
準備が整った所で新田さんが会を進行する。
「じゃあ、そろそろ皆で乾杯しましょうか?」
今度は、恵美さんが用意してある飲み物をそれぞれに配り始めた。
「佐野君も真由ちゃんも、地震の被害を受けて大変だったけど、こうして無事で良かったです。では、佐野君の退院を祝して乾杯!!」
「カンパイ!」
新田さんは、ビールで喉を潤すと、豪快にお肉を網の上に乗せて一気に焼き始める。
周囲にはお肉の焼ける匂いが漂い、それに反応して私のお腹の虫が準備完了を知らせていた。
「真由さんの彼氏さん、凄くない?」
「ああ。手馴れてるな。」
「あはは!そうだろう?こういうのは得意なんだ!ほい!ほい!ほい!」
新田さんは、焼けたお肉を次々に配っている。
「ん~!美味しい!」
「美味いなぁ!」
拓弥君と恵美さんが美味しそうに食べている姿を見ながら、新田さんは満足気である。
「新田さん、美味しいです。」
「はは!真由ちゃん美味いだろ?」
「焼き加減もそうだけど、肉汁も計算しながら焼いてるのよ。多過ぎても落とし過ぎてもダメなんだ。」
「新田さん、流石です。」
焼くのに必死な新田さんの口に焼き上がったお肉を運び入れる。
「ん~!真由ちゃんありがとう!更に肉が美味くなったよ。」
「あら!お二人さん。見せつけてくれるわね!」
恵美さんが私たちの様子を見て、拓弥君に伝えている。
「ああ、そうだね…。」
恵美さんの言葉に反応してつい拓弥君の表情を確認してしまう。
彼は少し困ったような顔をしていた。
私は、彼を見て何を焦っているのだろうか…。
私は、新田さんが焼いてくれたお肉を配りに拓弥君に近づいた。
「拓弥君。たくさん食べてる?」
私は、彼に語りかけながら、焼き上がったお肉を彼のお皿へと移動させている。
「真由。ありがとう!美味しく頂いているよ。これ見てよ。左手もだいぶ様になってきてるだろ?」
「うん。本当ね。かなり上手に使えるようになったじゃない。短期間に凄いわ。」
「へへん。そうだろ?」
恵美さんは、私が拓弥君が仲良く話はじめたのが嫌だったらしく、すぐに私たちの会話に割って入り、私たちの会話を遮った。
「拓弥。飲み物飲む?」
「あっ、ありがとう。貰うよ。」
私は仕方なく拓弥君と距離を置いた。
「佐野君も、彼女さんもまだまだあるぞ!たくさん食べないとな!」
「ありがとうございます。」
私が拓弥君に話しかけたことで、少し妙な空気感が漂ったが、新田さんがいたお陰で再び雰囲気が回復した。新田さんに来て貰って良かった。
お肉もお酒も瞬く間に消費されて行った。
新田さんの食べっぷりは相変わらずだが、大勢で食べると消費量も凄いんだなと改めて感じた。
明るく鮮やかな青い空は、茜色に染まっていった。
新田さんが作った焼きそばは、大変美味しく、二人にもとても好評だった。
「拓弥。ちょっと御手洗行ってくるわね。」
恵美さんは、御手洗に向かった。
同じタイミングで、新田さんも御手洗に向かい、その間少しだけ拓弥君と二人きりになった。
「真由。お祝いしてくれてありがとう。」
「ううん。どの道お祝いしてあげたいと思っていたから。」
「なあ、真由。」
「うん?」
「真由は、俺のことをどう思っている?」
「何よ、突然…。でも、それは男性の方が先に言うべきだと思わない?」
拓弥君からの質問を受けた途端、心臓が飛び出す程にざわめき始めた。
その質問に対しては、私の方こそこれまで彼に聞きたかったことであり、必死に考え、振り絞って言葉にしたのだった。
しかし、これを口にすると言うことは、同時に自分の気持ちも彼に告白することを覚悟する。
「そ、そうだね。ふぅ…。俺は、付き合っている頃も、別れてからも真由への想いは、一ミリも変わっていない…。ずっと真由を大切に想っているよ。」
「本当に?実は、私も拓弥君への気持ち、昔からずっと変わってないよ…。」
「それは、つまり…好きってこと?」
私は、顔が火を噴くように熱くなっているのを感じながら、黙ってうなずいた。
「マジで!?よっしゃ!」
お互いの心をようやく確認し合い、望んだ答えを得たことで、天にも昇るような感慨が私たちを包み込んだ。
しかし、その時だった...。
「拓弥。何が『よっしゃ!』よ。二人きりで何盛り上がってるの!それに、真由さん。あなた、話している相手が違うのじゃなくて?私の拓弥にちょっかい出さないでくれる?」
突然現れた恵美さんには驚いたが、怒りに満ちたの言葉が強く胸に突き刺さる。
「恵美。違うんだ!」
「あっ、恵美さん。たまたま二人きりになって…。」
「あなた達が昔付き合っていたからって、私の前で馴れ馴れしくしないで貰える?不愉快よ!」
恵美さんから放たれる、怒りに満ちた視線が私の心を撃ち抜いた。
拓弥君が誰かとお付き合いしていると知った瞬間、私はこういったことを考えなければならないことを改めて自覚した。
「恵美?何故それを?真由との昔の話はしたことは無かったはずだ。」
「え…?さあ…。なんとなくよ!もういいわ。私、帰る!」
恵美さんは、拓弥君の一言で怒り心頭の様子から一変して、焦りを滲ませてそのまま帰ってしまった…。
「おい、恵美!」
ここは、拓弥君が恵美さんを追いかける必要があるだろう。彼には申し訳ないが、この先は彼だけが解決できる問題なのである。
「拓弥君!」
私は、拓弥君と目が合うと、彼に無言で頷いて見せた。
それに反応した拓弥君も私に頷き返して彼女を追って行った…。
「真由ちゃん…。」
その後、私が目にしたのは、拓弥君の後ろ姿と、近くで立ち尽くしていた新田さんの姿だった…。
今日は、拓弥君の退院祝いのため、バーベキューをすることになった。
会場は、都会の騒がしさを脱し、東京に在りながら自然と一体となれる、林場公園の一角に利用場所がある。
ここには、鉄板や網の用具の貸し出しや、美味しいお肉や魚介類の販売、手ぶらでのバーベキューが可能な、訪れる人々を魅了する場所なのだそうだ。
新田さんと共にバスに揺られて移動した。
新田さんはいつものようにエネルギッシュで、楽しい話題で盛り上がりながら待ち合わせ場所に到着した。
約束の時間の10分前、拓弥君と恵美さんが現れた。
拓弥君は退院こそ果たせたが、まだ足を引きずるような様子が見受けられ、恵美さんは彼に寄り添い、サポートする様子を見せていた。
拓弥君も恵美さんも、センスの良いファッションに身を包み、美しくも美しすぎる程の美男美女カップルであった。
「おーい!拓弥君!」
私の声に拓弥君が反応してこちらにやって来た。
恵美さんが拓弥君の腕をガッチリとホールドしているのが気になったが、人のことなのでなるべく気にしないようにした。
「新田さん。こちらが大学時代の同級生の佐野拓弥君。そちらが彼女の恵美さんです。」
「よろしくお願いします。」
拓弥君も恵美さんも、新田さんに礼儀正しく挨拶を返した。
「こちらは、新田さん。職場の同僚でお付き合いさせて頂いてます。」
「呼んでくれてありがとうございます。今日は宜しくお願いします。」
挨拶が終わった後、四人は林場公園のバーベキュー会場へと移動した。
予め時間予約してあったので、直ぐに店のスタッフに案内され、バーベキューの準備を始めた。
やっぱりここは、新田さんの独壇場となる。
火起こしから鉄板や網のセットなどテキパキと動いている。
「あの、何か手伝いましょうか?」
拓弥君は、新田さんを気遣って声を掛ける。
「いや、大丈夫ですよ!佐野君は、病み上がりだし、今日の主役でしょ?ゆっくりしててよ!」
「あ、ありがとうございます。」
「真由ちゃん!」
「はい、新田さん。」
「野菜を食べやすい大きさに切っておいて貰えるかな?」
「はい!任せてください。」
私は、新田さんに指示を貰いながら、野菜を次々にカットしていく…。
準備が整った所で新田さんが会を進行する。
「じゃあ、そろそろ皆で乾杯しましょうか?」
今度は、恵美さんが用意してある飲み物をそれぞれに配り始めた。
「佐野君も真由ちゃんも、地震の被害を受けて大変だったけど、こうして無事で良かったです。では、佐野君の退院を祝して乾杯!!」
「カンパイ!」
新田さんは、ビールで喉を潤すと、豪快にお肉を網の上に乗せて一気に焼き始める。
周囲にはお肉の焼ける匂いが漂い、それに反応して私のお腹の虫が準備完了を知らせていた。
「真由さんの彼氏さん、凄くない?」
「ああ。手馴れてるな。」
「あはは!そうだろう?こういうのは得意なんだ!ほい!ほい!ほい!」
新田さんは、焼けたお肉を次々に配っている。
「ん~!美味しい!」
「美味いなぁ!」
拓弥君と恵美さんが美味しそうに食べている姿を見ながら、新田さんは満足気である。
「新田さん、美味しいです。」
「はは!真由ちゃん美味いだろ?」
「焼き加減もそうだけど、肉汁も計算しながら焼いてるのよ。多過ぎても落とし過ぎてもダメなんだ。」
「新田さん、流石です。」
焼くのに必死な新田さんの口に焼き上がったお肉を運び入れる。
「ん~!真由ちゃんありがとう!更に肉が美味くなったよ。」
「あら!お二人さん。見せつけてくれるわね!」
恵美さんが私たちの様子を見て、拓弥君に伝えている。
「ああ、そうだね…。」
恵美さんの言葉に反応してつい拓弥君の表情を確認してしまう。
彼は少し困ったような顔をしていた。
私は、彼を見て何を焦っているのだろうか…。
私は、新田さんが焼いてくれたお肉を配りに拓弥君に近づいた。
「拓弥君。たくさん食べてる?」
私は、彼に語りかけながら、焼き上がったお肉を彼のお皿へと移動させている。
「真由。ありがとう!美味しく頂いているよ。これ見てよ。左手もだいぶ様になってきてるだろ?」
「うん。本当ね。かなり上手に使えるようになったじゃない。短期間に凄いわ。」
「へへん。そうだろ?」
恵美さんは、私が拓弥君が仲良く話はじめたのが嫌だったらしく、すぐに私たちの会話に割って入り、私たちの会話を遮った。
「拓弥。飲み物飲む?」
「あっ、ありがとう。貰うよ。」
私は仕方なく拓弥君と距離を置いた。
「佐野君も、彼女さんもまだまだあるぞ!たくさん食べないとな!」
「ありがとうございます。」
私が拓弥君に話しかけたことで、少し妙な空気感が漂ったが、新田さんがいたお陰で再び雰囲気が回復した。新田さんに来て貰って良かった。
お肉もお酒も瞬く間に消費されて行った。
新田さんの食べっぷりは相変わらずだが、大勢で食べると消費量も凄いんだなと改めて感じた。
明るく鮮やかな青い空は、茜色に染まっていった。
新田さんが作った焼きそばは、大変美味しく、二人にもとても好評だった。
「拓弥。ちょっと御手洗行ってくるわね。」
恵美さんは、御手洗に向かった。
同じタイミングで、新田さんも御手洗に向かい、その間少しだけ拓弥君と二人きりになった。
「真由。お祝いしてくれてありがとう。」
「ううん。どの道お祝いしてあげたいと思っていたから。」
「なあ、真由。」
「うん?」
「真由は、俺のことをどう思っている?」
「何よ、突然…。でも、それは男性の方が先に言うべきだと思わない?」
拓弥君からの質問を受けた途端、心臓が飛び出す程にざわめき始めた。
その質問に対しては、私の方こそこれまで彼に聞きたかったことであり、必死に考え、振り絞って言葉にしたのだった。
しかし、これを口にすると言うことは、同時に自分の気持ちも彼に告白することを覚悟する。
「そ、そうだね。ふぅ…。俺は、付き合っている頃も、別れてからも真由への想いは、一ミリも変わっていない…。ずっと真由を大切に想っているよ。」
「本当に?実は、私も拓弥君への気持ち、昔からずっと変わってないよ…。」
「それは、つまり…好きってこと?」
私は、顔が火を噴くように熱くなっているのを感じながら、黙ってうなずいた。
「マジで!?よっしゃ!」
お互いの心をようやく確認し合い、望んだ答えを得たことで、天にも昇るような感慨が私たちを包み込んだ。
しかし、その時だった...。
「拓弥。何が『よっしゃ!』よ。二人きりで何盛り上がってるの!それに、真由さん。あなた、話している相手が違うのじゃなくて?私の拓弥にちょっかい出さないでくれる?」
突然現れた恵美さんには驚いたが、怒りに満ちたの言葉が強く胸に突き刺さる。
「恵美。違うんだ!」
「あっ、恵美さん。たまたま二人きりになって…。」
「あなた達が昔付き合っていたからって、私の前で馴れ馴れしくしないで貰える?不愉快よ!」
恵美さんから放たれる、怒りに満ちた視線が私の心を撃ち抜いた。
拓弥君が誰かとお付き合いしていると知った瞬間、私はこういったことを考えなければならないことを改めて自覚した。
「恵美?何故それを?真由との昔の話はしたことは無かったはずだ。」
「え…?さあ…。なんとなくよ!もういいわ。私、帰る!」
恵美さんは、拓弥君の一言で怒り心頭の様子から一変して、焦りを滲ませてそのまま帰ってしまった…。
「おい、恵美!」
ここは、拓弥君が恵美さんを追いかける必要があるだろう。彼には申し訳ないが、この先は彼だけが解決できる問題なのである。
「拓弥君!」
私は、拓弥君と目が合うと、彼に無言で頷いて見せた。
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